映画と安吾の「ニンゲンが持つほのかな哀しさ」

[Men in Black]
猫の首に下げられた小さな鈴の中に銀河系宇宙が現れるところだけ
キャプチャしながら何回も、彼女と同じに「Wow！」と叫んだ。



製作スピルバーグ氏
潜在意識の具現化、願望夢想の映像化、ただの冒険活劇ではない深謀遠慮、
彼は映画の神様の類だと信じているが、100年後の評価はどうなんだろう？
歴史には世紀(100年)という長いサイクルを経て得心することが多くある。

[鉄道員（ぽっぽや）]
主演の高倉健は離婚した元妻「故・江利チエミ」の命日に
毎年欠かさずお線香を送っているという。

　♪好きでお酒を
　　 のんじゃいないわ
　　 家にひとり帰る時が
　　 こわいわたしよ
　　 あのドアを開けてみたって
　　 あなたはいない
　　 暗い闇が私を待ってるだけよ
　　 また長い夜をどうして
　　 すごしましょう
　　 愛の香りも　
　　 消えたあの部屋

独りぼっちで死んでいった彼女の唄が耳もとで聞えてくるようだ。

[モンパルナスの灯]
３６歳で夭逝したイタリア生れの天才画家「モジリアニ1884～1920」の波乱の生涯を
描いた映画。生前は無名な画家だった彼の、貧困と酒と麻薬に溺れる苦悩に満ちた
日々が圧倒的存在感で迫ってくる。愛人と織りなす人間模様がラストシーンの非情な
幕切れとなり強く印象に残る。これはもはや抒情詩だ。

[フェノミナン]
サタデーナイトフィーバーのあの軽薄さはどこへいったの、と思うほど性格俳優の色を
濃くしたジョン・トラボルタがよかったです。脳腫瘍が引き起こした超能力に人生を翻弄
されながら、最後は恋人に看取られて穏やかに逝く。ラストシーンが早朝のテラスで彼が
作った椅子に座り、悄然と泣く恋人。

[シェーン]
ラストシーンの「シェーン、カム・バック」と叫ぶジョーイ少年の切ない声が未だに
耳に残っている。ヴィクトリーヤングのテーマ曲「遥かなる山の呼び声」とともに。
数ある西部劇の中で何回も繰り返し観た映画。ジョン・フォード監督の「駅馬車」
「荒野の決闘」などは半世紀以上経つ今も、ちっとも色褪せない不朽の名作。

[明日に向かって撃て]
テーマ曲のＢ・Ｊトマス「雨にぬれても」が大ヒットした。
泥棒二人組を主演したポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが、なんとも
いえずカッコ良かった。追ってに追われた二人は、最後に一斉射撃に身を投げ
蜂の巣になって死ぬ。それは悲壮感よりも収束感ゆえの整合で、ため息。

[大脱走]
ミッチ・ミラー合唱団の「大脱走のマーチ」で一躍有名になったテーマ曲。
この映画を思い出す度にハイテンポな歯切れの良いBGMが頭の中を流れる。
ドイツの第三捕虜収容所に収容されたヒルツ（スティーヴ・マックイーン）ら
２５０人の捕虜は、森へ抜けるトンネルを掘り集団脱走に成功するが・・・。

[シックス・センス]
「僕の秘密を聞いてくれる？....僕は死んだ人が見えるんだ。」
子役はいつもAngel。薔薇色の頬。
あわせ鏡のような物語。

「首をとってきておくれよ･･･」
TVのチャンネルを回したとたん聞き覚えのあるセリフが耳にとびこんできた。
あ、安吾の桜だ。
そう、坂口安吾は脳味噌のヒダにしみこんでいる。
彼の云う「ニンゲンが持つほのかな哀しさ」も一緒にな。