ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

144. 5月のポルトガル

2018-06-01 | エッセイ

 

 日本ではあちこちに出かけて桜を楽しんだ。吉野山の桜は初めて行ったが、わざわざ出かけて良かったと思う。電車を降りて、ぎゅうぎゅう詰めの臨時バスに乗り換えた。下千本、中千本と山を登るに従って変化する桜の海。遠くの上千本の山肌をうっすらと淡いピンクに染める桜も良いし、近くで手に触れるしだれ桜にも感動した。

 

帰りは土産物屋の続く参道を草餅や桜のソフトクリームなどを買い食いしながら降りて行き、途中にある寺や神社なども御参りして、意外と早く駅にたどり着いた。途中、吉野名物だという豆腐ドーナツを買い食いしたが、ドーナツを揚げていた小母さんが「そうですか。吉野は初めてでおますか。いつもやったら、しも(下)、なか(中)、かみ(上)と順番に咲いて行くんでおますけど、今年はいっぺんに咲いてしまいましたがな。丁度今が見ごろでよろしおましたな~」とのことであった。

日本の4月は桜、桜がどこに行っても満開。しかも日本人だけではなく、どっさりの中国人たちと、タイ人も花見を楽しんでいた。

 

そして5月。ポルトガルは野の花が真っ盛り。

 

 

クリサンテムン・コロナリウム Chrysanthemum coronariumはシュンギクの原種。若葉は春菊そのもので、すき焼きやなべ物に入れても美味しいが、花が咲いてもきれいだ。

 

 

ラシラス・ティンギタヌス Lathyrus tingitanusとクリサンテムン・コロナリウム Chrysanthemum coronarium。

 

 

 

三色昼顔。コンボルブルス・トリカラー Convolvulus tricolor

 

 

風に揺れる真っ赤なひなげし。パパウェル・ロエアス Papaver rhoeas

 

 

紫色が鮮やかな、エキウム・プランタギネウム Echium plantagineum

 

空き地という空き地、野原や山の中も野の花が咲き乱れている。しかもパリッと張りがあって新鮮だ。5月の初めは気温がわりと低く、家の中でもひんやりしていたが、まだ野の花をかじったりする虫の姿はほとんど見ない。

 

 

シャゼンムラサキとシュンギクの競演。

 

セトゥーバルは美しい白砂のビーチが3箇所ある。今日のニュースでは何でも世界で3番目に水質が綺麗な海岸線だそうだ。

 

草丈10センチほどで可愛らしい、モラエア・シシリンキウム Moraea sisyrinchium

 

以前は対岸にあるトロイアのビーチまでフェリーで行っていたが、このごろはトロイアにはカジノができたり、高級別荘地が建ち並んだりして、庶民の行けるところではなくなってしまった。未だ海水浴には涼しすぎるためか、アラビダ山側のビーチも山道もそれ程のクルマは走っていない。

 

マメ科、キク科、ムラサキ科の競演。

 

例年より早い時期、半月ほど早くにポルトガルに戻れたものだから、日本からのトランクの中身のかたづけもそこそこに、この際と、毎日の様に日帰りであちこちに出かけた。しかも例年よりも涼しいからか野の花も開花が遅れて、ポルトガルに戻ってすぐの頃が、丁度見ごろであった。

 

森の中を真っ赤に彩る、シレネ・スカブリフローラ Silene scabriflora subsp.scabriflora

 

 

5月末になると、イネ科のカヤが穂を伸ばし、せっかくの花々を覆い被せてしまう。

 

5月の野原は美しい。しかし厄介な物が潜んでいる。ダニ!

野原に入る時は素肌を出さない様に気を付けて、頭には帽子を被って行きましょう。

 

ポルトガルのえんとつ MUZの部屋 エッセイの本棚へ