めぞん・ど・とぷ

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ペンギンの憂鬱

2007年04月01日 | culture
映画の『ハッピーフィート』を観てからペンギンものにはまっています。

アンドレイ・クルコフの『ペンギンの憂鬱』を読みました。

どんな話?
憂鬱症のペンギンミーシャと暮らす売れない小説家のお話。
といったら、身も蓋も無いような気がするけれど、
ある意味で現在のウクライナという国のかかえる状況と
そこでロシア語で小説を書く作家の覚悟とでもいうものを念頭に
読み進めると、単に心臓を病んだ哀しい小動物の話とはいえないような…

ミーシャの孤独な運命は『ハッピーフィート』のマンブルよりも
ずっとずっと深く過酷なように思われます。
そういう意味で、作品の解説自体、身も蓋も無いように思えてなりません

今朝の新聞でこんな見出しの小さな記事を見つけました。
――「ドル」の言葉控えて
――閣僚・公務員にロシア大統領令
ロシアのプーチン大統領が閣僚や公務員に公の場では「ドル」という
言葉は控えるように、という大統領令を発した、という記事です。
自国通貨ルーブルの信認を高める狙いだとか。
資源外交で国勢を高めるプーチズムの勢いを感じさせるニュースです。

こうした政治状況を背景に、改めて『ペンギンの憂鬱』に立ち返ってみますと、
ロシアと米国の覇権争いの狭間で揺れ動く小国ウクライナの運命と
ペンギンの運命が二重写しに映るような作者の意図を感じます。そして、
同じ作家の書いた『大統領の最後の恋』を併せて読むと
ペンギンの哀しみがさらに哀切をもって迫ってきます

一部の書評家が村上春樹のコピーのごとく評していますが、同意しかねます。
確かに、翻訳文のタッチは村上春樹風ですが、それは翻訳者が意図しただけのこと。
過酷な政治的現実と対峙しているクルコフのユーモアはハルキをしのいでいる
といってもいいかも。もっとも、私も村上春樹は好きでよく読みますが

現実の政治的背景を抜きにして、読み物としても十分楽しめます。
とにかく、ペンギンのしぐさを描写した場面がとても可愛く、いとおしい。
また、サスペンス小説の趣もあり、奥の深い小説です

 これはわが家のペンギン


とぷ

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