ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

S.003. Borago officinalis 武本睦子絵画作品

2017-09-17 | 武本睦子絵画作品

©2017 MUZ

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S.002. Ferula communis 武本睦子絵画作品

2017-09-14 | 武本睦子絵画作品

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S.001. Salvia pratensis 武本睦子絵画作品

2017-09-13 | 武本睦子絵画作品

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138. マデイラ島トラジェディア(悲劇)

2017-09-01 | エッセイ

観光の島、マデイラで突然悲劇が起こった。それは8月15日の聖母昇天祭の前日だった。聖母昇天祭とは、キリストの母マリア様が天に召された日を祭る日である。聖母マリア像の前に集まった多くの人々の頭上を一本の大木が襲った。大木は根元が腐っていたのが原因らしい。子供を含む13人が押しつぶされて亡くなり、その他にも数十人の怪我人がでた。

この事故の数日前に、マデイラ島は強風が吹き荒れて、島の空港が3日間も発着できなくなった。観光客はその間空港に閉じ込められる事態になった。この強風が山の中腹にある教会にも吹き荒れ、大木が倒れる原因になったのではないかと思う。ニュースで見る画像では、大木の下敷きになった若者の足が見えていた。スニーカーを履いていた。おそらく一瞬の出来事で逃げる間などなかったのだろう。痛ましいことだ。

マデイラ島はこのところ災難続きだ。去年は大火事で町の中腹が焼かれたし、数年前は山からの鉄砲水で周りの住宅が巻き込まれて大きな被害が出た。マデイラ島はカナリア島と並び一級の観光地だが、このところニュースになることも多い。サッカーのクリスチアーノ・ロナウドの出身地で、マデイラ島唯一のフンシャル空港は最近クリスチアーノ・ロナウド空港とも呼ばれている。

 

私たちもマデイラ島に行ったことがある。ずいぶん昔のことだが、楽しかった記憶は今でも鮮明だ。ちょうどこの聖母昇天祭を挟んで一週間の旅だった。

マデイラの首都はフンシャルという町で、島で唯一の都会だ。高級ホテルが立ち並び、観光客はここを起点にして、島内のあちこちに出かける。

私たちも航空機とホテル込みでやって来て、5つ星ホテルに3泊して、その後は町なかの安ホテルに移動した。というのも、高級ホテルは町から少し遠かったし、街中の方がどこに行くにも便利だった。

町の中心にあるメルカドには珍しいトロピカルな果物が並び、地下に降りると魚の種類は多くないが、マグロが丸ごとドンドーンと並んでいた。その当時は私の住んでいるセトゥーバルのメルカドにはマグロと言えばカジキマグロしか売っていなかったので、普通のマグロはマデイラで初めて見た。もちろん日本でも見たことはない。日本では切り身にしたパックものしかなかったのだから。マグロの他には、真っ黒い太刀魚が並び、黄色と黒の不気味な模様のウツボが歯をむき出していた。

町はずれの道端にはバナナ畑が広がり、ずっしりと実ったバナナの大きな房が垂れ下がっていた。マデイラ特産のバナナで、小ぶりだがコクのある甘いバナナだ。

ある日、島を半周するバスツアーに参加した。マデイラは海面から頭を突き出した火山島なので、道は狭く曲がりくねり、片側は山が迫り、もう一方は海に落ち込む断崖絶壁続き。その断崖には急傾斜の段々畑が作られ、道端には実のなっている木が植えられていた。その実は、アボカドだった。普通に売られているアボカドに比べてずいぶん小さな実だったが、スーパーで並んでいるものしか知らないので、実際に木になっているのを見て、感動した。さすがは南の島だ。

途中で休憩した海岸は砂地ではなく、丸石がごろごろしたビーチだった。丸石の上に戸板を敷いて寝転ぶのだという。痛そうだ。

島の西側に到着した。「ポンタ・ド・パルゴ」という名前が付いている。「タイ釣り岬」という意味だろうか。タイが良く釣れる岬なのだろう。レストランの下には岩で囲われた天然の海水プールがあった。昼食をはさんでの休憩だったので、一緒のバスツアーで来た人の中には、そのプールで泳いでいる人もいた。

次の日は自分たちで路線バスに乗って中腹にある植物園に出かけたのだが、観光客でいっぱいで、バス停ごとに乗り込んでくる地元の人たちは乗れない人もいて、気の毒だった。私たちもぎゅうぎゅう詰めで、まるで日本のラッシュ時のような混み方を久しぶりに体験した。植物園に到着すると、乗客がいっせいに降りて、バスの中はガラガラ。地元の人たちはやっと座れると、ホッとした顔をしていたのを思い出す。

翌日はまた別の路線バスに乗って、サンタナという村に行った。その村は木造りの三角の家が有名で、村のあちこちで見かけた。公開展示している三角の家は中に入ると、かなり狭く、住み心地はあまり良さそうではなかった。8月中旬にしては風が冷たく、慌ててTシャツを買って上から羽織った。サンタナは山の中腹にあるから多分いつも風が吹いて、それに対抗して、村の家は風に強い三角家になったのかもしれない。

ホテルの周りの下町には手ごろな値段のレストランが多かった。そのうちの一軒に何度も通った。カサガイのバター焼き。星形の貝で、ラパスという。熱々の鉄板にラパスがじゅうじゅうと音を立てて運ばれてくる。周りにバターを撒き散らしながら。

マデイラ特産のパン、「ボーロ・デ・カコ」。ガーリックバターをたっぷりとしみこませたこのパンも美味しかった。

ラパスもボーロ・デ・カコもリスボンなどでは見かけなかった。マデイラ島の懐かしい思い出だ。

今年の夏、マデイラで悲惨な事故が起きた。衝撃的な事故だった。

ポルトガル本土では、山火事が異常に多発して、ペトロガオン・グランデという村では火の迫った村からクルマで逃げ出そうとして、周りを火の手に囲まれて47人がクルマの中で亡くなるという事件が発生した。その近くの村でも20人ほどが火に囲まれて犠牲になった。道の周りは燃えやすいユーカリや松林だったことが、火の回りを早くしたそうだ。

森の中をクルマで走っていると、閉め切っている車内にまでユーカリのよい香りが漂ってくる。ユーカリは精油がとれたり、伐採してウッドチップを作ったり、伐採した後、すぐに脇枝が生え、しかもみるみる成長する。経済性の高い樹木なので、山のあちこちに植えてある。それが今度の山火事の一因になったと思われる。火事のあった村の近くに移住しているドイツ人は「どうしてポルトガル人はユーカリばっかり植えるのだ~」と怒り狂っていた。

山火事は毎日のように場所を替えて多発した。そしてセトゥーバルの我が家のすぐ前も火事が発生して燃え広がり、その晩は家に帰られなくて、近くのホテルに避難した。緊張した一晩だったが、幸い我が家は寸前のところで火が消し止められて、無事だった。我が家の周りにはユーカリはないが松の木が多い。松も燃えやすい。

世界に目を転じると今日もカリフォルニアで大規模な山火事が起こっている。そのアメリカのテキサスでは洪水だ。洪水はバングラデッシュでも起きている。自然災害、事故、そしてテロ。何が起こってもおかしくはない状況はどこにでもある。

私たちは毎年、植物とキノコの観察にブサコの森に出かける。ブサコの森には何百年も経ったと思われる大木が多い。大木の森の森林浴は気持ちが良い。珍しい花が咲いていたり、可愛らしいキノコが生えていたり、そして野鳥が私たちに囀りかける。でもブサコの森ではそんな大木が根こそぎ倒れているのをよく目にする。今回のマデイラ島の事故を見て、いつ何時自分たちの身に降り掛かってもおかしくはない事故だと感じた。

MUZ

 

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