いきけんこう!

生き健康、意気兼行、粋健康、意気軒昂
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元気印シニアとの対話。

 千葉市動物公園 その17:姪と暮らすトメキチは蒙古野馬

2009-04-25 06:02:57 | 散策
一般的にモウコノウマと名前表記されている蒙古野馬は、モウコ・ノウマです。
千葉市動物公園は、昭和60(1985)年4月に開園ました。その2年後には、蒙古野馬、セスジクスクス、オウギアイサ、アンデスニワトリの繁殖に成功しています。
いずれも、日本では最初の繁殖成功ですし、アカハナグマは、『旭山動物園物語』(2月封切り)に出演して見事な餌取りを演じているのです。
とはいっても、千葉市動物公園の代名詞は、立ちあがるレッサーパンダ・風太ですね。

この動物園には十人十色の魅力が隠されており、それを探し出す楽しみもあります。
例えば、ハシビロコウ、ムフロン、動物科学館2階の小型サルたち。
蓼食う虫の元気印が挙げた魅力ですから、来園者を惹きつける隠れた穴場が沢山ある筈です。

さて、蒙古野馬を撮影していると突然、トメキチ(写真:3月14日撮影)が地面に体を擦りつけて寝返りを打ち始めます。

「春めいてきましたが、モウコノウマは早くも“衣替え”を行っています。よく地面や壁に体を擦りつけて、毛を落としています」

この手書きの解説を読んで、トメキチの寝返りの訳を納得。
トメキチと同居しているクリスも、トメキチに習って寝返りを打ちます。
肩と尻の毛は、短くても新しい毛に衣替えしていますが、腹のまわりには古い毛が残っています。それにしても、地面に体を擦り付けて衣替えをする馬なんて、初めて見ました。
 
「トメキチ オス
 精悍な顔つきをした、のんびりとした性格。全体的に茶色っぽく、体つきががっしりしている。
 クリスに蹴られてもじっと耐えます。1990年10月23日 千葉市動物公園生まれ」

手書きの解説板にあるように、トメキチはここで生まれた19歳のオス馬です。
他方、姪はどのように紹介されているでしょうか?

「クリス メス
 トメキチに後ろ蹴りをいれる、食いしん坊なおてんば娘。顔がほっそりして、全体的に白っぽく、蹄が伸びている。1999年9月27 日 多摩動物公園生まれ」

トメキチには1歳年下の妹・サーシャがおり、平成10(1998 )年3月16日、近親交配による遺伝的悪影響を防ぐため、ベルリンから多摩動物公園へ来園していたレオのもとへ嫁入りします。昭和58(1983)年7月1日産れのレオは、サーシャの15歳年上になります。サーシャは、平成11(1999)年9月27日にクリスを産んでいますから、クリスはトメキチの姪に当たり、今年10歳になります。

ところで、昭和34(1959)年に報告された地球上に生息する野馬の飼育個体は59頭でしたが、昭和35(1960)年代には絶滅しています。しかし、平成2(1990)年になると、世界各地の動物園と保護区で飼育されている野馬の個体数は約1,000頭確認されています(動物たちの箱船)。

それを支えているのは血統台帳です。蒙古野馬の繁殖計画を軌道に乗せました。
世界最初の血統台帳は、ヨーロッパ・バイソンのそれで、昭和7(1932)年に完成し、それから25年後にシフゾウ、2年後の昭和34(1959)年には、世界で3番目となる蒙古野馬の台帳作成がプラハで行われ、その維持管理はプラハ動物園で進められています。
平成2年10月には、95種の血統台帳が現存しています。日本における血統台帳の管理は、日本動物園水族館協会(JAZGA)が行っています(同上)。

馬の分類には諸説ありますが、日本で一般的に用いられている、重種、中間種、軽種とします。
重種は、シャイアー、ペルシェロン、中間種は、アングロノルマン、競走馬として重宝されているサラブレッドは、軽種の代表品種になります(日本中央競馬会Web)。

では、蒙古野馬の品種は・・・?
先の分類にはありませんが、今では絶滅したとされている野生種です。現在、保護区に生育している蒙古野馬は、動物園で飼育されていた個体が野生に戻されて繁殖したものです。

このように、蒙古野馬の繁殖計画は、その実績が評価され繁殖手法も定まり、繁殖計画の模範とされています。蒙古野馬は、野生復帰を待つだけの家畜に一番近い野生種なのですが、家畜馬の遺伝子を取り除く試みがなされています。模範となる前の近親交配による繁殖手法が原因となり、一種の神経障害とされる運動失調を引き起こす遺伝子が発見され、個体を減少させる病気であることが判ったからです。

残念ながら、トメキチやクリスは国産馬ではありません。
北海道開拓で活躍した農耕馬が、「ばんえい競馬 坂越え 秘策あり」(サンケイ新聞:4月20日)で取り上げられていた。今も活躍している日本の馬がいたのです。

その馬は、道産子(どさんこ)と俗称されている北海道和種馬(ほっかいどうわしゅば)です。
平成18(2006)年時点における保存地域内での道産子の飼養頭数は、1,468頭。その中のベスト3管内は、十勝382、根室286、釧路246頭で、北海道全体の62.3%を占めています。馬の種類では、重種に属する輓馬(ひきうま・ばんば)に分類されています。

日本の農用馬の基礎となっているペルシュロンはフランスが原産地です。
北海道のばんえい競馬の輓馬の改良には、フランス原産のブルトン、ペルシュロンなどを道産子のメスと交配させて改良が行われています。

ちなみに、日本馬の在来種は、道産子を含め8品種います。
木曽馬(きそうま)、御崎馬(みさきうま)、対州馬(たいしゅうば)、野間馬(のまうま)、トカラ馬、宮古馬(みやこうま)、与那国島馬(よなぐにうま)と北海道和種馬です。
その源郷はモンゴル高原と考えられています。ヨーロッパでは、野生馬を草原型、高原型、森林型の3系統に分けていますから、日本馬の在来種の源郷はモンゴル高原というのは、この3系統による分類からでしょう。この分類では、草原型の代表が蒙古野馬です。トメキチとクリスは、本来のアジア型野生馬でモンゴルに生息する野馬(のうま)の末裔といっても良いでしょう。

この8品種は「日本在来馬」として認定され、文化財として指定を受け、日本馬事協会および各地の保存会によって、頭数の維持・増加が図られています
海面が上昇して日本列島が大陸から分離した後は、それまで生息していた日本馬は絶滅しているので、縄文・弥生時代の日本には馬が生息していた可能性は殆どないと考えられています。
日本馬の在来種の源郷はモンゴル高原という意味は、この考えに裏づけされているのでしょう。

なお、トカラ馬は、上野動物園でオス1頭が、平成19(2007)年10月から飼育展示が開始され、平河動物園(鹿児島県)では、メス3頭の飼育展示が行われています。

一方、平成12(2006)年3月まで、浜松市動物園では蒙古野馬の飼育を行っていました。
昭和63(1988)年、多摩動物公園から8歳のオス・ハリーとメス・バラが浜松市動物園へ来園しています。平成8(1996)年2月6日にバラが呼吸困難に陥り16歳で、骨折が原因でハリーが平成12年3月21日に26歳で死亡してからは、蒙古野馬の飼育は行っていません。
これらのことは、古い資料をひも解いた浜松市動物園の方から教えて頂いた内容です。有難うございます。

突然、地面に体を擦りつけて寝返りを打ち始めたトメキチは、蒙古野馬が置かれている厳しい生存競争と生活環境の現況を、来園者に訴えているのでしょう。
トメキチに習って衣替えをするクリスはおてんば娘ですが、この時ばかりはトメキチ叔父さんと一緒になって、蒙古野馬の存続を訴えているように見えます。

ロシアで飼育されている蒙古野馬の個体の中には、欧米で進めている繁殖計画の系統とは明らかに異なる系統が含まれています(動物たちの箱船)。

そうなんです、トメキチやクリスが健全な子孫を残し家系を存続させるめには、遺伝子がなるべく交じり合う方が良い。蒙古野馬は、千葉市動物公園と多摩動物公園で飼育されているだけですから、クリスは、モスクワ産まれ個体と見合いをしたいはずです。
クリスの父レオはベルリン産まれです。国際ペアリングなんて、クリスにしてみればお手のものですよ。




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