光と影のつづれ織り

写真で綴る雑記帳

奈良原一高「人間の土地」 東京国立近代美術館(2014.12.7) 

2015年02月11日 | アート 写真

昨年12月7日に行った国立近代美術館で、紹介したい作品が残っています。

昨年の「現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展」以来、玄関前にはマーク・クイン の《神話(スフィンクス)》が鎮座しています。
汚れが流れ落ちた跡が、目立ってきましたね。

 

紹介したいのは、奈良原一高の写真です。 2階で「王国」が展示されていますが、関連してMOMATコレクションのなかでも、

奈良原一高 「人間の土地」が展示されていました。  こちらは撮影OK。

 

 

3階第9室の展示コーナーのまず、キャプションから

 

 

今また、廃墟として人気がでている軍艦島、60年前の最盛期の頃の写真です。
この角度から見ると、船尾に見えますね。

 

 

 

「軍艦島全景」  確かに軍艦だ。

 

 

 

「時化」  かなり危険をおかして撮影しているのではと、撮影する奈良原を想いながら見てしまいます。 迫力があります。

 

 

 

「地下道」  人は写ってはいないのですが、人との関わり合いが濃密に感じられる。

 

 

 

「雪の貯炭場」  コンクリート壁に後からあけた出入り口。  衰退していく兆候を感じます。

 

 

「立坑のリフトに乗る坑夫たち」  亡くなった父も、昔、筑豊の炭鉱で坑夫として働いていましたので

この写真には、懐かしい記憶が蘇ります。

 

 

「坑道天井」  粗っぽい造りですが、石炭で、国のエネルギーを支えていたことを暗喩するのと、単純にこの形の面白さで撮ったのでしょう。

 

 

「浴場」  父は真っ黒にすすけて、仕事から帰ってきていました。 

      私が小さい頃、よく父に連れられて、共同浴場に行ったものです。

 

 

「作業場と浮桟橋」  雪の残る夕闇の光景でしょうか。  モノクロの写真ですが、光と陰の対比がより鮮明です。

 

 

「地下道」  前にでた写真と同じ地下道ですが、この写真ではバケツを持った女性が写っており、生活感が漂っています。

 

 

「アパート俯瞰、昼景」  人口密度は凄い数値なのでしょう。 数年前のトルコ旅行で蟻の巣のような地下住居
             を見ましたが、それに匹敵する近代の地上の穴倉住居ですね。 

 

 

 

「アマリリスのあるバルコニー」   私の育った筑豊では、炭鉱社宅は長屋形式でしたが、狭い島なので高層?アパートが必然。                            

 

 

 

「端島神社」  島の岩礁頂部にある神社も、狭い場所に建っているのでこんな構造に

 

 

「軍艦島全景」   最初に出た全景は昼間でしたが、黄昏時でしょうか。

 

 

 

次は桜島の黒神村シリーズです。

 

 

 

 

「壊れた水道管(エタニット・パイプ)」   溶岩が住民の生活の場に流れ込んだ、凄まじい自然の力ですが、それでも人々は、ぎりぎりまで、畑を耕し
                      生活している。 奈良原も人間の強さへの驚きを感じながら撮っているようです。       

 

 

「むしろの扉」  貧しい生活を撮ることではないのは、子供の表情を見るとわかります。

 

 

「露天風呂」  今でいう露天風呂の風流など微塵もありませんが、子供の表情が明るい。
        奈良原と子供のコミュニケーションが感じられます。

 

 

 

「破れた野良着」   野良着だからボロボロでも不思議はないのですが、燃え残った野良着に思え、
           自然と人間の関係まで写しているように感じます。  

 

 

「夜の溶岩」   一見、航空写真かなと思ったのですが、固まった溶岩流の端を、下から撮っている
         のですね。  いろんな風に見えます。

 

 

「月の出の入江」   奈良原にしては珍しい、叙情的な写真。  美しい

 

 

「埋もれた鳥居」   有名な事実なのですが、それを越えて子供達の元気な姿があることを、撮りたかったのでしょう。

 

 

「晴れた日」  噴煙をあげ活動している桜島岳と、杖をついた老婆の対比は力の対比などではなく
        人間も自然も一体化したものとして生命の素晴らしさを表現していると思います。            

以上の写真は、簡単に撮れるものではありません。
何よりも、鋭い感性が必要ですし、足掛け2年をかけた労力や、費用も大変だったでしょう。
奈良原一高の情熱が詰まった作品に深く敬意を表し、後世に残る傑作写真集と賛辞を送りたいと思います。

なお、奈良原一高の作品「王国」は2階の企画展で展示されていますが、撮影禁止のため紹介できません。

ただ、2011年6月17,18日のブログで紹介したものがありますので、リンクをはっておきます。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« クインテットⅡ 五つ星の作家... | トップ | 部屋に絵画(川田祐子作品)... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アート 写真」カテゴリの最新記事