「巨大魚イトウは自分自身」
そう言い放ってはばからない小説家・開高健のドキュメント番組を見た。
以前にCS277旅チャンネルで放映された「モンゴル大紀行・巨大魚を追う」
(たしか、このようなタイトルだったと思う)
モンゴル平原をひた走る列車の窓から過ぎ去る風景を見ながら、
彼は、
「草、ひたすら草。この草でもってヨーローッパまで行ってしまったんですなぁ。
たいしたもんですなあ・・・」
あの少し裏返り気味の甲高い声が懐かしい。
在りし日の作家は言葉そのものが小説家で、ふふん、と微笑みを誘う。
「鈎り師は何度サカナに裏切られても、釣り場が変われば、またぞろと出かける。
なにか男女関係に似ているな」
「足はよろよろ、手はぶるぶる」
サカナを釣った瞬間に“癒すことのできない心の傷”が一瞬癒されるという氏は、
サカナが釣れない日は重荷を抱えたまま帰路につき、また再び、立ち向かう。
イトウの尾びれは朱色、獰猛にて優雅。
10kg 97cm、釣り上げた氏の腰から力が抜ける。
連続してかかった2匹目のイトウの魚体をさすりながら、
「蒙古のモノは蒙古に、ジンギスカンのモノはジンギスカンへ」
そう云いながら川に戻した。
確かに、河は眠らない・・・ようだ。
大気の薄いモンゴル高原に、開高健の荒い息遣いがひびく。
司馬遼太郎も同じ景色を観た。そして逝った。
Wikipedia 引用 イトウ(日本国北海道札幌市豊平川さけ科学館)
馬はモンゴルの誇り、
馬は草原の風の生まれ変わり。
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