絵画指導 菅野公夫のブログ

大好きな絵とともに生きてます

テーマと構図2

2010-02-27 | 絵画指導
絵は、テーマと構図が重要だとお話しました。

私は、美術部の生徒を60名以上かかえていましたから、大変なのは、全員が違うテーマを探すということでした。60種類のテーマを見つけなければなりません。
もちろん、生徒が自分で探します。過去の先輩たちがどのような物を描いたかということが、全て記録アルバムに残してあるので、それを見ながら参考にするのです。

しかし、それを見ながら思うことは、これらと同じであってはならないということでもありました。だから、大変です。学校近辺は、過去の先輩たちがほとんど描き尽くしてしまいましたから、どこを描いても似てしまいます。そのため、場所探しということで、保護者の協力を得て、みんなが描いてない場所を探し回りました。

数々のエピソードがありますが、寄居の男子生徒が学校から自宅まで歩きながら探し回ったという話があります。約15キロの道でした。また、これも男子生徒でしたが、一日5枚と決めて、スケッチをして周り、それを50日続けました。そのため250枚の下絵を作りました。その中から、私が選んでやって、候補を絞り込んだら、そのテーマでまた構図の研究を30枚くらいしました。

高校生のパワーと根性で、そのようなテーマ探しと構図の研究をしたのです。

その生徒は、最終的には牛をテーマにしました。学校の近くに牛を飼っている家があって、庭に放し飼いをしているので、柵越しの牛を数頭描きました。

私は、彼のデッサン力から見て、牛を描くのは難しいと思ったので、やめたほうがいいよと言ったのですが、どうしても描いてみたいというので、やらせたら、30枚描いているうちに上手くなってしまいました。結局、県展に入選しました。

以前もお話しましたが、埼玉県の県展はレベルが高いので、東京の美術館でやる全国の公募展よりも高いとさえいわれます。以前、水彩連盟展に出品したら、埼玉県展に入選しているなら、入選しますよと言われました。確かに、その通りその年は11名出して、10名が入選しました。翌年は10名出して全員入選しました。

なぜ、高校生がそのようなレベルになったのかと不思議に思われることが多いですが、私はこのテーマと構図の研究をしっかりやるからだと思います。ちょっと言い難いですが、ほとんど私のレベルの絵を生徒が描いてしまうのです。それは、私が良いと言うまで追究させるからでしょうね。

それが、秘訣ですね。

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絵の指導の面白さは、私が考えたとおりにならないことです。しかし、場合によると私が考えたこととは違った良さを見せてくれることがあります。それは、教えていて楽しい部分です。
また、私がその子に要求できることを100点とすると、120点の答えをもってくることもあります。それも、面白いです。
 

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ブレーキ

2010-02-27 | いろいろ
いま、トヨタのリコール問題が大きく世間を騒がせているが、アクセルとブレーキの問題らしい。

私は、教師をしていたので、生徒指導でいろいろな場面に出くわした。
私の担任しているクラスの生徒が万引きをしてしまった時のことである。

その時の教頭先生が先日亡くなった小林校長であった。

小林先生は、その生徒にこう話した。

「Tちゃん、いい車というのはどういう車だと思うかな?」と言った。

Tちゃんは、答えられず、もじもじしていた。

すると、小林先生は、「色の素敵な車かな?流行の形のいい車かな?それともスピードが出る車かな?」と問いかけた。

それでも、Tちゃんは、やはり下向きかげんに黙っていた。

小林先生は、最後にこう言った。「色や、形や、クッションなどもいい方が良いし、スピードも出る方が良いのは確かだけど、一番大事なのは、ブレーキがよくきくことなんだよ」と。

「実は人間も同じでね、いざという時にブレーキがかけられるかどうか、そこが大切なんだな。万引きは悪いことだとわかっているよね。だけど、してしまうことがある。人間は弱いからね。そのときに、心にブレーキがかかるかどうかなんだよ。」と言いました。

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教員は、すぐにこういういい話ができません。余程勉強していて、いろいろな本を読んだりしていないと、良いタイミングで、こんな良い話はできないのです。新米だった私は、このような場面で先輩の先生からまるで自分が言われているような気持ちで、話を聞かせてもらい、勉強させていただきました。

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小林先生は、私にとっては、まるでお兄さんのような存在で、本当に親しくよく面倒をみていただいたので、先日亡くなってしまい、本当に残念です。思いだすことは山ほどあるので、時々、小林先生の思い出を紹介していきたいと思います。

トヨタのブレーキの問題から、心にブレーキという話をしてくれた小林先生の思い出を書いてみました。

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