北欧スウェーデン の生き方情報 スウェーデン報

北欧スウェーデンの日常を生活者目線でお伝えします。
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ポールニューマンキャンプ

2008-09-29 14:47:21 | エッセイ
 アメリカの俳優、ポール・ニューマンが27日83歳で亡くなりました。がんだったとか。

 麻薬撲滅に多大な寄付をしたとか、ポール・ニューマンブランドのドレッシングなどのビジネスのこととかニュースでも伝えられています。

 ポール・ニューマンと我が家は、ちょっと縁があるんです。私が、「スティング」「明日に向かって撃て」などの映画のファンというだけでなくてね。

 日本ではあまり知られていないことですが、ポールニューマンは、アシュフォードにThe hole in the wall gang (壁の穴ギャング)という広大なキャンプ場を持っています。そこは、世界中の難病の子供たちがやってきていろいろなアクティビティを体験できる無料のキャンプ場です。基金はポール・ニューマンが出したので、ポール・ニューマンキャンプとも呼ばれています。
 ボランティアで運営されていて、世界中からボランティアが集まります。

 実は、息子は、難病でこのキャンプに招待されそこで1週間過ごしたことがあります。熱気球、ボート、乗馬・・・ありとあらゆるアクティビティが全て無料で、ボランティアの親身なサポートのもとに体験できます。もちろん、医療ボランティアも充実しているので、難病の子供たちでも必要以上の心配はいりません。
 レストランも無料、置いてある飲み物や食べ物すべて無料。この世のものとは思えない、天国のようなキャンプです。
ポール・ニューマンも時々やってきては子供たちと触れ合っていくのだそうですが、ボランティアたちにも「ここでの主役は子どもたち。私に特別な態度をとってはいけない」と徹底しているので、ことさら注目を集めることもなく、溶け込んでいるとか。
 日本から来た小学生の男の子が珍しかったのか、我が家にはポールに肩を組んでもらっている息子の写真があります。ポール・ニューマンファンの母の私には、気絶しそうなその状況ですが、息子は「え、だれ、このおじさん」と思ったとのたまわっていました。

 実際、アメリカの少年たちでも俳優であるポール・ニューマンを知らずに
「おじさんは、何をしている人なの」と聞かれ、
そばにあったドレッシング(ポールニューマンブランドの商品にはポールニューマンの顔のイラストが描かれている)を指差して、
「これが、わたしだよ」
というと
「え、オジサンは行方不明者(アメリカでは行方不明の子供たちの写真をミルクのパックなどに印刷して捜索している)なの」
と言われたというエピソードがあるくらい。

 近年、イタリアのトスカーナにも同じ趣旨のキャンプを作ったようです。ポール・ニューマンキャンプの話を聞いて、私はますますポール・ニューマンのファンになりました。

 世界中に多くの著名人がいて、多くの金持ちがいるけれど、その地位や財産を本当に有効に使っている人がどれだけいるでしょう。
 お金を出すだけなら、たくさんいるかもしれない。でも、システムを作って、自分がなくなった後も運営されるような活動にするには、なみなみならぬ決意と関心と力がいると思います。

 病気の子供たちに何が必要か。高度な医療、より良い病院・・・確かにそういったものも必要でしょう。でも、最も大切なことは、その子供たちが「夢」を持ち続けられることだと思います。

 ポール・ニューマンはそれを知っていた慈善家です。

 息子が病気になってよかったと思うことはそう多くはありません。もちろん、病気になんかならないほうが良いに決まっています。
 ポール・ニューマンキャンプでの体験は、その数少ない「病気になってよかった」体験です。

 聞けば、自分の息子さんを麻薬で亡くしたとか。人が生きるために必要なものが何かを身をもって知っていたのだと思います。

 83歳は、まだまだ若い。とても残念です。
 あったことはないけれど、これからも会うことはないだろうけれど、地球のどこかにポール・ニューマンという良心が存在しているということは、それだけで、わくわくすることだったのに。

 月並みなことばだけど、万感の思いを込めて。
    ご冥福をお祈りいたします。合掌。