ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

146. ユーカリ

2018-07-31 | 風物

日本では大雨洪水被害のあと、異常な暑さが続いているそうだ。

ポルトガルは冷夏!

毎日どんよりと曇り、気温が26度ほどしか上がらない。本来なら連日39度を超える真夏日が続くはずなのだが。反対に、北欧やドイツなどが高温で、スウェーデンでは山火事が起きている。そしてギリシャの別荘地で大火が起きて死者が90数人も出た。

去年はポルトガルでは雨がまったく降らず、6月から山火事が発生し、次から次にあちこちの町や村で山火事が起こった。それは乾燥と高温のせいで自然発火するのだと言うが、それにしてはあまりにも多すぎる。

今年は山火事を絶対に出してはならないと、全国いっせいに沿道脇の草刈りを徹底的に進めた。そして火が付きやすいユーカリ林が次々と伐採された。

 

ユーカリの花と種子

ユーカリは生命力が強い、というか、原始的な木で、切られても切られてもすぐに芽を吹いて新葉が成長する。その新葉は銀色で、親木の葉とはずいぶん違う。最初それを目にした時は、ユーカリ林の中にぜんぜん違う種類の木が生えていると思っていた。

今年6月、去年山火事で焼けた森のそばを通ったのだが、道路の片側は松林で、そこは真っ黒く焼けたままで立ち枯れていた。しかし反対側のユーカリ林は同じように黒く立ち枯れているように見えたが、根元からは銀色に光る新葉がこんもりと茂っていた。その上、途中の枝からも新葉が出て風に揺れていた。

何という生命力!

ユーカリは根が土中深くまで伸びるので、水を吸収しやすく、砂漠などの乾燥地帯に植えられて緑化に貢献しているという。そういえばポルトガルは圧倒的に砂地が多い。特にユーカリ林は砂地ばかりだ。

ユーカリは再生力が強くたちまち成長するので、パルプの原料に最適だ。しかも精油は分泌腺の機能亢進、去痰、おだやかな鎮痙効果・局所的充血作用などの効能があり、のど飴や吸入剤、塗布剤、軟膏、消毒薬などに用いられる。

その香りはとても強く、クルマで走っているとかなり遠くから良い香りが漂ってくるので、ユーカリ林に近づいているのがわかるほどだ。

 

 樹皮が剥がれている。

 ユーカリの木は樹皮がバラバラと剥がれて垂れ下がる。山火事の時は、それが役に立つという。木の回りの樹皮は燃えても剥がれ落ちるから、木の中は燃えずに保護される。そして土中深く伸びた根が水を吸い上げるからダメージも少なく、回復が早いので新芽がすぐに芽吹く。

こんな有効な樹木だが、欠点はあたりに漂う精油のせいで火事が起きやすいということ。ユーカリの種子は火事にあって初めて芽を吹くという。人工的に発芽させたいときは、フライパンの中で炒ってから土に植えると良いらしい。

有効な樹木だが、厄介な樹木だ。

TVのニュースでは今日7月31日から気温がどんどん上がって、45℃に達するところもあるそうだ。オレンジ色の警戒態勢に入るらしい。昼過ぎから何だか暑くなったような気がする。部屋の中にいても身体の周りをボアボアと熱気が漂い出した。いよいよ夏の到来だ~と喜んで良いのか?

スウェーデンに山火事の消火活動の手伝いに行っていた小型飛行機も呼び戻されて、8月2日に帰国するそうだ。

2018/07/31 MUZ

 

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145. 6月の星の山

2018-07-01 | エッセイ

6月になってTVニュースでは去年頻発した山火事、特に死者多数を出したペドロガオン・グランデのことを毎日取り上げていた。でも今年の6月は毎日どんよりとした雨雲に被われ、火事など起こりそうもなかった。

6月も半ば過ぎ、ようやく青空が顔を出し、同時に気温が急激に上がった。北部の町ブラガを訪れていたマルセロ・デ・ソウザ大統領がボンジュス教会の外で暑さのために倒れた。この日、ブラガは全国で一番気温の高い37℃を記録したのだ。

人々の服装も上着を脱ぎ棄て、一挙にノースリーブになり、トロイアのビーチも人の数がいっぺんに増えた。急に夏が来たのだ!

私たちはこの暑さを避けて北に行くことにした。5月はあれだけ一斉に咲き誇っていた野の花たちも6月半ばになるとすっかり姿を消し、近所は黄色い枯れ野原になりかけていた。

 

野の花は枯れてしまったが、向かいのお屋敷のジャカランダの花は真っ盛り。

 

故障していたクルマのエアコンも修理ができたし、外はいくら暑くても、クルマの中は快適だ。

 

星の山遠望。6月半ばだというのに山頂近くはあちこちに雪が残っている。

 

山頂には高さ1メートルほどの厚みのある残雪があり、下からは雪解け水が勢いよく流れ出していた。

 

山頂付近でヤギの群れにまた出会った。

 

ヤギ飼いの姿は見えなかったが、ヤギたちは自分たちで何処かへ向かって進んでいた。

食べる草がどこにあるのか、知っているのだろう。

 

エリカ・ウンベラタ Erica umbellataの花が満開。岩山の周りを赤く染める。

 

リナリア・エレガンス Linaria elegans

リナリア・エレガンスの花はとても小さい。ひとつの花は5ミリほど。いつも風に揺られているのでピントがとらえにくい。

 

ラヴァンデュラ・ストエカス Lavandula stoechas

ポルトガルの野生のラヴェンダーは、なぜか香りが薄い。

 

フェルラ・コムニス Ferula communis

フェンネルの黄色い花は咲き始めで、新鮮だ。

 

フェンネルの種もできていた。

 

畑にはセレージャがたわわに実っていた。フンダオのセレージャ祭りも終わったらしいが、町角や農家の庭先では2キロ入りの箱が5ユーロから8ユーロで売っていた。

 

ルバス・イダエウス Rubus idaeus

これは野生。野イチゴの花も満開。実が熟すと黒くなり、美味しいジャムができる。

 

去年の山火事で燃えた場所。左は松林で、黒く焦げて立ち枯れている。右はユーカリ林だが、燃えた木の幹からたくさんの新葉が出ている。驚異の生命力だ。パルプの原料になる。しかし今年はユーカリ林は次々に伐採されている。

 

帰路、辺りが急に暗くなり、巨大な雨雲が現れ、大粒の雨粒がフロントグラスを叩いた。20分ほど続き、それまで虫の死骸で汚れていたガラスが見る間に洗い流されて綺麗になったのはありがたかった。MUZ

 

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