随分前おきが長くなり誠に恐縮ですが前おき の最後として地理的、地形的な面に少し触 れておこうと思います。
前章にあげた地図からもわかりますように イサーンはタイ全土の約1.3 に当る約一七 万㎞を占めています。人口も全人口約四三〇 〇万(一九七六)の約三五パーセントくらいを イサーンで占めています。
北は東側にメコン川が走り、西は北から南 にペッチャブーン山脈、南はドンパヤージェ 山脈がそれぞれそびえ、中央平野とイサー ンとの間の交通輸送を遮断しているかのよう です。この高原は「コラート高原」と呼ばれ 平均標高は一二〇~二〇〇mであります。 西 側のチャヤプーム県の中心都市は一八五mで あるのに対し、南側のナコンラチャシマー市 は一八一m、ラオス側のナコーンパノム市は 一四四m、東の端のウボンラーチャタニー市 は一二三m、 でありこの高台は西から東にゆ るやかに傾斜しています。 この高原を囲む山脈は頭が切り取られたような、 もしくは草刈 刀のような地形をしており、どの山も標高 はあまりかわりません。 先ほど述べたペッチ ブーン山脈は平均四〇〇~五〇〇m、ドン パヤージェン山脈は平均五〇〇~七〇〇mで あります。
私は朝の白みはじめる頃この高原を走った のですが沿道が妙に乾ききった砂ぼこりの 舞う光景が見えました。 地質学のことはよくわ かりませんがこれは熱帯特有のラテライト だということです。 コンケーンの町に入っ た時に朝の太陽が山並から顔を出したのです が土は本当に赤味を帯びていました。夕方に はピンクに見えます。 ちょうどテニスコート のアンツーカーと同じです。 ラテライト性土壌とは 「乾季の気候によって土壌の溶脱作用 が衰え地下水が上昇し表土の蒸発が盛んとな ってサバンナ土壌と風化している地域」で「気候 的要因による風化に加えて基盤となる母岩 自体が赤色砂岩であり、一部沖積層の堆積から成り立っている。」(名古屋女子大タイ学術 調査団一九七五より) とのことですが私には むずかしいことです。 もっとわかりやすくい えば「土地は衰弱し植性にあわない」という ことでしょう。 農作物の状況もおしはかられ ましょう。 もはや人力は自然の衰えにより自 然とたたかえなくなった、あるいは自然との 協調をおしすすめることができなくなったと いうことでしょうか。
面白い記事が科学朝日 (一九八〇、12) に載っています。 海抜五〇〇m以下の熱帯林 一〇〇平方mにカエルとトカゲが平均どのく らい生息しているかという調査データです。 パナマではカエルが二九八尾、トカゲが 一五、四尾に対してタイの常緑林地帯ではカ エル〇、一二尾、トカゲ一、〇三尾、落葉林 地帯ではカエル、二七尾、トカゲ一、二 一尾といった比率です。 コスタリカではカエ ル一一、 六、 トカゲ 三九といった数字で すが、このデータを通してタイでいかに両生 類、爬虫類が生息しにくいかということを述 べています。 熱帯林とは数年おきに実がなり 地上に落ち、この落果に群がる節足動物をエ サにしてカエルやトカゲが植するらしいの ですが、要するにタイの熱帯林フタバガキ科の高木はなべての実がなんらかの理由でならない年の方が多いということを示しているようです。ですからミミズも少なければカエルもトカゲも他の大陸とくらべて極少だということです。ミミズのいないところは人の暮らしも貧しい、ということになるのでしょう。
このイサーンの主たる経済はもち米を中心 とした水田稲作であります。 バンコックから 同行のガイド パイラット氏はこのもち米が なかなか食べられず胃痛を起したりしてまし たが私には日本の祭りのオコワを食べている ような気分でむしろ快適な気分になりまし た。その他の農産物はジュート、 ケナフ、玉 ねぎ、こしょう、タバコ、コットン、ピーナ ッツ、砂糖きび、タピオカ、カポック、ココ ナッツ、などです。 これらの農業生産高はク イ全土の二五三〇%を占めているようで す。
年平均気温は二八七二〇一九七二)で ありますが三月から五月が最も高く最高気温 は三九度くらいになります。 低いのは十一月 から一月で平均気温は二二にさがります。 気象に関しては最も問題となるのが降雨量な のです。 農民の期待する雨季に十分な雨が降 らなかったり予想以上の大雨が降ると彼等の農作物は致命的な打撃を受けるのです。 年間 でも一〇〇〇をやっと越す程度であり、 乾季の十一月から翌年四月までを見れば月二 ◯ということもあるのです。 五月の雨季で も一九七二年をみれば一七、五皿という なのです。 こんな悪条件ですから年間通し て農作物を作ろうと思っても人力ではどうし ようもありません。 こうした水利の問題はあとでケーススタディの中で詳しくふれていて うと思います。
このイサーンの主たる経済はもち米を中心 とした水田稲作であります。 バンコックから 同行のガイド パイラット氏はこのもち米が なかなか食べられず胃痛を起したりしてまし たが私には日本の祭りのオコワを食べている ような気分でむしろ快適な気分になりまし た。その他の農産物はジュート、 ケナフ、玉 ねぎ、こしょう、タバコ、コットン、ピーナ ッツ、砂糖きび、タピオカ、カポック、ココ ナッツ、などです。 これらの農業生産高はク イ全土の二五三〇%を占めているようで す。
年平均気温は二八七二〇一九七二)で ありますが三月から五月が最も高く最高気温 は三九度くらいになります。 低いのは十一月 から一月で平均気温は二二にさがります。 気象に関しては最も問題となるのが降雨量な のです。 農民の期待する雨季に十分な雨が降 らなかったり予想以上の大雨が降ると彼等の農作物は致命的な打撃を受けるのです。 年間 でも一〇〇〇をやっと越す程度であり、 乾季の十一月から翌年四月までを見れば月二 ◯ということもあるのです。 五月の雨季で も一九七二年をみれば一七、五皿という なのです。 こんな悪条件ですから年間通し て農作物を作ろうと思っても人力ではどうし ようもありません。 こうした水利の問題はあとでケーススタディの中で詳しくふれていて うと思います。
東北部には多くの支流をもつチー川、 ムー 川のような大河川が流れるにもかかわらず 雨季には洪水、乾季には水不足といった問題 も発生し十分な収穫をあげることができない 地帯なのです。 降雨量の問題、地質学的な問 題など自然的障害に加え人為的な障害もある ようです。 それは無秩序な森林の伐採が広範に年々進行していること。それにより洪水 を引き起し、水を一挙に不足させる促進剤を つくっているということです。人工衛星から の写真によればこのイサーンの森林面積は10 %くらいのものだそうです。 そういえば 「田舎の先生」の映画の中で村の有力者が不 法伐採をしているシーンを大々的にとりあげ ていたのを思い出しました。
雨、水、土、木、虫、人、 などエコロジーのバランスが相当深刻にくずれてしまったと ころのようです。 こうした自然的条件の障害 をイサーンに生きとし生ける人々は実際には どのように考え、どのように暮しているの が、いよいよ私の体験上の見聞からミクロに ながめていきたいと思います。 (つづく) (注、資料は『東北タイコンケン地方農民の 生活』名古屋女子大学タイ国学術調査団よ り)
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