井上靖原作を川島監督がお料理すると
こんなにしゃれた一品になります。
助監督に今村昌平。
脚本は菊島隆三。
1955年に製作されたとは思えないほど
今見ても古さを感じないのは
女性を取り巻く社会(男?)がちっとも進歩していないからだろうか?
言い換えると普遍的なテーマを描いているからかしらん。
三橋達也演じる山男の克平と
お嬢様育ちで専業主婦の八千代(月丘夢路)は気が合わず、
ことごとく衝突する。二人の間に子供は無い。
人と人の相性というのは微妙なもので
その人には欠点だったところが
別の人にとっては魅力になったりもしますね。
克平もずいぶんで、
「俺は山に登るために生まれてきたんだ」
「お前とは5年だけど、山とは20年の付き合いだ」
なんて言っちゃったり。
当然八千代は頭にきます。
自由人の克平と、我が強い八千代はみてるだけでも
相性悪~~~~。
かたや、洋裁店を営む独身キャリアウーマンの杏子(新珠三千代)は
親子ほど年の離れた実業家の梶(山村聡)とプラトニックラブ関係。
梶は八千代の父親であった。
その二組の男女の中に飄々と登場するのが
頭の中はカジカでいっぱいの
学者の曽根(三國連太郎)。
朴念仁のオタク研究家をユーモアたっぷりに演じている。
八千代はそんな曽根に親しみを感じ、アタックするが
曽根はやっぱりカジカしか無いのであった!
こちらも見ただけでも「やめといたほうがいい」カップルだった。
梶にとって自分は「夢」であると知りながらも
本当に好きになった
三橋達也の元へ向かう新珠三千代が興味深かった。
また月丘夢路が三橋達也を見切って自立の選択をするところも新しい。
身勝手な男を捨て
二人の女性は積極的に自らの幸せに向かって走っていく。
考えさせられる台詞がいっぱいだ。
「男の人はみんな女を飼い殺しにするんですわ」
「私はお母様のように猫を抱いて暮らしたくはありません」
ん~~ん!そうだそうだ!
と、
スクリーンいっぱいに映し出された
月丘夢路の麗しいお顔を見ながらうなずいた私でした。
「あした来る人」の意味は一番最後に語られます。
後味スッキリ!の大人の恋愛映画。
1955年
監督 ................ 川島雄三
助監督 ................ 今村昌平
脚本 ................ 菊島隆三
原作 ................ 井上靖
撮影 ................ 高村倉太郎
音楽 ................ 黛敏郎
美術 ................ 中村公彦
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