ケイシロウとトークアバウト

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お座敷は沈黙する

2023-12-17 21:36:00 | 日記




『ネアカ』という名のスナックがあった。
80年代に店を構え、
40年の時を経て、
閉店の時が来た。
経営者のママも、
開店当初は30代でも、
現在は70代。
新規の客に、
女子大生やとまじめに言っても、
信用してもらえない(当たり前やと思うけど😬)。
新規客が増えないのなら、
店を終わらせるのが潮時やと判断した。
それで、
かつては大の仲良しグループにして、
店の発展を支えた7名の者達に、
忘年会を兼ねたお店のお別れ会をする旨の連絡をした。
なぜなら、
どんなことがあっても、
この7名は、
閉店の時は、
お別れ会をすることを、
天と地に誓ったからやった。
けど、
とある出来事から、
この7名はそれぞれ絶縁を宣言して、
二度と口を利かないと、
時間と空間に誓った(🤔❓)。

お別れ会の会場は、
日帰り旅行の形で、
バスをチャーターして、
旅館の座敷を借りる形になっていた。

そして、
お別れ会当日が来た。
7名は集まって来たが、
目を合わせることなく、
一切口を利かずにバスに乗り込んだ。

座敷に入り、
それぞれの膳に着く際も、
ぜんぜん口を利かなかった。
経営者のママは無言で、
『みなさま、お世話になりました』と書かれた用紙を7名に配った。
ビールがジョッキに注がれた。
ママと7名は無言😑でジョッキを上に掲げて一礼して、
ジョッキを置いた。
誰も何も食べず、何も飲まなかった。
7名はデンモク(カラオケの予約入れ機)に、
それぞれ大好きな曲を予約した。
が、
マイクが回ってきても、
マイクを手にするだけで歌うことはなかった。
カラオケの曲だけが、
寂しく座敷に響き、
この状態は3時間も続いた。

経営者のママは、
それぞれ俯いている7名を見回した。
この7名は身も心もろくでなしやった。
ある者は、
株取り引きしてると言いながら野菜のカブを売っていた。
ある者は、
大僧正だと偽り名乗った生臭坊主やった。
ある者は、
雄鹿の玉を専門に撃ち抜くイカれ狩人やった。
ある者は、
医者やと言ったが石屋やった。
ある者は、
元力士やと言ったがただのデブやった。
ある者は、
野鳥愛好家だと名乗った八百長したボクサーやった。
ある者は、
画家だと名乗った馬鹿やった。

まさにろくでなしの中のろくでなし7人衆。
けど、
店に多くの金を落としたのは、
彼らやった。
また、
明けても暮れても7人は大の仲良しやった。
そこに、
ミハルという女性客が来て、
7人は仲良くなったが、
ミハルを自分のものだけにしたいという欲望が彼らを襲い、
彼らは険悪になった。
そんな中、
ミハルが女装していた男やったことが判明して、
7名は責任のなすりつけを果てしなくし出して、
結果、
絶縁というカタチとなった。

終わりの時間が来た。
みんなは無言で座敷を立ち、
無言でバスに乗り、
無言でそれぞれ帰宅の途についた。

スナック『ネアカ』の時代は終わり、
お店は廃業となった。
が、
経営者のママは、
7名からのお礼のメールをそれぞれいただいていた。
「ママ、ありがとう。楽しいお別れ会やった」
「ママ、ありがとう。ひさしぶりにみんなと会えた」
「ママ、ありがとう。カラオケ🎤楽しかった」(歌ってないくせに😦)
「ママ、ありがとう。食事が美味かった」(ナニも食ってないくせに😦)
「ママ、ありがとう。バスを用意してくれて。釣りに行ったらバスを釣って持って来るよ」
「ママ、ありがとう。賑やかな座敷を用意してくれて」(🤔❓)
「ママ、ありがとう。約束を守ってくれて。お礼に薬草送るね」

ママは、
これらのメールをずっと大事に持つのだという。
人は、
若さがみなぎり、
果てしなく駆けていけると思っていたら、
時が過ぎて、
人におぶっていかれる時が来る。
やがて、
寿命が尽き、
火葬されて骨は骨壷に収納される。
けど、
たくさんの思い出の輝きが、
暗い骨壷の中を永久に照らすと、
この経営者のママは確信した。