邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「黒田騒動」

2006年06月29日 | ★ぐっとくる時代劇
吐夢監督、今度は本物の大きな船を炎上させる!!

日本三大お家騒動のひとつとして
名高い黒田騒動とはどんな騒動だったのでしょうか。
日本史も勉強した気分である。

徳川幕府は
切支丹狩り、外様大名の取り潰しに躍起になっていた。
幕府にとって取り潰しお誂え向きの外様大名、
筑前五十七万石黒田藩主黒田忠之(片岡栄二郎) は
美しい切支丹の女、秀(高千穂ひずる)にたぶらかされて、
言いなりになってしまう。

でれでれと、女に乞われるまま大きな船を建設したり
家来の進言により必要以上の人数の足軽隊を結成したりして
幕府方の懸念を引き起こしてしまうのだった。

そこで登場するのが
家老栗山大膳(片岡千恵蔵)である!

目をつけられぬように慎重にしろと言ったのに!
このままではお家の一大事!

くそおお秀と十太夫、単純な殿を意のままにしおって。
ここはなんとしても先手を打たねばならぬ。
くそおおこうなったらやるしかなかろうて!」

千恵蔵はこんなこと言いません(筆者勝手な解釈による脚本につきあしからず)

捨て身の画策により見事黒田藩を救うのだが・・
その手口があまりにも大胆不敵で唖然とする!

そして、
燃やしましたね、
大砲を撃ちこんで作ったばかりの大きな船をまるごと。


片岡千恵蔵、この映画では「自来也」で魅せたようには爆発しない。
あくまでもじっくりと重厚な演技で締める。
やったことはすっごく大胆でしたが。

大膳と対峙する倉橋十太夫を演じたのは、若き南原宏治だ。
下っ端侍から側近に成り上がった野心家で、
今の役者でいうと北村一輝がやるような役であろうか。
若いときから闊達な演技です。
殿様はころりとこの若者にもまいってしまう。

船を燃やしただけではなく、
あっと驚く大膳の行動がその後待っているのだが・・
水面下での忍者同士の戦いや、お約束の「黒田節」なども楽しめ、
堅くない娯楽作品として仕上がっている。

忍者が、鉄砲隊が待機する門前のど真ん中を
駆け抜けようとするシーンがあったが
あれはいくらなんでも「無謀」だと思う。(案の定蜂の巣になりました)

1956年監督 : 内田吐夢 製作 : 大川博 原作 : 北条秀司
脚色 : 高岩肇  撮影 : 吉田貞次 
音楽 : 小杉太一郎 美術 : 鈴木孝俊 

ブログランキングへ
気が向いたら応援してやってださい


「逆襲獄門砦」

2006年06月27日 | ★ぐっとくる時代劇
先日、満州で映画製作の指導をした
映画関係者たちの足跡を追うドキュメンタリーを見た。
映画のことを何も知らない中国人に撮影のノウハウ、
編集の技術などを教えた方々は中国映画の基礎を作った。
だが、帰国した彼らを待っていたのは共産主義に加担した」
という冷たい世間の目だったという。
この作品を撮った内田吐夢監督もそういうひとりだった。

大陸でそのダイナミックな感性が培われたのだろうか。
飢餓海峡」、錦之介の「宮本武蔵」シリーズ、
型破りのスケールの大きさは日本人の枠を超えている。
片岡千恵蔵と組んだ「血槍富士」の立ち回りも圧巻だった。

時は幕末。役人たちは尊王、佐幕派に別れ、
権力争いの渦にいた。

天領地江州に新たに赴任して来た代官脇群太夫(月形龍之介)は
民百姓に圧政を加え、幕府の盛り返しを狙う。
更に討幕軍を討つ頑強な砦を築くために領民に重労働を強いる。

難しいことはわからねえ~~
代官さまたちの思惑は知ったこっちゃねえ~~!
砦の仕事は嫌だ~
おらたちは明日食う米もねえだ~~
人質の爺さま返せ~

おらたちの米を返してくんろ~~~~わあああ
(筆者解釈による勝手な脚本につきあしからず)

猟師の照造(片岡千恵蔵)がリーダーとなって決起した民衆は、
一気に代官屋敷に押しかける!!

怒涛のような一揆シーンはこの映画の最大の見所であろう。
のべ、何百人を使ったのか?あっけにとられるダイナミズムだ。
なるほど、門はこうして壊すのか。まるごとの大セットを破壊し、
屋敷になだれ込む!

片岡千恵蔵と憎憎しい月形龍之介の戦いも見ごたえがあった。
二人とも腹の底から絞りだすような声で見せ場を盛り上げる。

片岡千恵蔵が虐げられれば虐げられるほど、
その後にくる爆発が楽しみでわくわくしてしまう。

権力に対する反抗がテーマである。
ウィリアム・テル」が下敷きになっているのでしょうか。
(酷似している)
ストーリーはシンプルなのに感覚としては
まるで「ローマ帝国の崩壊」を目の当たりに見たような重量感だった。

代官屋敷をぶち壊してしまった百姓たちは大歓声をあげるが、
その後の運命は語られていない!

1956年 監督 : 内田吐夢 脚本 : 高岩肇  撮影 : 吉田貞次 
音楽 : 深井史郎 美術 : 鈴木孝俊
■ブログランキングへ
気が向いたら応援してください

「心」

2006年06月24日 | ★人生色々な映画
松橋登である。

苦悩する若者・・をやらせたら天下一品ですねえ。
夏目漱石の原作をベースに新藤兼人が
脚本を書き、監督も務めている。

舞台は明治ではなく
現代(といっても70年代)に置き換えられていた。

久々の松橋登はやっぱりよかった。
繊細な芝居で主人公K(名前は記号で表されている)の心理を演じきる。
恋の衝動、裏切り
友を死に追いやった苦しみを端正な顔ににじませる。
甘く、深みのある声でのナレーションも素晴らしかった。

この人はひとり芝居ででも、
きっと魅せとおすだろうけれども、
無骨なSを演じた辻萬長
対照的で面白かった。

だがいったい、あの「an an 」から抜け出してきたような
I子(杏梨)は何もの?

関係ないけど、仕立物を生業としている下宿のM婦人を演じた
乙羽信子の手つきがすごくて驚いた。
「香華」でも裁縫が得意な母親をやっていたので、
ほんとに得意だったのかもしれない。
夫の新藤監督はよくご存知だったのだろう。
もっとも、この年代の方まではたしなみとして
日本女性は普通にお裁縫が出来たのですねえ。

私は劇団「四季」の頃の勇姿を知らないので、
松橋さんで思い出すのは魔界転生
細川ガラシャにおぼれる家綱将軍であろうか。
狂気の芝居も抜群に似合うのだった。
これもよかったが。

生きることの普遍的な苦しみを静かにしかし深く描いた映画であった。

監督 : 新藤兼人  原作 : 夏目漱石
脚本 : 新藤兼人 
撮影 : 黒田清巳 音楽 : 林光
美術 : 難波一甫

ブログランキングへ
よろしかったら応援してください


絵付き「楢山節考」

2006年06月20日 | ★人生色々な映画
先日見た木下版
幻想的な民話調で、舞台劇のようだったのに比べ、
今村版はこれでもかと
ショッキングな映像を突きつけたものになっている。

見たくないものも見せる、
これが今村流だ。
清川虹子の
ヌードは・・・どうでしょう?

動物の交尾シーンは
人間のそれと重なる。
でんと構える女性に対し、
男性があたふたとしていて滑稽だ。

残酷な場面はとことん残酷に!
これも今村流だ。
放送禁止直前のボロ頭ボロ衣装、これも今平だ。

人間も動物も等しく自然の一部であるということが
強調され、特に
左とん平は完璧に自然と同化していて見事だった。
何度か爆笑。

練り上げられた脚本と演出による
挿話のはさみかたも巧みなら、
クライマックスの
お山参りはロケを交え大変リアル。

音楽は池辺晋一郎。
荘厳な調べで情感豊かに盛り上げる。

ラストの無言の演技には
わかっているのに泣かされてしまう。
緒形拳はやっぱりすごい。

今村監督は
エネルギッシュすぎて
やわな日本人には太刀打ち不可能です。

汚いものも醜いものも
全部ひっくるめて人間なのである。
そして今日へと営みは続いて行く・・

合掌。

1983年 監督 : 今村昌平   原作 : 深沢七郎  
脚本 : 今村昌平  撮影 : 栃沢正夫  
音楽 : 池辺晋一郎  美術 : 芳野尹孝

ブログランキングへ
面白かったらクリックしてね

絵付き「忠直卿行状記」

2006年06月19日 | ★ぐっとくる時代劇
越前六十七万石藩主、
松平忠直の祖父は徳川家康。
「本来なら将軍にもなれる身の上だった」
という、生い立ちもこの人の場合災いとなった。

早くに父を亡くし、母と別れて幼くして越前藩主となった忠直は
武芸に優れた若殿として、順風満帆の日々を送っていた。
だが
ある晩、ひょっこり家来たちの話を立ち聞きしてしまったことで
天地がひっくり返るような衝撃を受ける。

「おぬし、殿の腕前をどう思う?」
「以前ほど、勝ちをお譲りいたすのに、
骨が折れなくなったわ。わっはっは・・」
さしずめ
が~~~ん!というところだろうか。

いやもっと深刻な大ショックを受けてしまった忠直は、
青空に向かって伸びる青竹のようだったそれまでとはうって変わり、
手がつけられない暴君と化してしまう。

今までの生活は全部嘘で塗り固められたものだったのか!

誰もが「何もそこまで・・」と思ってしまうが
市川雷蔵がやると「ごもっとも」と、説得力が加わる。
一本気の若き殿さまの焦燥と苦悩を
狂気を帯びた瞳で演じ、一風変わった悲劇としている。

「遅すぎた反抗期」というにはあまりにやりすぎだが、
母親(水谷八重子)の過保護ぶりもちょろっと匂わせ、
深みを加わえている

菊池寛の小説を時代劇のベテラン八尋不二が脚色、
ドラマチックな演出が最高:「不知火検校」などの森一生が監督した。

行状の真偽はともあれ、実在の人物がモデルで
雷蔵主演の映画にはさすがに出てこなかったが、
もっと残酷な所業も伝えられているようだ。

適当な画像が無く殺風景なので
gooの「おえかきツール」というのを使って絵を描いてみたら
「生首」のようになってしまった。
ファンの方怒らないで!!

ネットでテキスト(by 菊池寛)を見つけましたので、
興味があるかたはどうぞ。

しかし似て無さすぎるな~

1960年 監督 : 森一生  
原作 : 菊池寛 脚色 : 八尋不二  撮影 : 相坂操一
音楽 : 伊福部昭
美術 : 西岡善信

ブログランキングへ
よろしかったら応援してください