光と影のつづれ織り

写真で綴る雑記帳

新版画、ポール・ジャクレー、山村耕花、伊東深水、橋口五葉 横浜美術館コレクション展から

2015年10月04日 | アート 浮世絵・版画

横浜美術館コレクション展での最大の収穫は、版画

特にポール・ジャクレーの作品を多数、見れたこと。

 

 

 

冒頭の作品から、魅力的でした。

 

 

 

繊細なマチエールを見ていただくため、少しクローズアップします。 くっきりとした目と長いまつ毛、それを引き立たせる眉毛の輪郭線

そして、美しい色!  襟のレースの立体感 素晴らしい。

 

 

ここで、比較のため、橋口五葉の「夏衣の女」のクローズアップを。

和と洋の違いがありますが、どちらも繊細なマチエールで、とても魅力的です。

 

 

こちらは透ける布地表現と毛皮の表現、色彩に注目。  1934年はジャクレーが版画を始めた年です。

 

 

 

クローズアップ。 ウーン、彫り師、摺り師も素晴らしい。 西洋婦人の作品は少ないらしく、この2作品ぐらいしか見当たりません。

 

 

 

上と同じ、1934年(昭和9年)の作品で、サイパン島の娘を描いています。

 

 

 

西洋婦人の2作品と違い、よりリアルに描いていて、表情などがグッと迫ってきます。

 

 

 

ジャクレーはミクロネシアが好きで、何回も訪問していてます。

そして、ジャクレーは少年を女性ふうに描いているケースが多く、ゲイだったのではと憶測されていますが、どうでしょうか。

確かに、ジャクレーは生涯独身で、韓国人の助手夫婦の娘を養女にしています。また、ジャクレーの若い時の写真はハンサムです。 

一方、蝶の収集家としても有数で軽井沢の自宅には、3万羽の蝶のコレクションがあった。 要は、美しいものが好きだったようで

少年にも美をみたのではないでしょうか。

 

 

 

 

背景の花は平面的に単純化し、中年代の女性は少し尖った表現、 それにしても色彩が美しい。

  

 

 

 

浮世絵のルーツは残しながら、色合いに新しい息吹きを感じます。

 

 

 

ゲイ的な表現ですが、絵としてはシンプルな構図、色彩ともに素晴らしい。 ゴーギャンの影響も垣間見えますね。

なお、中央部の影は、私の撮影時の影で、原画の陰影ではありません。

  

 

顔の部分をアップ。 まつ毛などの描き方は同じです。 瞳が黄色やオレンジなのは、ジャクレーの色彩感覚なのでしょう。

 

 

 

ハンターと題されていますが、女性的な描き方です。  1957年はジャクレーの晩年61歳の作品。

 

 

 

  

前出の版画を手に持つ芸子を描いたもの。  顔はメリハリある描き方で、日本人が描く、なよとした顔ではありません。

和服や髪形など、伝統の浮世絵スタイルを踏襲している感じですが、なにか新しい感覚がうかがえます。

 

 

 

上半分のシンプルな描きこみに対し、下部の大漁祝いのハッピの柄の描きこみ・・・面白い

体が弱かったジャクレーは、伊豆で療養しています。  その時食べた魚が、好物になった。

 

 

 

 

今度は朝鮮での取材作品。 彼の父が1921年に亡くなり(第一次世界大戦に従軍し、毒ガスを吸って帰国後、亡くなった)母が日本人医師と再婚し

医師がソウルの大学教授になると母もソウルに住んだため、日本に残ったジャクレーは、通算5回ほど、ソウルを訪問している。

 

 

 

 

 背景がシンプルで素晴らしい。 その国の民俗も、よく観察しています。

 

 

 

 

 上衣のチョゴリ?に薄い水色で模様が描かれています。  それと目、特徴だった睫毛が描かれていません。

顔は養女の実母がモデルではと、養女の稲垣テレ-ズ・ジャクレーさんの指摘。

 

 

 

 

こちらは中国人を描いた作品。 色彩、構図ともに素晴らしい。

 

 

 

 

この作品、戦争が厳しさを増し、ジャクレーも日本での制作が厳しくなっていった。

しかし、この作品の色数の多さは、そうした厳しさを吹き飛ばすような凄さです。

 

 

 

ジャクレーの亡くなる前年の作品。  この作品も、目の描き方が変わっていますが、雰囲気はこちらがいい。

  

 

 

 

 

ここから、日本人の作品になります。 耕花もなかなか面白い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

伊東深水 独特の詩情があります。

 

 

つい比較で睫毛を見ますが、ジャクレーほど強調していません。

 

 

 

 

 

 

橋口五葉。

  

 

 

 

2011年に千葉市美術館で開催された「橋口五葉展」でも見た「浴場の女(ゆあみ)」と同一モデルと

思いますが、日本的な顔立ちに惹かれます。

 

 

冒頭、ジャクレーの版画との比較で使用したアップ画像

 

 

最後に、ジャクレーの母、ジャンヌさんの肖像画も展示されていました。

 

 

一生を独身で過ごしたジャクレーは、版画工房の助手だった韓国人の娘を養女とし、財産などを託した。

その養女、稲垣テレーズ・ジャクレーさんが、ジャクレーの作品を分散させず、フランス国立美術館や横浜美術館、韓国国立中央博物館に

寄贈し、今日、私達が鑑賞できていることに感謝したい。 


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2 コメント

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嬉しさも倍です。 (te-reo)
2015-10-05 23:30:48
美しさを共有できる方がいて、こちらも嬉しくなります。
ジャクレーの色彩の美しさは、ジャクレーの魂そのものですね。
「黒い蓮華」の危険な香り・・・言い得て妙だと思います。
釘付けにするような視線、、黒い蓮華のコスチューム、妖艶さの極致で、スリルを感じます。
紹介したい展示はまだまだあるのですが、手が遅く、記事アップが遅れますが、越後美人さんの声に励まされ、、頑張っていきたいと思います。 有難うございました。
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色彩の美しさ堪能 (越後美人)
2015-10-05 09:05:25
この度初めてポール・ジャクレーの版画を見せて頂き、その色彩の美しさに魅了されました。
「赤い衣服」は、バックの色や襟の「織り模様」の立体感などが赤い服をさらに美しくしているように思います。
どの作品も色使いが個性的で古さを感じさせませんね。
「パリの婦人」の毛皮などは、もうその温かさが自分でも身に着けたかのように伝わってきました。
また、「黒い蓮華」は色っぽいですねえ♪
今にも誘惑されそうな危険な香りがします。

私は絵画全般好きですが、中でも版画が一番好きです。
この度のポール・ジャクレーの版画を見せて頂いて、益々版画が好きになりました。
地方にいますと、東京までの展覧会にはなかなか行くことが出来ません。
いつも有難うございます。楽しみに拝見させて頂いております
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