
報道によりますと、北大西洋の深海に沈没したタイタニック号を観光するために潜水して消息を絶った潜水艇「タイタン」の乗員5人全員が死亡したと、米沿岸警備隊が22日(現地時間)公式発表したとのことです(注1)。先ず亡くなられた5人の乗員乗客の皆様のご冥福をお祈りいたします。潜水艇パイロットでツアーの責任者のストックトン・ラッシュ氏の奥様は1912年のタイタニック号犠牲者ストラウス夫妻の玄孫だそうで(注2)、特別な思い入れが同氏にはあったのかもしれません。そうだとしても悲惨な事故で本当に残念なことです。
それにしても3800mもの大深海に観光旅行ができるー莫大な費用が必要とはいえーという事実に驚きました。よく言われていることですが「宇宙旅行より海底探査の方が難しい」とされています。昨年の米国立海洋大気庁の統計によると、人類は数万年間にわたり海水面を探険してきたが、現在まで精密に地図化された海底は全体の約20%にすぎないのだそうです(注1)。21世紀の今日、人類は月、火星(上の写真です 注3)、金星、水星、土星の衛星タイタンなど太陽系各天体の精密な表面地図を作成しているにも関わらずです。宇宙空間の高真空、強烈な放射線、短波長紫外線などの悪条件も、深海の完全な暗黒、超高水圧、極度な低水温などの諸条件の方が厳しいようです。特に水圧が厳しく、鋼鉄の固まりのような頑丈に見える原子力潜水艦でも潜水深度の限界は500 m~600m程度だそうです(注4)。1963年4月9日には米原潜SSN-593 スレッシャーは水圧で圧壊し北大西洋2500mの深海に沈んだという事故もありました。
(注1)https://japanese.joins.com/JArticle/305832
(注2)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB22C7E0S3A620C2000000/(注3)https://astropics.bookbright.co.jp/mars-mola-map
(注4)1984年8月4日、旧ソ連の原子力潜水艦K-278コムソモレツは、ノルウェー海で水深1027mまで潜水するという記録を打ち立てたそうですが、これは普通ではないそうです。