朝日新聞デジタル2016年01月01日:長野県須坂市の酒蔵・ワイナリー 飲み歩きルポ http://t.asahi.com/j2wc 「遠藤酒造場」と「楠ワイナリー」。三木…元旦号の掲載に感謝。酒蔵とワイナリーの両方の同時掲載に感謝。#須坂 #遠藤酒造場 #楠ワイナリー
日本人にとってなじみが深い日本酒や国産のワインだが、外国人の口には合うのだろうか……。そんな疑問を思い立ち、昨年12月上旬、須坂市の日本酒蔵とワイナリーを外国人と訪れる飲み歩きの旅に出かけてみた――。
1軒目は集合場所の「ゲストハウス蔵」の目の前にある1864年創業の「遠藤酒造場」。6代目の遠藤秀三郎社長(54)が経営する酒蔵では、常時約30種類の日本酒を試飲でき、年間約2万人の客が訪れる。
お酒は「毎日飲むほど大好き」というカナダ出身のピエール・エイドリアンさん(28)は須坂市内で3年前から英語教師を務める。同酒造場の「蔵開き」に参加したことがあるという彼が「これがお気に入りなんだ」と手にしたのは、熟成させた濃い味が特徴の「渓流朝しぼり出品貯蔵酒」。「アルコールは度数が強いものがいい。カナダでもウイスキーやウォッカを飲んでるからね」と一気に飲み干す。彼に勧められて飲んでみたが、とにかく辛い……。24歳の私にはアルコールが強すぎた。2杯目は甘いにごり酒を頂いた。
ゲストハウスに宿泊していたオーストラリア出身のダナ・リーさん(26)。母国で飲む日本の酒と言えば「梅酒」だったという。ピエールさんと同じ酒を一口飲むと「日本酒ってあまりなじみがないけど、飲みやすいのね」と飲み干し、2杯目に手を伸ばすほど気に入った様子。2人は5種類ほど試飲し「しぼりたて生原酒渓流」を購入。ピエールさんは「飲み比べてお気に入りが変わった」とほんのり赤らんだ顔で話した。
続いて10分弱タクシーに乗って向かったのは「楠ワイナリー」。楠茂幸社長(57)が2004年に畑を借りてブドウを栽培するところからスタートし、11年にワイナリーを設立した。常時5種類前後の赤、白ワインを試飲できる。
ここからはイギリス出身のマイケル・ストックスさん(24)も合流した。小さい頃から食卓には必ずワインがあったと話す3人。「自分の親を見ているうちに自然とワインの楽しみ方が身についた」とマイケルさんが「ワインの作法」を教えてくれた。試飲の際は香りを楽しみ、口に含んで舌で味を堪能し、飲み込むときはのどごしを感じる――。基本的な作法さえ知らなかった私にとってすべてが新鮮だった。
次々とワインを飲み進めていく3人がとりわけ驚いたのが「マスカットベイリーA」を口にしたとき。「こんなにフルーティーで味が強いワインは初めて飲んだよ」。3人とも気に入った様子で「いいね! おいしい!」を連呼していた。
約4時間の飲み歩き後、ピエールさんに感想を聞くと、「3年間長野にいるけど、今日は新たな良さをたくさん知った。帰国したら長野のお酒をみんなに教えたい」と上機嫌だった。私もほろ酔いの中でメモを取るのが大変だったが、「長野県」のお酒が世界に認められたような気がして自然と笑顔になってしまった。(辻隆徳)