隊長が読んだ「本と雑誌」を紹介するシリーズの第62冊目は、『ちあきなおみ 沈黙の理由』をお送りします。
『ちあきなおみ 沈黙の理由』は、今から29年前に、突然表舞台から消えた歌手・女優 ちあきなおみの沈黙の理由と彼女の意外な素顔を、最愛の夫・郷鍈治(ごう えいじ)の死去を挟み8年間、側で支えた元マネージャーが、初めて明かしたノンフィクション作品です。
著者の古賀慎一郎さんは、昭和42年、愛知県名古屋市生まれ。高校卒業後、東京キッドブラザースを経て、俳優・京本政樹の付き人を1年間務めました。平成3年(1991)8月、ちあきなおみさんの個人事務所「セガワ事務所」にマネージャーとして入社し、8年間を過ごしました。2020年8月現在は、郷里へ戻り、サービス業に従事している方です。
尚、ちあきさんの略歴などは、こちらをご覧ください 。
目次;
はじめに
第一章 約束:あの日/郷エイ治さんとの出逢い/セガワ事務所/ちあきなおみさんとの出逢い/芸能人らしくない/『黄昏のビギン』/波紋
第二章 舞台:郷さんと/『夜も一生けんめい。』/稽古場で/衝撃の「生歌声」/真剣勝負/バックステージ
第三章 光陰:『ソングデイズ』打ち上げの席で/『スーパーステージ』/ディナーショー/『矢切の渡し』と『喝采』/苦い喜び/光陰矢の如し
第四章 断崖:コンサート「それぞれの愛」はじまる/入院/病室から/郷さんの言葉/私のリハーサル/ステージでの「ちあきなおみ」/終演後/『愉快にオンステージ』/ちあきさんと乗ったジェットコースター
第五章 終幕:公にされた病名/最後の花道/渦中にあり/希望/「声が出てない!」/服部克久さんと/最後のコンサート/二人きりの船/最後の打ち上げパーティー/「いつも俺の後ろにいろ」/意識不明の中で
第六章 永訣:その日/密葬/「ごめんなさい」/直筆コメント/兄弟間の軋轢と氷解/涙は涸れない/「死ってなんだと思う?」/散歩/高倉健さん
第七章 交錯:ちあきさんとの雑談/美空ひばりさん/不安/四十九日法要/義兄・宍戸錠さんとの確執
第八章 憂愁:「……歌えない」/引退への危機意識/休業状態は続く/『I LOVE YOU』/夕日に染まった思い出
第九章 彷徨:物件探し/「迷ってます」/年末年始と夫婦/ちあきさんのお雑煮と散策/新居/二枚目の郷さん/コレド再オープン/「ちあきなおみ行方不明」/運転免許取得に反対/ちあきさんと/復帰要請/お母様の許へ/「もう歌うことはない」
第十章 十字架:「沈黙」の理由/追憶/歌詞の向こう側/誇り/確実な愛
あとがき
感想:「隊長のブログ」で紹介した歌手の一代記・半生記は、
『テレサ・テンが見た夢』 と、
『沢田研二と阿久悠、その時代』 です。
これら二冊は、著者が文筆を生業(なりわい)としていて、著書が評伝という形を取っています。
一方、本書の著者・古賀慎一郎さんは、文筆業ではなく、ちあきさんの元マネージャーという方です。もちろん、「あとがき」に本人が述べられているように、書き上げるには、新潮社の方に手助けをしてもらっています。
ちあきさんの身近にいたので、決して評伝にはならず、ちあきさん及び郷鍈治さんとの思い出を語ってくれています。
事務所で結婚報告会見を行った二人(1978年)
その中には、世間に知られていなかったことも、数多く含まれています。
例えば、今でこそ多くのアーティストにカバーされ、日本の名曲となっている 『黄昏のビギン』 の曲に関して、この曲は、平成3年(1991)7月に発表されたアルバム『すたんだーと・なんばー』の中からシングルカットされ、同年10月、京成電鉄・スカイライナーのCMに使用され、広く知れ渡るようになったこと。
平成4年(1992)9月に郷さんが亡くなられ、荼毘(だび)に付される時、ちあきさんは柩にしがみつきながら「私も一緒に焼いて!」と号泣したという、都市伝説が広がっています。しかし、桐ヶ谷斎場で荼毘に付される時の真相は、ちあきさんは、郷さんの後を追うように一、二歩前に駆け寄り、泣き声とも叫び声とも言えぬ、小さな声を上げられ崩れ落ちそうになったが、決して一緒に焼いてのようなことは言っていないとのこと。
また、古賀さんは、ちあきさんに関して、「ちあきさんは、お酒を一切飲まれない。いかにもイメージ的には、バーのママや、名曲『紅とんぼ』の中の飲み屋の女将、といった大人の雰囲気があるが、素顔のちあきさんは真逆で、少女のように可憐な方なのだ。」と語っています。
本書を読み、この二ヶ月間、ちあきさんのCDアルバムを3組5枚、毎日のように聴いて、ちあきさんが、表舞台に出ない理由が分かりました。彼女の楽曲の多くは、男女の情愛を歌ったものが多く、郷さんの死を契機に、まさにその情愛の歌の世界に入り込んでしまったからでは、ないでしょうか。
尚、『ちあきなおみ 沈黙の理由』の発行は、新潮社。発売年月:2020年8月。価格は、1,350円(税抜)です。
==「本と雑誌」バックナンバー ==
http://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/c/dc30502bb229b843454e38b8994f9be0
1~50冊 省略
51冊 2020/4/4 『池波正太郎 「男の作法」』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/945a81aa7409b9ecefbf75361d165c6d
52冊 2020/6/25 『芥川竜之介紀行文集』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/dadeedca3e5e80fc1250d72fa6c18a80
53冊 2020/7/23 『池永陽「コンビニ・ララバイ」』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/0ded21bfc2a8aa3b71308f512f78b768
54冊 2020/7/30 『大人の御朱印 50にして天命を知る』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/9df94033c4eaeeb20caa1d1f65006681
55冊 2020/8/22 『大森匂子「本郷菊坂菊富士ホテル」』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/a9ef620a7829e24f2ac1f43015aed4e8
56冊 2020/10/30『遊遊漢字学 中国には「鰯」がない』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/b65869eec26cab46eea5af93f449be35
57冊 2021/3/12 『ドナルド・キーン わたしの日本語修行』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/1ac42b8270d7d14ff22a0db4a5d03259
58冊 2021/5/7 『1964年と2020年 くらべて楽しむ地図帳』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/230a1542e0bd16e8759e007624fe478e
59冊 2021/8/14 『よりぬき サザエさん No.6』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/f970dde5d6e47e223fad4de21b378387
60冊 2021/8/27 『土地の記憶から読み解く早稲田』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/5b357a1bd07b0e31edd68769dda624f5
61冊 2021/10/8 『湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ』 https://blog.goo.ne.jp/taichou-san2014/e/303f6c324ffdaa96df0bb8cca3c74382