邦画ブラボー

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「小さいおうち」

2015年03月12日 | ★愛!の映画

中島京子さん原作の「小さいおうち」。

山田洋次が映画化を熱望したというので

ちょっと気になっていた作品。

地上波で放送されたので見ました。

 

戦前の東京、山の手に建てられた

小さな赤い屋根の洋館に暮らす一家の日常が、

東北の雪深い村出身の女中の目を通し、丁寧に描かれております。

物語は二層式になっており、

舞台が変わった現代では

アパートで

ひとり暮らしの元女中(倍賞千恵子)の回想形式:自叙伝として語られます。

 

庭で女中が着物の伸子張りをしている様子や

松たか子が運針しているところなど

演出も細かくて面白かった。

自分もお裁縫をするのでこんなところを見てしまう。

運針はイマイチだったけど、

吉永小百合とか他の女優さんと違い、正面からトライしておられます。

(今まで見た映画の中では乙羽信子(香華)と

田中絹代の運針が上手かった!女学校でお裁縫が必修だったころの女優さんはすごいですわ)

 

それと倍賞千恵子の、

とんかつをあげる手つきや料理の盛り付けの

仕草が印象的でした。

微細なところまでの役作りがさすがです。

 

セットが作り物っぽい乙女チックな雰囲気で

物語もどこか大人のメルヘン風。

現代の作品の中の

昔を再現したセットは

絵に描いたようなステレオタイプで、いつも違和感を感じるのですが

思いっきり作り物っぽいので、すんなり受け入れられました。

 

久石譲の抒情的なメロディが繰り返される

序盤は、

私たちが思うような戦争前の陰鬱な雰囲気とは違い

平和でのんびりした市井の生活が描かれます。

向田邦子のエッセイにも

戦前の庶民の生活は穏やかだったと表現されていたのを思い出しました。

回想形式という点、ちょい色っぽさということも含め、全体に

ちょっと向田ドラマにも似た風情、

そしてそこここに

小津安二郎的趣も感じられます。

(もしかしてオマージュもある?)

 

徐々に戦争の色が濃くなってきて

人々の表情に影が出てくる。

世の中の情勢が変わっていくにつれ

暮らし向きも変わっていきます。

 

その中に織り込まれたひそやかな秘密。

奥様の不倫 に気付いた女中が思い悩んだ末、

ある行動に出るというものですが、

これが!!

筆者 一言言わせてもらうと

奥様のお相手

吉岡秀隆には

色気がない・・・ちゅうことです。

どうも「秘め事」の匂いがしなくて・・ほんとに二人は?と疑問に思ったくらい。

これが伊勢谷友介だったら、井浦新だったら?緊迫しただろうに!(爆)

思ってみましたが、

どうも、

山田洋次監督に原因があるのではないか?

ラブストーリーはムリだったのではないか??という結論に達しました。

 

色気が・・・・・・・・!足りない・・・・・・・・

 

松たか子は綺麗だけれど、奥様言葉もどこか空々しく、

吉岡を本気で愛している気持ちが伝わってこない。

重要な役柄の黒木華も、

たたずまいは女中だけど、

奥様や吉岡秀隆に対する

複雑な思いが

イマイチこちらに伝わってこなかったのは

演出のせいなのか役者のせいなのかわかりません。

片岡孝太郎、台詞棒読みです。

 

米倉斉加年はお年を召されて声が変わっていて

びっくり。この後 亡くなられたと聞いた・・・

 

色々ありましたが

みんな死んでしまって、

人々の悲しみも悩みも

みんな夢の中・・・という無常観と

さらりとした軽い後味が残りました。

おばあちゃん思いの妻夫木くんの現代的な明るさが

そうさせてくれたのかもしれまっしぇん。

 

私のキャスティングでは月丘夢路が奥様、

口うるさい奥様の姉は杉村春子かな。

相手役に伊勢谷友介・・・女中は・誰がいいっかな~~~?

 

時系列がめちゃくちゃでスミマセン!

 

 

 

 

 

 

 


若尾文子の「清作の妻」

2015年01月10日 | ★愛!の映画

長年見たかった作品を

ついに

2015年見ることが出来、感涙。

たいへんな衝撃作でした。

 

田村高広扮する夫に対する

ものすごい愛情と執着は、

「妻は告白する」(61年)で、

ずぶ濡れで

川口浩の職場へ行って迫るシーンを彷彿とさせる、

いやそれ以上の迫力。

 

捨て身、忘我、滅私の権化と言えるでしょう。

 

美しく色っぽいおかねは

(言っときますが、ものすご~~~く綺麗です!)

貧しさゆえ

年寄りの(殿山泰司)妾をしていましたが、

殿山のダンナは風呂上りに倒れ、あっけなく昇天。

 

厄介払いの手切れ金をもらって、

実家がある貧村に戻るのですが

村人に

妾をしていたあばずれ女と蔑まれ、村八分に合うのでした。

 

閉鎖的な村社会がえぐいまでに描かれ

文子ちゃんの孤独が浮き彫りになります。

そこへ村一番の優等青年である清作(田村高広)が戦争から帰ってきます。

日清日露の時代、

兵隊に志願する若者はこの時代、村の誉れとしてもてはやされておりました。

二人は出会い、離れられない関係になって

周囲の反対を押し切り結婚するのでした。

生まれて初めて掴んだ幸せを

絶対に逃したくないおかねは、 狂おしいまでに激しく夫を愛します。

(激しすぎて、見てるほうも何か起きそうな不穏な予感が・・・・)

 

だけど、悪い予感が当たり・・・そんな幸せも長くは続きませんでした。

 

再び召集令状が!!!

愛する夫が死ぬかもしれない!!!そうしたらまたひとりぼっちになる!

 

おかねは

苦しんで苦しんで苦しみぬきます。

 

見てるほうも息が詰まるぅ~~~!

 

思いつめた人間というのは恐ろしい。

そして見送りの儀式の日、

清作の妻

誰もが予想だにしない、行動に出るのです!!!

このくだりがサスペンスタッチでハラハラドキドキ・・・

 

若尾文子は美しいだけではなく

すごい表現力をもった女優さんだ!と今更ながら感嘆しました。

リンチシーンあり。思い切った演出。

 増村保造、我らが文子様になんということをさせるのでしょうか!

 増村監督らしく

不幸・・不幸 ↗ 天国 ↘ 不幸 ↗

メリハリはっきりしてます

 

ラストも予想だにしない展開で、

これまたお見事!

絶対に幸せを逃すまいとする若尾チャンの

アカデミー級の名演に目が覚めた新年でした!

夫役が名優の田村高広なのも大成功。

しつこさ、いやらしさというものが全くなく、

あっと驚く結末に説得力があり、余韻が残りました。

 

 

 

増村保造監督 1965年

日本映画専門チャンネルにて

 

 

 

 

 

 

 

 


「明日の記憶」

2014年07月20日 | ★愛!の映画

普段は考えていないけれど

ふと

想像するだけで奈落の底へ落ちるような恐怖を感じることって

たくさんありますが

この映画のテーマ

「若年性アルツハイマー」もそのひとつだと思い知らされました。

 

花形広告代理店の部長だった渡辺謙が、

若年性アルツハイマーに

なってしまう。

病名を告げられた時の絶望感、想像するだけで恐ろしいですね。

世界の謙さんが

丁寧に丁寧に主人公の心のひだを表現しています。

 

徐々に自己が崩壊していく恐怖におびえつつ

無くなっていくだろう記憶を日記に書きとどめておこうとする

姿は傷ましいの一言。

渋谷の街で突然自分の居場所がわからなくなり

焦りまくる主人公の姿も恐ろしかった。

映像も本人の頭の中の混乱をよく表していて

会社を歩いている時の妄想シーン(からだと脳がぐらりとゆらぐ感じ)は

特に素晴らしかった。

 

ひとり娘の結婚式でのスピーチ、

退職する謙さんを見送るかつての部下たち、

細かい演出が涙を誘います。

 

精神が崩壊していく病気ほど

残酷でつらいものはないのではと

思った。

 

ショックを受けながらも

夫を支えていこうとする専業主婦の樋口可南子が凛と美しく

つらい物語の救いになっていた。

 

あなたがもしこんな病気に罹ったら?

大切な人が罹ったらどうしますか?と問われているような気がした。

でも

答えは出てこないし

映画の終わりもとても切ないものだった。

 

 

日本映画専門チャンネルにて


太秦ライムライト テレビ編集版 見ました

2014年01月15日 | ★愛!の映画

斬られ役の大スター、

「ラストサムライ」で脚光を浴びたことでも有名な

福本清三さんが初主役を務めた、

時代劇への愛に満ちた作品。

 

チャップリンの「ライムライト」を下敷きにし

斬られ役の大部屋俳優と

女優の卵とのふれあいを描く中で

かつて数々の時代劇を送り出した

京都太秦スタジオの衰退が

あぶりだされております。

 

「一生懸命やっていれば、何処かで誰かが見ていてくれる」

華やかな表舞台じゃなくても

自分の持ち場を誠心誠意勤め上げる。

ぐっとくる福本さんの言葉です。

 

そんな福本さんの等身大の生き様が描かれており、胸を打たれました。

 

初ヒロイン役の山本千尋さんはぱっと見、

可愛らしい少女。

 

しかしその実、

世界武術大会で沢山のメダルを獲得している

武術界のエースだそうで

最初、福本さんに教えを請う場面では

おどおどしたへっぴり越し、

徐々に体の芯がしっかりしていき、目つきが変わり

ラストでは別人のように(というかこれがほんとの実力なのでしょうが)

圧倒的なたち回りを披露するなど

見事な演技でした。

 

スタッフたちに

「だんな」と呼ばれる大スターに

待ってました!と声をかけたくなる松方弘樹。

このキャスティングも嬉しかった。

お父さんの近衛十四郎の立ち回りも

すごかったけど、

さすがの千両役者オーラ、華があります。

そうそう、もうひとつビックリだったのは

時代劇の監督役で

中島貞雄監督が出演していること!これは映画ファンには嬉しい!

 

いや~~もっともっと時代劇が見たくなりました。

ブラボ~~福本!時代劇!

 

この作品は今年夏に

劇場公開されるそうです。

ぜひ映画館でも見てみたい!! 

 BSプレミアムにて

監督〕落合賢
〔脚本〕大野裕之
〔撮影〕クリス・フライリク
〔音楽〕戸田信子
〔出演〕福本清三、山本千尋、合田雅吏、萬田久子、本田博太郎、小林稔侍、松方弘樹 

 太秦ライムライト 公式HP


木下恵介の「お嬢さん乾杯」

2013年06月19日 | ★愛!の映画

木下恵介監督

楽しくてちょっと切ない恋愛コメディの傑作。

BSプレミアムの

「山田洋次が選ぶ日本映画100本」で放送されました。

 

1949年公開。

脚本は新藤兼人

 

終戦直後の東京、自動車修理業で財を成した

佐野周二は没落華族のお嬢様、原節子とお見合いをすることになった。

佐野はもちろん一目惚れして、とんとん拍子に事は運ぶが

うまく行き過ぎる話の裏はやはり深い事情があった。

 

教養も品も無いが

お金を稼ぐことは得意な

佐野周二のキャラクターが最高。少々強引だけど

気が良く弟(佐田啓二)の面倒見も良い。

浮き浮き気分の佐野が

洒落たファッションに身を包んだ佐田啓二をバイクの後ろに乗せ

神宮外苑あたり(たぶん)を疾走するシーンが最高。

 

「兄貴、何処へ行くの?」

(佐野、手をハンドルから離し、ヒラヒラさせながら)

「天国さ!♪」

(佐田啓二慌ててしがみつく)

 

原節子は齢 29歳!あの「東京物語」よりも若く、

きらきらと光る瞳は宝石のようであります。

元華族のお嬢様役といえば吉村公三郎監督の

安城家の舞踏会」を思い出しますね。

これもやっぱり新藤兼人脚本でした。

お嬢様言葉を

こんなにもさらりと自然にこなすことが出来るのは、

彼女と、「美徳のよろめき」(こちらもやっぱり新藤脚本)の

月丘夢路が双璧だと思います。

そして母親役にはあの

東山千栄子ざましょう!!

これは鉄板、押しも押されもせぬ無敵の元華族の配役です!

並なみならぬ

ユーモアセンスが散りばめられていて

原節子の祖母の言動とか

佐野周二の表情など思わず笑ってしまう箇所多数。

かと思うとほろりとさせられたり・・楽しめます。

見事なカメラアングル、テンポのいい洒落た演出は

ほんとに驚嘆の一言です。

 

佐野の行きつけのバーのマダムには

黒澤明の「八月の狂詩曲」で主役を演じた村瀬幸子

佐野を励ましながらも

「私がもう少し若けりゃ、ほっときゃしないよ」などと言ってますが

そのわりにはそんなに色っぽくありません(爆)

 

身分違いの恋を周りの人々が暖かく見守り応援する様子は

あのヒュー・グラント、ジュリア・ロバーツの

「ノッティングヒルの恋人」みたいで

やっぱり木下監督って天才!

時代の先を行っていたんだなと再確認しました。

 

もちろん音楽は木下忠司。

灰田勝彦の歌声が高らかに「人生の善きもの」を歌い上げます。

後味も爽やかで希望に満ちている。

山田洋次ならずとも日本の恋愛映画のトップ10には入れたい映画です。

これも見てね♪おすすめ♪

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● 「安城家の舞踏会」

●「美徳のよろめき」(成金の夫役、三国連太郎がいいです)