先日、久しぶりにマルバオンに行った。秋の栗祭りに出かけていらいだから、何年ぶりだろう。栗祭りの時は村中が観光客でごった返し、栗を焼く炭火の煙があちこちでもうもうと上がっていた。熱々の焼き栗とその年のビーニョ(ワイン)を栗祭りで味わうのは最高の贅沢だった。
今回は5月末。マルバオンは青空が広がり、観光客も思っていたより少ない。
スペインとの国境まで10数キロしかないので、スペイン人の観光客がとても多い。静かなマルバオンの路地から声高いスペイン語が響き渡る。
村の城壁の門の脇にツーリスモ(観光案内所)があり、そこでマルバオンの駅のことを尋ねた。
駅は村から遠く離れているという。でもどのあたりにあるのか分からない。
すると、係員は、「もう鉄道は廃止になったから、汽車には乗れませんよ」という。
「知っています。駅の写真を撮りにいきたいのです。」
「ああそうですか。駅には美しいアズレージョがありますからね。ぜひ行ってください」
「ここから遠いのですか?」
「いえ、車で10分ほどですよ」
係員は周辺の地図を広げて印しをマークしてくれた。
マルバオンは小高い山の頂上にある砦に囲まれたユダヤ人の村である。
そこから平地に下って、いくつかの小さな村を通り過ぎると、ようやくそれらしき村に着いた。
線路沿いに建っている家の壁にはカラフルな壁画が描かれている。最初、これが駅舎だったのだろうか~と思ったが、ちょっと変だ。かつての踏切番の家だったのではないだろうか。
踏切に小さな白い犬がいる。やさしい目をした、おとなしそうな犬だ。
「僕が駅舎に案内するよ」というかのように、私たちの前を歩き始め、私が途中で写真を撮っていると、じっと待っている。まるで小さな子供が村の案内役をかって出たように思えて、後をついていくことにした。
人通りがほとんどないと思っていたら、後ろの方から犬の吠える声がした。振り返ると、小型の犬を散歩させている女性の姿が見えた。
小型の犬は、私たちの案内役をしている白い犬に吠えている。キンキンとしたうるさい声でしつこく吠える。
白い犬はおっとりとした動作で、小型の犬に近づいて行った。
別に喧嘩が始まるようでもないので、私たちは先を急いだ。
道の突き当りに駅舎が建っていた。それは思いがけなく大きな建物だった。
でも入り口や窓は全て閉ざされ、人の気配も全くない。
裏に回ると、ホームがあり、線路も残されている。
そして駅舎の壁一面にアズレージョがずらりと並んでいる。
それはマルバオンだけではなく、ポルトガル各地の観光名所を描いたものだ。
この線路は昔はスペインと繋がっていた。スペインからやってきた観光客がポルトガルに入国して最初の駅だ。豪華な駅舎の壁に飾られたアズレージョはポルトガル各地の観光地を紹介するポスターの役割をはたしていたのだろう。
マルバオンの城
マルバオンの祭り
グアルダの大聖堂
トマールのキリスト修道院
フィゲイラ・ダ・フォスの海水浴場
修道院の回廊
アルコバサのサンタ・マリア修道院。ペドロ1世とイネスの石棺が安置されている。
ナザレの浜辺。波の荒い浜辺に帰ってきた漁船を牛が引き上げている。
エヴォラのグラサ教会
線路を隔てた向かいの邸宅には椰子の切り株に巣をかけたコウノトリのつがいがいた。
MUZ