先月に続いてまた星の山へ出かけた。今回も4泊の旅だ。
山の麓の町に着くまでに数箇所の困難が待ち構えている。
これを突破するのがやっかいだ。
それは何かというと、交通標識。
スクットSCUT (Sem Custos para o Utilyzador)というシステムができて、無料の国道を走りたいドライバーを混乱させてむりやり有料の高速道路に誘い込む。料金所はなく、そのかわりに高速道路の上にカメラが取り付けられて、その下を通る車のナンバーを読み取る。ドライバーの住所も自動的に判るから、料金を請求できるのだ。
麓の町までロータリーが数十箇所ある。このごろ交差点はほとんどすべてロータリーに変った。
そこに標識があって、行き先表示がついている。
ところがカステロ・ブランコに近づくと、国道のN18が高速道路のA23にぶつかる場所があって、そこのロータリーでは突然N18の標識が見当たらなくなって、A23に入るしか方法がなくなる。
最初はどうしたら良いのか判らなくて、何度もロータリーをぐるぐる回った。
しかたなく適当に選んでロータリーを出ると、その道はA23をまたぐ橋をわたって、行き着いたのは鉄道の駅だった。
駅はもう使われてなくて、錆びたトラックが止まっていた。道はその駅で行き止まりで、どこにも行きようがない。
引返すしかない。また橋を渡ってもとのロータリーに戻った。
標識のひとつにセボリーニャというのがあった。地図を見ると、ロータリーを出てすぐのところにある村である。あとの標識はA23に入るか、元に引き返すか、廃駅に行く道しかない。残された選択技はセボリーニャ。その道に入ると、それはA23の高速道路と並んで走る道で、すぐにN18、カステロ・ブランコの標識が立てられていた。
どうしてあのロータリーにこの標識が立てられていないのか?ドライバーを惑わすやり方だ。
A23の高速に誘導しようとする、こすっからいやり方だ。
トマールに行く手前にもこれと同じ仕掛けが数箇所もあって、あまりにひどいからもうトマール経由では行かなくなった。
以前、南のアルガルベに出かけたときはA20をいつも走っていた。無料の高速で、アルブフェイラからオリャオンまで走ってマテ貝のリゾットを食べるのが楽しみだった。そのA20にスクットが付いて有料になるとのことで、地元から大反対が起こり、デモまであった。しかしそれを無視してスクットは実施された。地元民も観光客もA20を通らず、無料の国道N125を通る車が急増したから、混乱が起きて事故も多発した。
スクットというのは、高速道路の所々に仕掛けられていて、電波で車のナンバーを読み取り、あとで料金を請求してくる。
この方法は高速道路の会社にとって料金所の建設費用と人件費の節約になるからメリットが大きいが、利用者にとっては不便だ。利用者はスクットを通ったら、自分の住んでいる郵便局に出かけて料金を払うことになる。しかも利用して5日以内に払わなくてはならないらしい。以前は、私たちもそれを知らなくて、スクットを通ってから1週間ほど過ぎて郵便局に行った。ところが5日過ぎているから料金は受け取れないとのこと。あとで請求書が届くから、それを持って払いにこいとのことだった。なんと不便極まりない。これを解決する唯一の方法は、自分のクルマにETC(電子料金収受システム)Electronic Toll Collection Systemを付けるしかない。このシステム機械を購入する費用ももちろん利用者負担だ。
日本でも同じようにETCを購入した車だけが高速料金がどこまで走っても千円という、システムが採用されたことがある。
どこまで走っても千円というのはすごい魅力的だ。みんな争ってETCを取り付けた。ETCの機械が製造が追いつかないなどという話まで出た。この制度で儲かったのは高速道路とETC製造会社だったのではないだろうか?
その後すぐにこの制度は消滅した。
最近のニュースで、スクットの料金を払わない人が多いらしい。わざわざ郵便局に支払いに行っても、「まだ請求はきていません」とか「もう5日過ぎたので払えません。あとで請求書がきたら、それを持ってまた支払いに来てください」などといわれたら、たぶんほとんどの人が払う気がしないだろう。
私たちは以前にA23に迷い込んで、すぐにスクットにひっかかリ、わずか3キロほど走っただけで5ユーロも請求された。たぶん督促料金が含まれていたのではないか。
そのとき以来、ぜったいにスクットのある道路は走らないようにしようと決心した。
有人の料金所のある有料道路は利用しても良いと思う。なぜならその場で料金を払えるから。
このごろスクットの料金を値下げするとのニュースを見た。
値段を下げても、たぶん利用者は増えないだろうと思う。
この不便なシステムは早く止めて、有人の料金所を作ったらどうかと思う。
それでなくても若い人々は国内に仕事がなくて、イギリスやブラジルなどに仕事を求めて、国を出ている。
スクットを廃止したら、少しでも求人の枠が増えるのではないだろうか。MUZ