邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「台所太平記」

2007年10月31日 | ★人生色々な映画
女中さん、お手伝いさん、ヘルパーさん・・色々呼び名はありますが
昔は大金持ちとまではいかなくても
そこそこの家だったら手伝いの人間の
一人や二人はいたものである。(そんなことない?)
おトラさんなんかもそのひとり!
現代は格差社会とやかましくいうが、昔みたいに歴然とはしていなかった。

そんな時代の
主人と女中さんたちの物語。

森繁久弥は谷崎がモデルと見られる小説家。
日がな女中に足をもませているばかりで
仕事している風は見えない。

家をとりしきっている奥様(淡島千景)は大変。
入れ替わり立ち代り出入りする彼女らをさばくのも仕事のうちだ。
そしてひとりひとりの行く末も案じる。

山茶花究と見合いする森光子 
酒好きの乙羽信子 ペンフレンドがいるグラマーな京塚昌子、
ダメ男に惚れている大空真弓、不気味な淡路恵子(!)
淡路といい仲の水谷良重、
女優に憧れる団令子、美しい池内淳子。

田舎から出てきた若い娘たちにはそれぞれ青春があってドラマがあって・・
団令子が生意気っぽくて可愛い。

豊田四郎の演出、コメディの味付けも冴えてます。
森繁はちょっと作りすぎ?のきらいがあるけど。

にぎやかでちょっとほろりとさせる、
この時代ならではの題材。

最後にチャキチャキ現代娘の中尾ミエが登場するにいたって、
時代は変わっていくのねえとこうなるのだ。

スタッフ、キャスト共に超豪華で
文学の香りもふわ~~っと匂うような作品です。

使われるほうも大変だけど、使うほうも大変だな~と
淡島千景の奥様に同情したりして。

1963年 豊田四郎 原作 谷崎潤一郎
脚色 八住利雄 撮影 岡崎宏三 音楽 団伊玖磨  美術 伊藤熹朔

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「夜の蝶」

2007年10月29日 | ★人生色々な映画
女なら誰でも一度は憧れる(?ってことはないか)銀座の女。
華やかな世界の裏側では、血で血を洗う抗争が繰り広げられていた。(違うか)

京マチ子VS山本富士子の一騎討ち。
タイプが全然違うこの二人、軍配はどちらにあがるのでしょうね?

夜の街を
ふらりふらりと漂うジゴロ風の男、船越英二は狂言回しの役柄。
音楽家崩れでちょっとダメな男が似合っていて、
住んでいるアパートが
どこか「巴里のアメリカ人風」なところがオサレである。
突然尋ねてきた山本富士子に驚き、
とっさにパジャマの上に(直前まで女がいたのである)
トレンチコートをひっかけて部屋に招き入れるのが可笑しい。

じっとり、どろどろではなく、
あくまでもからっと女の戦いを描いているのは
女を撮らせたら天下一品の吉村公三郎。

それにしても山本富士子の化粧は濃い。京マチ子も負けじと濃い。
そしてご両人とも文句なしに上手い。

こんなふたりがガチンコで戦うんだから面白くないはずが無い。
「夜の蝶」とは言いえて妙なタイトルである。
店の客、中村伸郎や山村聡、高松英郎、宮口精二らの見せ方も見事だ。

最後のあっけなさには唖然としたが、それも味であろうか。

関係ないですけど、
着物を着て酔っ払うと最高に苦しいんですよね~~~

1957年 吉村公三郎
原作川口松太郎
脚色 田中澄江 
撮影宮川一夫  
音楽池野成
美術 間野重雄

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「汚れた英雄」

2007年10月23日 | ★人生色々な映画
天才ライダー北野晶夫(草刈正雄)は、
抜群の容姿を利用して
パトロンを見つけロードレース界の頂点へのし上がって行く。

ストーリーはかいつまんで言うとこれだけです。

汚れた・・と原作にはありますが
映画では主人公は別段汚れてなんかいないような。

モノトーンでまとめられたスタイリッシュなインテリア。
地下のプールでひと泳ぎした後はしなやかな肢体にバスロープをひっかけ、
ホームバーでペリエにライムを搾り、夕日を見ながら飲み干す。

ここまでで背中がむずかゆくなった人は、
とても
最後までは見られないでありましょう・・・

おもむろに向かう広々としたウォークイン・クローゼットには、
おびただしい数の高級な洋服が整然と収納されている。

「今夜のパーティには・・・黒のアルマーニにこのタイ、
いや・・こっちがいいか・・・こんなとこだな・・」

な~~んちゃって。
勝手に台詞をつけました。

白人女だろうが娘だろうが年増だろうが、
女を皆夢中にさせるが、決して心までは許さない。

草刈正雄、ヌー●もいとわず!

ストイックに体を鍛え上げ、
レースに挑む孤独なレーサー。

これが男のロマンでなければなんとする!という、
角川春樹の美学が詰め込まれた映画。

ほんとは監督がこの役、やりたかったのではないだろうか。

海辺でのラブシーンなどはキザ過ぎて卒倒もの。
柳沢慎吾がコントで真似をしそうである。

つっこみどころだらけの映画ではあるが
オートバイが好きな人にはたまらないレースシーンが
ふんだんに盛り込まれている。

奥田瑛二が「出てたの?」というくらいのチョイ役。
浅野温子は今と違って?自然な演技、木の実ナナは今と同じ。

とってもわかりやすい内容なので、
これ今の時代に十分ウケるのでは?と思ってしまった。

1982年

監督   角川春樹
脚本   丸山昇一
原作 大藪春彦
撮影 仙元誠三
音楽   小田裕一郎
美術   今村力
出演 草刈正雄 レベッカ・ホールデン 勝野洋
奥田瑛二 浅野温子 木の実ナナ

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ガクトと佐藤慶と勘助

2007年10月22日 | ★TV番組
「風林火山」を見た。

姫様を亡くして失意のどん底の
山本勘助と
家来どもの狭い了見にうんざりした長尾景虎(上杉謙信)が

トゥギャザ~~!

というか、お互い小休止したくなったところで
ばったり出会ったということ。

そして敵同志がなぜか同じ釜の飯を食うはめに・・
並んで食事しながらも一瞬も気を抜けないような、
緊張感があった。

ガクトはいきなり目を見開いたかと思えば
細い目になったり、
表情の先が見えん!!からね~~

軍神と呼ばれる景虎は
信心深く世俗を離れているように見えながら
(それと少しマザコン)
実はものすごく猛々しく、スィッチが入ると大変危険!
全然ヤワではない性格設定が良い。

台詞の抑揚が見事で、まるで歌のようだ!
さすがミュージシャンである。
今にもギター持って「ギャ~~ン!」と、歌いだすかと思った!!

ま そのくらい予測がつかない緊迫感と面白みがあったのです。

内野勘助はぐんぐんと力がこもった芝居で、
見ているとしらずしらず
奥歯を噛み締めてしまう・・・

荒ぶる二人をいさめたのは
佐藤慶上人だった!
さすがにお年を召されたが
堂々とした台詞まわしは紛れも無く佐藤慶

なんだか顔を見ただけで感動!

緒方拳はひっそり地味にしていても、いや
地味にしていると尚更怖いのはたぶん先入観というかトラウマ?

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新藤兼人の「触角」

2007年10月14日 | ★愛!の映画
新藤兼人監督・脚本による
精神的近親相姦ともいえる濃密な心理劇。
ギリシャ悲劇チックな台詞も入る。

はっきり言ってキモチワルイお母さんと息子の過剰な密着。

高名な画家の未亡人(乙羽信子)は
忘れ形見である息子(大丸二郎)と海辺の瀟洒な家で静かに暮らしている。
そこへ全くの他人である、若い女八重(太地喜和子)が入り込むことで
平和な生活のバランスが崩れていく。

こういうパターンは「鬼婆」でも見られた。
それなりに調和している世界に入り込んでくる脅威。

言葉に表さないまでも母子の脳裏には甘い、
密やかな「思い」が渦巻いている。

すぐに何かを感じ取る八重。
こういう気配って、敏感な女だったらすぐわかりますよねえ。
二人を見る「目」がピカピカ、きらきら光ってイイ!

太地喜和子は濃厚な色気が発酵し始める(?)直前。
すっきりとした均整のとれたプロポーションで、
無邪気で感性豊かな女の子を清潔に演じている。
夏の太陽と海が良く似合う、健康的なイメージ。

晩年の匂うような色気もよかったけど、
いたずらっぽい動物のようなたたずまいが素晴らしい。それと
演技がうま~~い。大変な才能を感じる。

後半になって
ドロドロした葛藤の中に反戦思想も盛り込まれ、
問題はもっとややこしくなる。
母親そっくりの娼婦(乙羽の二役)が息子の前に現れるのだが、
顔半分がケロイドでただれておるのだ。
このあたりの禍々しさは
さすが新藤監督と、汚れ役どんとこいの乙羽サンである!
乙羽信子は惜しげもなく裸身もさらけ出していて
ど根性に恐れ入る。

また書いてしまうけど、
たまらなくおどろおどろしい作品になるところ、
太地の溌剌とした魅力が我々を救ってくれる。

時折挟まれるシュールな映像、
妙にシャレた?音楽もあやういバランスを保つことに
一役かっていることも付け加えよう。

1970年
監督 新藤兼人 脚本 新藤兼人
撮影 黒田清巳
音楽 林光  美術 赤坂太郎

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