独鈷の滝でゆったりした時を過ごし、丹波の森街道に戻りました。
道の横に大きな和牛のモニュメントが見えます。
「そうか、丹波牛ですか、結構ですよね~」とこの後、運転席から牛肉を食べさせてくれそうな店を探しましたが、道は人里を離れ、ますます山の中へと入って行きます。
道は少しずつ標高を高めて道幅も狭まり、追い越し禁止区間が続きました。
丹波市小倉を過ぎた辺りだったと思いますが、小さく曲がり続ける道が小さな集落に差し掛かったとき、稲刈りを終えた田の畦に赤い曼珠沙華の連なりを見つけました。
急いで車を路肩に停めて、カメラ片手に曼珠沙華の横に屈んでいると背後に人影を感じました。
車を停めたすぐ横の工務店から小父さんが出てきて「こんな所で、何処のどいつだ」みたいな顔で私の様子をチラッと伺い、「何だ、曼珠沙華か」みたいな表情で、一瞬頬緩ませて店の中へと戻って行きました。
曼珠沙華に限らず、何時でも花は人の頬を緩ませるようです。
田圃の奥にも赤い花影を見つけたので、細い村道に車を進めました。
田へ水を引く用水路でしょうか、山からの清らかな水が流れる溝に沿って、桜並木の下に赤い蝋燭を灯したように曼珠沙華が並んでいました。
絵のような山里の曼珠沙華を目に焼き付けて、再び丹波の森街道へ戻ります。
車は長閑な風景の中を進んで行きます。
道路の掲示物が、この道は遠阪峠へ向かっていることを教えてくれます。
通り過ぎる村々では頻繁に、赤い曼珠沙華が姿を見せていました。
この道は「丹波の森街道」というよりは「曼珠沙華街道」と名を変えたほうが、と思わせてくれた程です。
遠阪峠へ登りきる前に「今出川親水公園」の案内板を目にしたので再びの寄り道です。
そこに熊野神社がありました。
掲示されていた説明によると、毎年11月3日に裸祭りが催され、その行事が無形文化財に指定されているのだそうです。
今出川親水公園には水車小屋があり、その水車で挽いた蕎麦を食べさせる蕎麦屋さんが店を構えていました。
が、私はこのときまだ、丹波牛に頭を占拠されていましたので、お蕎麦は次の機会とさせて頂きました。
今回の「花の旅」では今まで以上に寄り道が増えました。
従来と違って「何日までに帰らなければならない」という束縛が無くなったので、いたって暢気なものです。
念願叶って、やっと時間の束縛から逃れることができました。
それでも当然に、寿命という時間の呪縛からは逃れようもありませんので、これからも悔いのないように走り続けなければと、これは自分への戒めです。
今、遠阪峠を越えました。
前方にはまだまだ幾山川の連なりが望めます。
心地好い秋風が吹いていました。
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