11月20日、全国的に低気圧に覆われ、北部では竜巻被害で多くの家が屋根をふきとばされた。
ポルトガルの最高峰、星の山には初雪が降りつもり、頂上付近で通行止め。数台の除雪車が道路に積もった雪を除雪するのにフル回転。頂上のトーレに取り残された大勢の観光客も不安そうだ。ここは麓のコヴィリャンと反対側のセイアなどを行き来する商用車が多いのだが、その内のインタビューに応じた女性は、「毎日このルートを通ってるけど、通行止めは初めてだわ。困ったもんだ~」と嘆いていた。いつもの年より雪が降るのが早いようだ。
ポルトガルで一番高い山だが、1993メートルほどしかない。ここにはポルトガルで唯一のスキー場がある。しかし毎年開場するときはまだ雪が無く、人工降雪機を使ってゲレンデを作っている。今年はその必要がないかもしれない。
夏には放牧された牛たちが、頂上までやって来て周りに寝そべっている。
初めてこのトーレを訪れた時、土産物店のバルで買った、名物のチーズをたっぷり挟んだサンドウィッチを岩場に腰掛けて食べていると、下から大きな牛たちが登ってきたのには驚いた。まさか牛が姿を現わすとは考えもしなかった。
星の山は全体が岩山と急坂だらけとはいえ、草は多いし、霧がいつもかかるから、頂上付近でも小さな小川や水場があちこちにあり、それが集まって大きなダム湖までいくつもできている。牛の放牧に必要な草と飲み水は豊富にあるのだ。
ところが、9月末に星の山に来てクルマで走っていると、高い岩山の上に数匹の動物の姿が見えた。今まで牛以外の動物といえば、野生のウサギを見かけたことがあるだけだ。
高い岩場から下を見下ろす山羊
こちらもびっくりして上を見ているが、その動物たちも私たちを上から眺めている。
なんだか羊のようだが、羊はあんな高い岩山には登れないはずだし、ひょっとして山羊!
野生の山羊!
岩の上の山羊の群れ
反対側の岩場にも10数匹の姿が見え、しばらく行くと岩場に腰掛けた男の姿が見えた。
羊飼いならぬ山羊飼いだった。
山羊の群れを連れてどこから来ているのだろう。
頂上のトーレの付近には村はひとつも無い。かなり山を下ったところに小さな村があるが、かなりの距離だ。
トラックに山羊たちを積んで途中までくるのだろうか。
道路に下りてきた山羊の群れ
しばらくすると岩場にいた山羊たちが道路に降りてきた。山羊飼いの姿はなく、牧羊犬も見当たらない。
山羊たちは立ち往生している私たちのクルマを気にかける様子もなく、気ままに道を進んでいる。でもひときわ身体の大きな山羊がどうやらリーダーのようで、群れを引き連れている様子だ。さすがにリーダーだけあって、なかなか立派な顔をしている。
リーダーの雄山羊
山羊を身近でみるのは初めてなので手で触れてみたいのだが、車の外に出るのは危なそうだ。おとなしそうに見えても、いつなんどき頭突きをされるか分らない。
トーレの2つの塔とスキー場のリフト
星の山の頂上トーレには天文台が2棟ある。もうずいぶん前から使われていないようで、赤錆がつき、あちこちが傷んでいる。
その横には土産物屋が2棟あるが、ドアを開けると強烈な匂いが鼻をつく。何の匂いかと言うと、羊や山羊のチーズから発せられる匂いだ。
土産物屋は大きな建物で、一階も2階も店が40件ほど入っているが、どこの店も並べている商品がほとんど同じ。羊や山羊の皮で作ったスリッパや皮の服やバッグなど。値段は安いが、造りが素朴すぎる。
売っている人々はジプシー風で、店の前に並べたチーズを一切れ勧める。一切れ食べて、「美味い」というと、次々と他のチーズも勧めるから、しまいにひとつ買うことになる。ただし、牛のチーズしか買わない。
私は羊や山羊のチーズは匂いが強烈なので苦手だが、ポルトガル人は好物らしい。いつも行く露店市のチーズ屋でも、チーズの匂いをくんくん嗅ぎながら選んでいるのを見かける。中には小学生の子供でさえも匂いを嗅いでいて、そんな子供の時から強烈な匂いが好きなのかと、驚いたことがある。
山羊のチーズ
11月25日、昨夜は一晩中強風と大雨が吹き荒れた。今日のニ ュースでは北の町や村が大雪で閉ざされて、外界との行き来が困難になっている村もあるという。
そして星の山も今日はますます大雪が積もり、私たちが走りなれた道路も雪が深く積もっている。このまま寒さが続けば、一ヵ月後はトーレのゲレンデもスキーができるだろう。MUZ