いきけんこう!

生き健康、意気兼行、粋健康、意気軒昂
などを当て字にしたいボケ封じ観音様と
元気印シニアとの対話。

ヒナゲシ紋次郎の旅立ち 

2008-05-11 00:21:19 | 散策
夏目漱石の新聞連載小説「虞美人草(ぐびじんそう)」は、世間にヒナゲシを大いに知らしめました。

「虞美人草って知っている」
ボケ封じ観音さまが問いかけます。

「我輩は猫であるの作者が書いたんでしょう」

元気印の答えを聞いた観音さまは、突拍子もなく歌いだしたのです。

『丘の上 ひなげしの花で
 占うの あの人の心 今日もひとり
 来る来ない 帰らない帰る』

「どうして、アグネスチャンのデビュー曲なんだ、よ~う、観音さま」

意にも介しません。

『あの人はいないのよ 遠い街に行ったのよ
 愛のおもいは 胸にあふれそうよ
 愛の涙は 今日もこぼれそうよ』

「これで、すっきりしました、ああ~、ああ~ァ」
思いっきり背伸びをします。

「あっしには、かかわりのねえことでござんす。
結婚しようよと、口説かれた昭和47年、どうにもとまらないので、瀬戸の花嫁でしょう。
それからは、毎日まいにち、女のみちの愚痴を聴かされ、姐御(あねご)のお竜はスクリーンから、長らくお世話になりました、と観客に語りかけた挙句の果てに、映画界から引退して堅気になったんですよ。チャン・メイリンに関っている暇なんぞ、ねぇんでござんした。それにしても、ひなげしの花の歌詞、観音さまは、よ~く覚えている」

自ら、西楚(せいそ)の覇王と名乗った項羽(こうう)の愛人・虞美人の伝説に由来する花名のことは語りつくされています。
実際のところは、ヒナゲシは唐の時代になって中国に伝わっているのです。虞美人が自決した漢の時代から1000年も後なのです(図説 花と樹の事典)。
平家物語に由来する熊谷草、敦盛草は、それだけ熊谷直実の生き様、平敦盛の潔よさが庶民に受け入れられ愛されたように、1000年を経た時代になっても、虞美人の悲恋物語は唐人の心を奪う伝説だったのでしょう。

かわいらしい花をつける芥子(ケシ)が和名のヒナゲシの漢字は、雛芥子、雛罌栗です。
ケシは漢字で「芥子」と書きますが、「かしい」と読みカラシ(辛子)の意味なので、「雛罌栗」と書くとのこと(同書)。

罌栗(おうぞく)の、
罌(おう)は「かめ」、腹の部分が大きく、口の部分が小さい丸いかめ。
罌栗は、草の名・けし。
つまり、罌栗とは、
芥子の実は、罌の形をした実のなかに栗のような種子が入っているという意味(同書)。

三度笠姿のヒナゲシは野原ではなく、花畑に咲いていました。
アメリカンフットボール用ボールをピーナッツ大にした蕾を下に向け、蕾が濃紫色に色ずき頭をぴい~んと立てると、蕾を押し破り花弁が顔を出し始めます。

昔は薬草として大切にされた麗春花(れいしゅんか)でしたが、今はポピーとかコクリコーの方に馴染みが深くなっていますから、ヒナゲシ紋次郎の言い分を代弁します。

麗春花は咳止めに重宝な薬だったのです。
三度笠を外した直後の花を日干しにされた雛罌栗は麗春花と呼ばれ、日常生活で顔を利かせていたのです。だから、雛罌栗の三度笠姿は、麗春花へ変身するために旅立つ晴れ姿なのです。

しかし、花畑に群生していた紋次郎ヒナゲシは、7日後、仲間と一緒に刈り取られて、今日も放置されたままでした。

物言わぬヒナゲシ紋次郎の「傷だらけの恨み節」が聴こえてきます。

 何だかんだと お説教じみたことを代弁させて参りましたが
 そういう私も 日陰育ちのひねくれ者
 お天道様に背中を向けて歩く
 馬鹿な虞美人草でございます

♪♪ 真っ平ご免と 三度笠飛ばし
   歩きたいけど 歩けない
   嫌だ嫌です お天道さまよ
   日陰育ちの泣きどころ
   明るすぎます あっしには ♪♪

とは言いながら、しぶといのがヒナゲシ紋次郎なのです。
無事、種子に成育した雛罌栗は、地中に埋もれても24年間命を燃やして、紋次郎になる機会を狙っているのです。

「お天道様が明るすぎる畑に放置されたままでも、あっしには、かかわりのねえことでござんす」 

三度笠をパチン~と弾いて、新しい世界に旅立とうとしている紋次郎ヒナゲシは、喜びに耀いていませんか。

「ちょっと、まっておくんなせい」

ヒナゲシ紋次郎が睨みつけます。

「あっしの花びらで恋占いをしていた昭和47年、庶民宰相と持て囃された角さんが登場して、日本列島改造の暴風が吹き荒れていましたね、元気印さん。お忘れですか」

「政界では、日中国交回復が超党派で政治的に具体化されていましたし、ニクソン大統領が訪中の際、アメリカに贈られたパンダが、日中友好の記念として中国からプレゼントされました」

ボケ封じ観音さまが合いの手をいれるのです。

「友好第一と訴えた中国の姿勢は好意的に受け止められ、パンダ贈与で中国ブームはクライマックスに達しましたよ、元気印さん」

「そうでござんす。それ以降の日中関係がどのように進展してきたのか、国益を名目にした他国への内政干渉は日常茶飯事でしょう。かの国のしたたかな外交戦略を忘却の彼方へ葬り去っては同じ轍を踏みます。くわばら、クワバラ。ゆめゆめ、お忘れなく」

ぴゆ~ん、ぴしっ。

ヒナゲシ紋次郎の口吹き手裏剣、細長く研ぎ澄まされた楊子が顔をかすめて飛び去ります。
命取りにならないうちに、三日坊主は退散しよう、逃げるが勝ち。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする