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タイ・ユング旅行 ⑰文明の発達史観(3)  -’86 夏ー

2020-12-19 04:27:12 | ハノイ
 「そんな基盤の決定的違いを知らずに文化がどうだ、心がどうだとは無神経なものだ。」途上国の人々に日本の現代の病理を理解しろという議論の立て方がおかしいのだ。日本は日本の「近代化」を極め、今はその近代化がもたらす負の部分にも悩まされている。そして部分修正しながら折り返しの再建をねらう国と、これから物質文明の恩恵にあずからんとする途上の国とそこで相互の「理解」というのは何を指すのか?彼らには我々の立場には実感が持てないのだ。アジア理解を口にするとき我々は我々だけの尺度で相互理解でなく相互誤解をしているのだ。「理解」し合うということは結局はどちらかの都合で行っていることなのだ。それでも融和的心情で「理解」を唱えるのは幻想なのだ。絶対ふれてはいけないところをかかえながらしかお互いに付き合ってはいいけないのではと思う。その点からすれば「理解」というより「了解」という言葉の方が合っているようだが相手の主体性を尊重した言葉はないのである。このことを「了解」しておかないとアジアにおける相互の付き合いなんては到底市民権を得ることはできないであろう。
 チェナロン氏と行動を共にして分かったことであるが、彼は自分の身分証明書をホテルで提示すれば高級ホテルであっても料金は半額になるのである。まあ、私も彼の借りたホテルの部屋に泊まることで恩恵は受けさせていただいたのだが。彼が教育関係の公務員であるという特権のようである。国家に有用な人物はかなりの特権を持っているようである。発展に向かって若い国だからだろうか。さて、ところがである、意外にも意外、彼の下宿へ行くと下が商店でその三階の6畳ほどの一間の部屋である。真っ暗と言っていい。もちろんエアコンもない。スワンパーの雑踏市場の真ん中で中国人経営の古アパートである。屋台街の露店の煙がまともに窓から入ってくる。彼が私に「ここで泊まっていかないか。」と言ってくれたがマットレス1枚では気の毒なので辞退した。
 我々がバンコクの路地裏を歩いていると中国人経営の雑貨屋、乾物屋、漢方薬局などを目にする。そしてその入り口には老主人が上半身裸で安楽椅子などに座って新聞を読んでいる光景を見る。ああした建物の2階、3階には意外なタイの素顔があるのではと一度上がってみたい気がしていた。やっとチャナロン氏の下宿を垣間見させてもらことによって実現したのだ。家主はマンダリン出身の中国人で一階は仕立て屋兼洋服屋も経営している。奥には共同の水場があってその横は路地に続く住人の出入り口である。2階は老婆が借りて住んでいる。昼間は自分の部屋の外の踊り場で古雑誌の紙をはがして袋にする内職をしていtる。そして3階が彼の下宿である。彼の部屋は机、ラジカセ、白黒テレビ、簡易箪笥、それにマットレスが敷きっぱなしになっている。足の踏み場もないと言っていい。彼のプライバシーの侵害にもなるのでこれ以上の取材,描写は差し控えるが若い男の大学生の乱れた部屋だと思っていただければよい。ランゲージセンターの主任教授であることとこの下宿部屋とのコントラストは気にならないことはないが、彼の合理的な考えや経済観の表出なのかもしれない。



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