列車は14時15分に苫小牧駅に終着しました。
私は35分の乗り継ぎ時間を利用して駅周辺を散策しました。
2015年の自転車旅で来た時に営業していた、駅併設のショッピングセンターはシャッターを閉ざしていました。
あの時は私も、食料の買い出しを、駅から離れた、大きな駐車場があるイオンで行った記憶があります。
北海道に限りませんが、大都市に暮らす人々以外、日々の移動手段は車に頼る生活となっています。
鉄道は、車を運転できない高校生や、中長距離移動、あるいはスイスアルプスの観光列車のような業態で存続することになるのでしょうか。
東室蘭行き普通列車は苫小牧駅を14時49分に発車しました。
電車は淡々と海岸線を走り続け、1時間7分後に東室蘭駅に到着しました。
この駅でも、21分の接続時間に駅周辺を散策しました。
初めての街に来ると好奇心が疼き、じっとしてはいられないのです。
しかしこれが災いして、東室蘭16時17分発の長万部行き普通列車に乗ると、席は既に地元の高校生達で埋め尽くされていました。
今回の旅で、席に座れなかったのはこの時だけですが、実はこの頃、持病の喘息が悪化し、息切れが酷かったのですが、巡り合わせが悪い時とはそんなものです。
幸いにも、一駅二駅と列車が進むほどに高校生が下車してゆき、北船岡を過ぎた辺りで席を得ることができました。
席に座って景色を眺めていると、豊浦辺りから車窓にツルを伸ばしたクズらしき植物が見え始めました。
私は確証が得たく、クズらしきものに向かって、車窓から何度もシャッターを押し続けました。
大岸付近を走行中に写したのが以下の写真ですが、クズにほぼ間違いはなさそうです。
この辺りは積雪量が少なく、北海道としては気候も温暖だったはずで、日本のクズの北限はこの辺りだろうかと考えました。
記事を書きながら、ネットで「クズ 北限」を検索すると、ヒットした、
草と緑 2:36-41(2010)「クズ(Pueraria lobate Ohwi)」 伊藤操子(NPO法人防草緑化技術研究所)には、
「北限はほぼ留萌市と襟裳岬を結ぶ線にあるといわれている」と記され、
更に、「葛の話シリーズ第五十五話」 2013.06.01 津川 兵衛 に、
「日本の植生学者によると、クズの分布北限は北海道の留萌と十勝支庁の広尾を結ぶ線であるとされてきた。
勿論、北海道の内陸部の山岳地帯は冬季は極寒の地であるから、クズは生存できない。クズの分布域は沿岸部に限られる。
クズの北限は留萌と十勝支庁の広尾を結ぶ線よりかなり北上するよう」と記されていました。
ひと昔前であれば、図書館を巡り歩いて調査すべき情報を瞬時に得ることができたのです。
いやはや、何とも便利な世の中になったものです。
ま、それはそれとして、今度北海道に来たら、クズを探しながら、留萌の海岸線を北上したいと思います。
そんなふうに、車窓の景色を楽しみながら、列車はやがて長万部に到着しました。
そして長万部で、函館行き普通列車に乗り継ぎました。
長万部を18時15分に発車した気動車からは、国縫駅に灯る灯りが見えていました。
日が暮れてゆくなかを、気動車は噴火湾に沿って南下を続けます。
やがて夜の帳に包まれた21時22分、私は五稜郭で列車を降り、夜道を歩いて青函フェリー埠頭へと向かいました。
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