日月 *HIZUKI* 日記

 天然石、手作りアクセサリーのご紹介と店主の日記

本日記

2009-01-08 | 本日記
ひとかげ (幻冬舎文庫)
よしもと ばなな
幻冬舎

このアイテムの詳細を見る


2009年の年初めに読んだ本は、よしもとばななさんの「ひとかげ」です。

これは、ばななさん自身の過去の作品「とかげ」をリメイクしたものです。
「とかげ」は、出版された15年前に読んだのですが、私の中の好きな作品には入りませんでした。
過去のつらい体験から心に傷を抱えた主人公と「とかげ」と呼ばれる彼女の再生の物語が、当時の私には重すぎて、苦しくさえ感じました。
それでも、また読んでみようと思ったのは、同い年のばななさんが、年齢を重ねて、何故リメイクしようと思ったのか?
その訳を知りたくなったからです。

まず、ふたりの仕事に対する思いが以前より丁寧に描かれているなと思いました。
人を癒す仕事を選び、辛い思いを抱える人達と関わり、自分の過去と向き合う主人公。
一方の「とかげ」は、心を閉ざして、自分を攻めながら人を癒し、自分自身をすり減らしていきます。
そんな「とかげ」の仕事ぶりを、主人公は認めながらも、切なく不安に思います。

お互いに何故こんなに重い仕事をしているのか?
その答えは、自分が重いから。
そして、人間が好きだから。

ふたりが惹かれ合うのは、お互いの傷を感じているからですね。
私も以前にはわからなかった「ふたりにしかわかない苦しさ」と「ふたりだからわかる幸せ」を感じることが出来ました。

重さより希望を感じたのは、書き手のばななさんの変化なのか?読み手の私の変化なのか?
その両方なのかもしれません。

序文には、「新しい彼らを、もっと内面をさらけだした彼らを好きになってくれる人がいたら、それがいちばんの喜びです」と書かれていました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする