大島渚の監督第二作目。
冒頭に安保反対のデモが映る。
大学生、清(川津祐介)は
学生運動に参加するわけではなく、勉学に励んでいる様子も無い。
女にも冷めていて、本能のままに生きているようにみえる。
家庭教師先の人妻(色っぽくない)を抱いている時も薄情な態度。
チンピラに絡まれているマコを助けたことから付き合い始めるが、
二人は美人局で小遣いをかせぐことに・・・
マコに桑野みゆき。
清をみつめる真摯な目が美しい。
何も信じていない風の清。
何かを信じたいマコ。
世の中を変えようと学生運動に没頭し挫折した男(渡辺文雄)が
清たちのことを、
「俺たちとは違い、無軌道な行動によって世間に反抗している・・
だが果たしてこの社会に勝てるか?」・・と言う場面がある。
堕胎して眠るマコの傍らで
何かに怒りをぶつけるように林檎を齧る清。
青春を突っ走った二人の末路は・・・!
チンピラの親分(佐藤慶)が、女を階段から突き落とす場面がある。
凄まじい「階段落ち」で、びっくり。
「青春・・・」という題名は鮮烈で痛ましいイメージ。刹那的な美しさがある。
だが、「中年残酷物語」だとコメディに、
「老人残酷物語」だと、
目をおおいたくなる映画になるような気がする、などと
ばかなことを考えたりしました。
川津祐介と桑野みゆきの演技は素晴らしいです。
1960年 大島渚監督作品 松竹
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また忘れられない映画がひとつ増えた。
さすらい日乗さんに
BSで放送されることを教えていただき、
篠田正浩監督の「涙を、獅子のたてがみに」を見る。
冒頭、瓦礫の中をとぼとぼと歩く野良犬は
強い獅子に憧れながら、騙され傷ついた主人公サブ(藤木孝)のようだ。
白黒の、港の映像にガムを噛む藤木の顔がかぶさる。
これはフランス映画?と思うタイトルバック。
藤木孝の鞭のようにしなやかな肢体、
ほとばしるような生気。絶叫。そして歌の素晴らしさ。
この映画は彼が渡辺プロから独立したときに作られたそうです。
ずいぶん前に「懐かしの・・」みたいなTV番組で
ロカビリーの曲をちらっと聴いて、
悪魔的な魅力に打ちのめされた。
それ以来聴きたくても聴けなかった彼の歌を
この映画の中で存分に聴くことが出来た!
舞台は横浜の港。
港湾荷役労働者(早川保ら)の組合設立を阻止する会社側(南原宏治)に
騙され利用される若者(藤木)の悲劇。
サブを愛するウエイトレス・ユキに、これがデビュー作である加賀まりこ。
いじらしく可愛い。
アンニュイな人妻に岸田今日子。
篠田正浩監督の画面は
構図が最高に美しい。
横浜の街、港、海。
飛び跳ねるように歩くサブを追いかけるカメラ、
労働者たちの群。
ラストシーンは劇場にいるような陶酔を覚えた。
港近くにあるサブの狭い部屋。
ユキの前で歌う、
「私を捨ててしまってくれ」は
一度聞いたら忘れられなくなる歌だ。
(この曲はもう一度ヨットの上でも歌っている)
*************************
「私を捨ててしまってくれ」
作詞寺山修司 作曲 八木正生
年老いたカモメよ 哀しみよ
心あるならどうかわたしを捨ててしまってくれ
すっと遠くの日の沈む沖よりも
ずっと遠くの海に
私を捨ててしまってくれ
カモメ、カモメ
昔の愛よ
カモメ、カモメ
汚れちまった私の夢に
海のうねりが高すぎる
**********************
・・・
「いいわよ。一度だけなら・・」(ユキ)
金持ちパーティに潜り込んだ貧しいサブが
体中から搾り出すようにアカペラで歌う
「地獄の恋人」も衝撃。
寺山修司と八木正生のコンビはあの
「あしたのジョー」「力石徹のテーマ」でも有名。
脚本にも寺山修司の名がある。
寺山の葬儀で「100年経ったら帰ってきてくれ」と誰かが言ったとか?
100年と言わず帰ってきて欲しい。
篠田+寺山の大傑作。
DVD出しておくれやす!
1962年 篠田正浩監督作品 脚本 篠田正浩、寺山修司、水沼一郎
■藤木孝「24,000のキッス」もどうぞ!
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撮影所の中でゴーカートを乗り回し、
21歳でこの世を去ったトニーこと赤木圭一郎。
白いヘルメット、赤いジャンパーにジーンズをはいていたという・・
やんちゃな裕次郎、豪放磊落な小林旭、
に比べ・・・この人は・・・
憂いを秘めた瞳、ナィーブな横顔、
長身でスレンダー、美しい身のこなし・・・甘い声・・
彼こそ非の打ち所の無い大スターだった!(大ひいき)
名前は知っていても彼の映画をきちんとみたことはなかった。
今回あらためてその強烈な魅力にしびれました。
これだけ素敵でもまったくイヤミが無いのも特筆に価すると思う。
ヒロインは最新モードを着こなしたオードリーヘプバーン・・
じゃなかった、浅丘ルリ子。可憐です。
パステルカラーのカーテン、
洋風の部屋のセット・・大きなアメ車、
そこには憧れのアメリカが見え隠れする。
だが日活映画は国籍不明。アメリカ、はるか超えてます。
ライバルのコルトの銀(宍戸錠)と共に
いきなり民家で銃をぶっ放す主人公、抜き打ちの竜。
麻薬と縁を切った竜は持ち前の銃の腕で恐れられていた・・暗黒街のガンアクション。
西村晃の思いっきり胡散臭い中国人も登場して国際色も満点だ。
宍戸錠は今なお大スターの香りがぷんぷんする数少ない役者である。
人差し指を立てた「チチチ!」ポーズ、
この映画を見て真似してみてください。
小林旭と宍戸錠にはうんと長生きして、
日活映画の魅力を後世に伝えてもらいたいものだ。
そして赤木圭一郎ブームよ、再び来たれ!
1960年 野口博志 監督作品 脚本 山崎巌
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は、この映画の中の台詞です。
鈴木清順監督の作品は見出すと中毒になる。
エネルギッシュな映像の魔術師は、
来春にオダギリ・ジョー主演の平成の狸御殿映画を公開予定。
ストーリーは一言でいうとやくざ同士のいざこざなんですが
ショットのひとつひとつが
まばゆいほどに美しい。
幻惑的な色彩感覚。何もかもが真っ白なセットの中で
白づくめの渡哲也がコルトを構える。
あたり一面まっ黄色になるかと思えば、
墨を流したような真黒の画面に真っ赤な花。
エメラルド色のドレスを着て歌う歌姫。(松原智恵子)
雪の中のSL。
これはまさしく色彩のブルース!
ビリビリくる台詞(脚本)を書いたのは川内康範。
この人は大ヒット曲「伊勢崎町ブルース」や
「おふくろさん」などを書いた作詞家、そして小説家でもある。
「頼むから俺を怒らせないでくれ」(渡の独り言)
驚くべきことはまだまだある。
松原智恵子の歌姫、「てつやさん!」以外の言葉を発しません。
渡哲也が着るパステルブルーのスーツ、
真っ白のスーツなど、衣装の色もまた「画面の一要素」になっている。
カット割りが大胆!
競演は雰囲気が抜群の川地民夫、
そして二谷英明、
ちあきなおみの夫だった郷治(宍戸錠の弟)、など。
ほとんどミュージカルといわれるくらい音楽が使われている。
スクラップ工場で真っ赤な炎に焼かれる車、
どこからともなく聞こえてくる
「東京流れ者」のテーマに鳥肌が立った!
ぶっちぎりの脚本と鈴木清順の映像、木村威夫の美術が合体した傑作。
港で愚連隊(懐かしい言葉)が並んで歩いているシーンは
まんま、”レザボア・ドッグス”。
タランティーノに真似された。
1966年 鈴木清順監督作品 川内康範原作・脚本 日活
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ようやく、そのわけがわかったような気がする。
底抜けに明るい笑顔、兄弟愛、喧嘩、親子の愛。
シンプルで誰にでも受け入れられるわかり易いストーリー。
無力な若者が努力と負けん気で這い上がっていく。
そしてもちろん、恋も。
昭和の時代には人々の顔に希望があり覇気があった。
世の中はそんな「時代の気分」を代表する
大スターを求めていたのかもしれない。
裕次郎は昭和に呼ばれた男だったのか。
「音楽なんてやくざな稼業」と、認めてくれない母を見返すために、
「ちくしょう。こうなったら日本一のドラマーになってみせるぜ!」と
がむしゃらに練習する裕次郎いや国分正一。
どんな強い人間でも人は愛を求める。
正一も「母さん、あなたに褒められたくて」が原動力になっていたのだった。
高倉健がそんな本出していましたね。
正一の才能を伸ばし支えるスポンサーのような役に北原三枝。
素晴らしいプロポーション、目鼻立ちがはっきりした美人だ。
北原三枝が住む裕福な家のセットもモダンで素敵です。
(婆やがいたり)
ポップアップ・トースターとかパステルカラーのミキサーとか
雑貨好きの方もこの時代の映画は要チェック。
”チャーリー”というライバルドラマーに
ジャズ歌手の笈田敏夫さん。
この9月に亡くなられたらしい。偶然TVの追悼番組を見た。
銀髪が美しく、ずいぶん存在感がある人だなあと思っていました。
ドイツ生まれの慶応ボーイで、戦後の日本ジャズ界をリードした人です。
二人のドラム合戦が見もの。
手を怪我した正一が思うようにドラムを叩けず、
即興でこの唄を歌って大うけし、一躍トップスターになるのです。
「嵐を呼ぶ男」*************************
おいらはドラマーやくざなドラマー
おいらが叩けば嵐を呼ぶぜ
喧嘩代わりにドラムを叩きゃ、恋のうさも吹っ飛ぶぜ
(台詞)この野郎!かかってこい
最初にジャブだ、ストレートだ!・・・(ヴァーチャル喧嘩ドラムですね)
ちくしょーやりやがったな・・・・・(この後ジャブだフックだと続く・・)
・・・・アレアレ、のびちゃったぁ~~(!)・・・中略・・
・・年がら年中ドラムを叩きゃ、借金取りも逃げてゆくぅ~~♪
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ふざけているわけではなく、ほんとにこんな歌詞です。
ゴキゲン!
「評論家」の役で山守のオヤジ/親分が・・・
金子信雄がベレーかぶって出ちょるよ。↑
可愛いけん、見てつかあさい。
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