博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

「サピエンス減少」を読んで(続き その2)

2025年01月28日 | 時事
(昨日の続きです)
 女性の自己決定権の拡大が少子高齢化の原因となるのは、国家が経済成長を成功させた場合です。その実例として日本と韓国が挙げられますが、中国も同様です。中国の出生数は2016年に1,786万人となりピークを迎えました。しかし、その7年後の2023年には902万人とほぼ半減してしまいました。この劇的な減少から中国の人口は西暦2100年には現在の14億人2,520万人から5億人程度まで減ってしまうのではないかと予測されています。同時に高齢化も進展しており2022年末時点で、60歳以上の高齢者は2億8,000万人を超え、総人口の2割近くが高齢者になっています。西暦2100年には中国人の2人に一人が高齢者になると予測されています。7年ごとに世代人口が半分に減っていく、しかも、そのペースが加速する可能性もあります。昨年4月にはインド(14億4,170万人)に世界人口トップの座を奪われてしまいました。
 中国はなぜこんなことになってしまったのでしょうか?原因としては、1979年から2014年まで実施された「一人っ子政策」という極端な産児制限が30年以上にわたって続けられたことが影響しているようです。これは特に高齢化の進展に悪影響を及ぼしているそうです。また日本や韓国と同様に短期間に急激な経済成長を中国が遂げたこともあります。2010年に中国はGDPで日本を抜いて世界第二位の座に躍り出ています。女性の自己決定権はどうでしょうか?中国共産党一党独裁が行われている国で女性の自己決定権は拡大したのでしょうか?この点については中国共産党の基本テーゼが女性解放を謳っているので認めない訳にはいかないという事情があります。20世紀初頭まで存続した中国王朝国家の清朝では女性はひどく抑圧されていました。その典型が「纏足」でした。女性の足に極端に小さな靴を無理やり履かせて足を小さくするという、とんでもない身体的虐待が横行していました。女性は満足に歩くこともできなくなってしまいます。女性は出歩かないで家にいればよいという差別が罷り通っていたのです。1911年の辛亥革命で清朝が倒れると、その後の中国の覇権を中国国民党と中国共産党が争うことになりますが両党とも、悪質な旧習からの女性解放をスローガンにして国民の支持を得ようとしました。上の図は中国共産党のプロパガンダです。新中国の下で女性が航空機パイロットや船舶の船長に登用されるようになったということを宣伝しています(注1)。
 さて急激な出生数減少に直面した中国政府は、2021年1月31日に「三人っ子政策」なる3人目の出産を奨励する政策を打ち出しました。しかし自己決定権を拡大した中国国民はそんな政策には従いません。あるいは経済成長が減速し経済的に従いたくても従えないという事情の方が大きいかもしれません。翌年の2022年も翌々年の2023年も出生数は減り続けています。もはや中国国民は政府の恣意的な人口政策(中国では「計画生育」と呼ばれています)に従う気はないようです。2024年1月に清華大学の李稲葵教授は「我々の人口政策は自由に戻るべきだ」と主張し人々の注目と支持を集めているそうです(注2)。
 こうした事態に業を煮やしたのか、2021年12月に中国メディア「中国報道網」で「すべての共産党員は結婚をしなかったり、子どもを作らなかったりしてはならない」、「3人っ子政策の実現はすべての共産党員の責任だ」、「共産党員は何らかの理由で結婚をしなかったり、子どもを作らなかったりしてはならない。たとえ年齢や健康上の理由で子どもを作れなくても、周囲に3人の子作りをするよう指導することができる」と主張する記事が掲載されたとのことです(注3)。確かに中国共産党では下級(一般党員)は上級(指導部)の決定に従うという民主集中制が徹底していますから、理論上は「3人っ子政策」を党員に強制することができます。中国共産党は1億人近い党員党友を擁していますから多少は効果があるかもしれませんが、ネット上では反発のコメントが相次ぎ、その後削除されたそうです。こういう具合なので中国共産党の権力をもってしても少子高齢化・人口減少を食い止めることは難しそうです。
(注1)https://sinology-initiative.com/society-and-culture/773/2/
(注2)https://wisdom.nec.com/ja/series/tanaka/2024052001/index.html#anc-02
(注3)https://www.youtube.com/watch?v=BOZqcG2SKfc

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