博多住吉通信(旧六本松通信)

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アタオコロイノナ

2011年11月02日 | 読書・映画
 作家の北杜夫さんが、84歳で10月24日に永眠されました。初めて「どくとるマンボウ昆虫記」を読んだのが中学1年の頃で、その後「どくとるマンボウ青春記」、「どくとるマンボウ航海記」などを立て続けに読んだ記憶があります。ユーモア溢れる文体と作者が出会い描く多彩な自然や異邦の風物、過去の日本の姿などが、大いに中学生だった私の知的興味を刺激しました。一方、芥川賞を受賞した「夜と霧の隅で」などのように普通の人間が正気を保つことが難しいような絶望的状況の中で苦闘する人間の姿を描く作品も数多く、いろいろな角度から人間と社会を見つめることを私に教えて下さった作家でした。ご冥福をお祈りします。
 北さんの訃報を聞いて最初に思い出した言葉があります。アタオコロイノナという何とも不思議な名前です。「どくとるマンボウ昆虫記」と「どくとるマンボウ航海記」に出てくる名前です。何しろ40年近く前に読んだ作品でしたから何の名前か正確なことは直ぐには思い出せませんでした。確か1958年に作者が船医として乗船した水産庁調査船がインド洋のマダガスカル島に寄航した際に仕入れた地元の神話に出てくる神ということでした。ふとグーグルで検索してみると何とウィキペディアで独立した項目になっていて詳細な説明がありました。それによると「アタオコロイノナ(Ataokoloinona (at'-u-awk-oh-loi-noh'-nu))とは、マダガスカル島の南西部に伝えられる、とされる神話の神である。名前は現地の言葉で「なんだか変てこりんな物」を意味する」とのことでした。
 ソースと詳細な説明はこちら ⇒http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%82%AA%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%8A

 面白いことに、アタオコロイノナの言及が北さんの著書にしか出てこないので、この名前の神様は作者の創作ではないかという説まであったそうです。しかしその名前に言及した海外の文献が見つかったという指摘があり、北さんの創作という訳でもないようです。
 創作ではという説が出てきた背景には、この神様の名前の語感に北さん得意のユーモアほら話のテイストが感じられたこともあったのでしょう。ただマダガスカル現地の人にこの神様の名前を聞いても誰も知っている人がいなかったという事実もあるそうです。
ソースはこちら ⇒ http://www.geocities.co.jp/collegeLife-Labo/6084/Madagascar.htm
 とはいうもののマダガスカル島は世界で4番目に大きな島で、言語、民族、文化、自然環境等々が非常に多彩で広大な地域ですから、上記のサイトの現地の方がたまたま知らなかっただけかもしれません。
 この神様の名前が40年近い歳月を経て、北さんの訃報で思い出されるというのも何か不思議な気持ちになります。

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