先代幸四郎(松本白鸚)主演の
元祖鬼平犯科帳シリーズは
大胆な演出と
名優のゲストによる、粒より作品が見られる。
特に「時代劇専門チャンネル」で
昨日放送された「はさみ撃ち」」(脚本・井手雅人、監督・小野田嘉幹)
はう~~んとうなる名作だった!
昔盗賊だった男の家に
そうとは知らず押し入った盗賊が
ベテラン盗賊と、
盗賊仲間と見せかけた平蔵たちにはさみ撃ちにされる話。
平蔵たちの変装や
柳の女房、八木昌子の色っぽさも良かったが
柳永二郎扮する、元大泥棒の風格は
アカデミー賞主演男優賞なみでした。
薬問屋の主、柳永二郎は足を洗った大盗賊の頭で
年老いた番頭(佐川 俊二)も実は手下だったが
盗んだ大金を元手に
何食わぬ風情で堅気の生活を営んでいた。
年が離れた欲求不満気味の(爆)女房(八木昌子)がひっかかった
出入りの商人は
実は大店を狙う盗賊の一味だった。
女房が浮気していることを知りながら
そ知らぬ顔で泳がせる老獪な柳。
つまらぬ嫉妬などとは無縁な、
世の中を知り尽くしたような冷徹な目には
恐ろしいほどの凄みがありました。
番頭に話す言葉・・・
「俺は眠れねえ夜にはよ、 昔やった仕事をひとつひとつ思い出すんだ。
面白かったなあ・・おい」
「所詮女なんてものは不出来なものよ」
「男はやはり死ぬまで仕事がついてまわるもんだぁな・・・」
若者にはかもし出せないシニアの叡智、粋、
余裕がぎっしり詰まっている。
台詞まわしが粋で~~~~す。
喜劇役者佐山俊二の
相方であり、古女房のような番頭も
ユーモラスで味わい深く・・・
酸いも甘いもかみ分けた、
海千山千の年寄り二人が、上機嫌で互いを労わり合うように
肩を寄せ合って歩くラストは
極上のほうじ茶と和菓子をいただくような
安心感とくつろぎ感に満ちていました。
息子吉右衛門も素晴らしいけど、
松本白鸚の平蔵は原作者池波正太郎のお墨付とあって
堂々とした風格と人情味、
さらに全身からほとばしる江戸の粋・・で
番組をきりりと引き締めます。
「あれは、もう人間の顔じゃねぇ・・
あそこまで 行けば仏様だ。欲も得もなく、毒も害もねぇ。
あれが大盗賊だ。オレの若い時分には、 大分残っていたが近頃じゃ・・格が落ちたな・・」(笑)
シリーズ全部チェックしたい!!
脚本・井手雅人、監督・小野田嘉幹