僕は、ドラゴンフルーツの子供のドラフル。去年の夏沖縄で取れたお母さんの種の一粒として生まれたんだ。一粒種でないのは少し不満だけど、まあドラゴンフルーツの種って大量にあるからね。
普通、ドラゴンフルーツの種は果肉と一緒に口に放り込まれてプチプチとつぶされてしまうか、それを免れても、ウンコになって流されてしまう運命にあるんだ。
でも、もらわれてきたお家のおぢさんは、いくつかの種を鉢にまいて、こうやって育ててくれたというわけなんだ。
僕らは一つ鉢に生まれて、仲良くすくすくと大きくなってきたのだけれど、ある日おぢさんが僕だけを小さな鉢に移し替えたんだ。
"おぢさんどうして僕だけ一人ぼっちにするの?"と聞いたらおぢさんは答えた。
"君はみんなと離れて一人、ふるさとに帰るんだよ"
ふるさと?それは、沖縄の名護市というところなんだって。僕はまだ種だったのでそこがどんなところか知るはずも無いけど。「帰る」って聞いたときに胸の端に暖かい、そして懐かしい南国の風がさわさわと流れたような気がしたんだ。
僕を入れた小さな鉢は、少し大きめのかごに入れられて、旅の準備を整えてくれた。これなら、旅行中に揺られても僕が倒れることが無いだろうからね。
僕たちは神戸空港から飛行機に乗って沖縄に向かったんだ。
こうやって、僕は名護に帰ってきた。
お母さんを送ってくれた、名護のおぢさんは驚きながらも、僕を歓迎してくれた。
これからここで育って、立派な実をつけるんだと、少し不安に思いながらも、すこし誇らしくおぢさんの手にだかれた鉢の中で僕は胸をはって、大きく暖かな空気をすったんだ。