広場の工事では12月30日に親方と主任が二人で仕事をして、セメント袋を一つだけクルマに積んで帰って行った。それから一度も姿を見ない。
もう一ヶ月近くになる。残ったセメント袋や工事用の水を入れておく大きなタンク、そしてセメントをこねるミキサーもそのまま。まるで夜逃げをしたような感じだ。
そういえばあの親方は気の弱そうなタイプだった。ひょっとしたら、倒産して夜逃げをしたのかもしれない。そうでも考えないと、説明がつかない。
主任をはじめ、働いていた労働者はみんなポルトガル人ではなく、移民だ。
彼らはどうしているのだろうか。ポルトガルは今、建設ブームというか、公共工事を盛んにやっているので、人手不足らしい。公共機関が道路や公園などの手入れをしているから、労働者は引く手あまたで、労働者は仕事にあぶれることはないはずだ。ここの空き地の工事だって、敷き詰められていた石畳を掘り起こして、かわりにセメントカラーブロックを敷いている。私は石畳のほうが良かったと思っている。どうしてやり替えるのか判らない。石畳は大雨の時、洪水で一部が流されたあと、傷んだところだけ石を取り替えたらすむ。職人が石を手に持って、一個ずつこんこんとハンマーで削ったものを取り替えていく。
町なかの通路などはベージュ色の石の中に黒い石を埋め込んで模様を描く。その町の特徴をとらえた図柄なので、町によって異なる。
旅に出て初めての町を歩くときは、足下の歩道を見ながら進む。すると思わぬ発見がある。石畳の中にいろいろのものが埋まっているのだ。
ヨハネの黙示録より、ラッパを吹く天使
蟹、味噌が旨いサパテイラ
アルガルベ地方のラーゴスで見たタコ
タツノオトシゴ
石畳を泳ぐエイ
ランタン、六角形に割られた周りの石が特徴的。石畳職人のこだわりを感じる。
ホタテ貝は巡礼への道しるべ
MUZ