すごい人がいました。京都大学理学部動物学教室の森主一教授(故人)です。遺伝学の実験として1954年から50年以上にわたってショウジョウバエを真っ暗な暗室で育てたのです。この間1400世代になるそうです。なんという気の長さ、志の偉大さには驚かされます。ショウジョウバエは匂いを感じる感覚毛が10%長くなり、嗅覚が発達しました。そしてフェロモンの違いによって相手を察知し繁殖します。面白いことに通常のショウジョウバエとは交尾しなくなっています。光には敏感に反応します。DNAを調べたところ嗅覚やフェロモンに関する遺伝子などに40万箇所の変異が見られたそうです。暗闇に見事に適応し、通常のショウジョウバエと交尾しないのですから、新種のショウジョウバエに進化したと言えます。この進化は、ショウジョウバエの暗闇に強い個体が残ったと考えるより、暗闇に遺伝子が対応したと考える方が当を得ていると思います。私は、個体およびそれを形成する細胞の記憶、経験、環境への対応が遺伝し、その遺伝が何世代にも亘って重なると、強められて強く発現する遺伝子へと変わっていくと考えています。この実験は私の考え方をサポートしていると思います。
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