博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

世襲とは 2

2009年04月29日 | 時事
(昨日の続き)
 他の社会主義国の事例となりますと先ず見ておかなければならないのは旧ソ連と中国でしょう。そして何より金日成が北朝鮮の指導者となるにあたって後見人となった旧ソ連のスターリンと中国の毛沢東の場合はどうだったでしょうか。
 毛沢東の場合、長男の毛岸英は朝鮮戦争に中国が介入して派遣された中国人民義勇軍(志願軍)の一員として派遣され戦死しています。ちなみに母親の楊開慧は戦前の非合法闘争下で敵の国民党に逮捕され転向すれば助命するとの勧告を拒否して銃殺されています。何とも壮絶な革命一家だ。少なくとも息子に権力を世襲させようという気はかけらも見えません。
 スターリンはというとこれもすごい。第二次世界大戦の独ソ戦で長男のヤーコフがドイツ軍の捕虜になったとき、ヤーコフの解放を条件にした捕虜交換を提示してきたドイツに対して、スターリンは断固「ナチスに寝返った息子などいない」と返答し、人質交換には一切応じなかったそうです。結局長男はドイツ軍に殺されてしまいます。こちらも息子に権力を世襲させようという気はかけらも無い。

 北朝鮮の金父子は、毛沢東とスターリンの2人がいなければこの世に存在すらしていなかっただろうということを考えるとこれは驚くべきことです。なぜ金日成は息子に権力を世襲させようと考えたのでしょう。
 戦前・戦後の北朝鮮の労働党が党内闘争に明け暮れて、誰かがカリスマとなって指導力を発揮しなければ国は統一できなかったという考え方があって、死後もカリスマを維持して国家の統一を図るためという理由が考えられますが、そういう事情は中国もソ連も同じだったはずです。少なくとも他の社会主義国で権力が世襲された事例はありませんでした(注)。

 厳密に言うと金正日は北朝鮮の国家主席にはなっていません。朝鮮労働党・総書記、国防委員長というのが正式な役職です。父の金日成が就いていた国家主席という役職は現在はなくなっているようです。また北朝鮮の公式見解でも金正日の地位は世襲ではなく、金日成の最も忠実な後継者が金正日だったので今の地位に就いているという説明の仕方をしています。
 まあ、そんなことを言っても誰も信じませんが、そういう説明の仕方をしないと国民も納得しなかったろうという事実は読み取れます。また金日成が実の息子しか忠実な後継者として育成できなかったという事実を暴露しているわけです。その事実は現在の北朝鮮の体制の弱さの表明でもあります。それは現在の北朝鮮指導層もよく分かっているのでしょう。

 そう考えると日本の政治家が後継者の地位を実の子供しか有権者に推薦できないということはやっぱり問題かもしれません。

(注)ずっと後の事例ですが、1989年に処刑されたルーマニアのチャウシェスク大統領は次男を後継者にしようとしていたという説があります。本当にそうなったかどうかは分かりませんが。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。