取替原価(replacement cost)という概念を持ち出してくるが若干の違和感が残る
一般理論該当箇所には「同型資本もう1単位の期待収益とその1単位を生産するときの費用との関係から、その型の資本の限界効率が与えられる」とあるように、過去の期待収益から導かれる資本効率と今同型資産を購入するときの期待収益の二つがあり、取替原価に対する期待収益が資本の限界効率だと言っている。
だが、同型資産の取替では所得は増加しないので限界効率を導くこともできない。ここで更新だ取替だといっては、のちのパラグラフ(限界効率の低下)と矛盾する。本文中にあるように「耐用期間を通じてその資本資産から得られると期待される収穫によって与えられる、年収益系列の[割引]現在価値を、その資産の供給価格にちょうど等しくするところの割引率が、資本の限界効率である」で十分通じる。
ただし訳注通り、ここでケインズが扱っているのは投資の限界効率だが、実際に投資がなされると資本の限界効率となる。次のパラグラフで正確に説明される。
「資本の限界効率は、[投資の]収益に対する期待と資本資産の現時点における供給価格によって定義される」
資本の限界効率は投資が増加すればするほど低下し、現行利子率まで低下する。逆に言えば、そこまでは投資が進む。これは有効需要の原理で解明したことである。
ここでケインズは、資本の限界効率を追求しているので期待収益は下がるだろうし資本資産の供給価格も上がるだろうと言っている。ここでのケインズのreplacement costという言い方はおかしい。
資本資産の追加一単位の供給価格(=取得価格)というべき。これは前章から使用価値=投資の文脈でも感じたことだが、ケインズが直面していた現実から、まったくの新規投資は考えられず、むしろ資本装備が劣化していくにまかされている状態から理論構築をしているので取替価格となっているのだろう。
全くの新規投資を導入しても理論的には同じとなる。
全くの寄り道だった。