(昨日の続きです)
日本国民1億2千万人分の社会システムを構成するインフラの一つである本州四国連絡橋(以下、本四架橋と略します)について、ブログ主には、ある思い出があります。本四架橋は、皆様もご存じのように「神戸・鳴門ルート(1998年開通)」、「児島・坂出ルート(1988年開通)」、「尾道・今治ルート(1999年開通)」の3ルートが建設されました(上の図をご参照ください 注1)。しかし建設工事中から3ルートは多すぎるのではないかという批判がありました。四国4県の人口減少・高齢化が著しいことから、この批判はもっともに思えました。実際に四国4県の人口は、本四架橋が完成する以前の1985年(昭和60年)をピークに、現在まで減少を続けています。
さてブログ主は1990年代のある時、朝日新聞に掲載された、あるコラムに注目しました。そのコラムには、中国地方と四国地方の人口減少・高齢化により、本四架橋は遠くない将来に維持できなくなるだろう。その場合は採算の取れそうな1ルートだけを残して、他の2ルートは放置するしかないという趣旨が記述されていました。これにはブログ主も暴論だなと思いました。放置された橋梁は潮風や風雨によって劣化していきます。橋梁を構成する鋼索、鋼材などが腐食し落下するかもしれません。本四架橋が位置する瀬戸内海は、それこそ上古の昔から国内でも有数の内外航路です。環境省の発表によりますと、瀬戸内海の令和2年の1日平均の通航船舶隻数は615隻(注.入り口の明石海峡の隻数)にもなるそうです(注2)。人口減少により将来は減るかもしれませんが0にはならないでしょう。落下した鋼材や鋼索が通航中の船舶に衝突したら一大事です。人的な被害が出るリスクもありえます。こうしたリスクを考えますと、本四架橋は維持するか完全に撤去するかの2者択一で、放置などありえないでしょう。税金による補助金で維持するにしても人口が減ることは納税者も減るということで税収も細っていきます。いずれ補助金も支給できなくなる可能性があります。撤去するにしても、地元の利害が複雑に絡み合って実行は困難かもしれません。こうした問題は本四架橋に限りません。全国新幹線網、高速道路網、空港、港湾などの大規模インフラに共通するリスクだと思います。2016年3月に開業した北海道新幹線は、開業当初から2023年度まで毎年50億円から100億円規模の赤字を出し続けています。そして北海道の人口は1997年をピークに毎年減少しています(注3)・・・さて、どうしたらいいでしょうか?こうしたことを考えますと、わが政府が、移民(という言葉は極力使わないのですが)とインバウンドの拡大に血眼になっている理由が実によく理解できます。
(注1)http://ktymtskz.my.coocan.jp/project/honsi2.htm
(注2)https://www.env.go.jp/water/heisa/heisa_net/setouchiNet/seto/g2/g2cat02/kaiun/index.html
(注3)https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/csr/jinkou/senryaku/jinkouvisionopendata.html