tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『ワンダ』

2013-10-19 22:40:31 | 映画-わ行
 監督・主演のバーバラ・ローデンは、エリア・カザン監督の二番目の妻で、1970年に初監督作品『ワンダ』を撮った後、若くして病気で亡くなったという。


 この『ワンダ』の不遇。
 
 当時のフェミニストたちから総スカンを喰らったらしい。強い女、というのは痛々しい(と今、悪口を言ってみる。もちろん強い女と言うのは当時のフェミニストたちのことだ。)
 そしてアメリカ本国では公開もされず、黙殺の憂目に。ところが当時フランスで上映されると、批評家から高い評価を受け、マルグリット・デュラスも絶賛。しかしフランスでも公開には至らない。90年代、この作品を観た女優のイザベル・ユペールが惚れ込み、個人で配給権を買う。とうとう公開にこぎつけたところ、高く評価されて、ついにDVDも発売。
 アメリカでは今もDVD化されていないって、本当だろうか。

 日本ではどうだろう。

 DVD日本語版は未発売。
 フィルム自体は、2009年、東京日仏学院で上映される。そして2011年、横浜の北仲スクールのイベントにて上映。

 今回私は、グッチ・シネマ・ヴィジョナリーズという活動の一端、グッチでの無料上映会で観ることができた(誰でも観られるし、まだやってる)。私に分かるのは以上の三回のみで、他にもあるかもしれないけれど分からない。

 正直これまでこの作品のことを全く知らなかった。「何も欲しないことは、死んでるも同然だ」。しかしワンダは、不思議なことに生きている。他人事には思えない。
 監督本人は、女優さんである。一つ言えることは、欲しない人にはこの映画は作れないだろう。バーバラ・ローデンという人はどんな人だったんだろう。興味がつきないけれど、残念ながらあまり情報も見つからない。

 一日でも早く日本でも、日本全国で、劇場公開されないものだろうか。公開されてほしいという切なる願いを込めて、書いてみる。こんなところでも。製作から43年後の日本においても、ワンダの浅い息づかいは途絶えることなくそこここに聞こえるし、ワンダは、私にとっては魅力的だからだ。



      

『わたしはロランス』

2013-10-06 20:16:47 | 映画-わ行
 面白い映画がたくさんあり過ぎて、興奮しっぱなし。

 怒涛のビジュアルにくらくらした。直線と原色の80年代。監督はまだ生まれていないはずだけど。
 現在24歳、撮影時に23歳の誕生日を向かえたらしいグザビエ・ドラン監督、10年間の愛の物語は、彼が産まれた年辺りでとりあえず終わる。

 ここまで人に執着することが出来るだろうか。
 自分が産まれてから、親や兄弟や周りの友達や親戚や、自分を形づくったほぼすべての人とものに愛着があるけれど、いつもそれが受け入れられるとは限らない。ゆらゆらと動いて、行ったり戻ったりを繰り返して、たまたま再会するしかないような気もする。再会しないかもしれない。それでもいいのかもしれない。でもよく分からない。やっぱり執着するのかもしれない。
 即座に共感するには、登場人物たちは私からはあまりにも遠い。それでも心の中に、美しい箱庭のようなものを置いてもらったような感じ。この物語はまだまだ続く。(たぶん)

 グザビエ・ドラン監督、2012年、カナダ・フランス。

     

『ワールド・ウォー Z』

2013-08-23 23:16:33 | 映画-わ行


 面白かった。

 『アウト・ブレイク』のような、細菌もしくはウイルスによる、世界崩壊の日の話。

 ブラッド・ピット演じる国連捜査官のジェリーが、活躍する。スーパー・ヒーローじゃないのが良かった。
 特別な訓練を受けてるわけではなく(少しは受けてるだろうけど)、経験と勘と判断力と、あとは運という、いわゆる生命力みたいなものだけで、状況を乗り越えていく。
 何と言うか、曖昧だ。わりと、全体的に。

 どこもかしこもぼんやりとしたまま、主人公のジェリーが体験していることが、観客にとってもほぼ全てになる。目の前は鮮烈。ジェリーだってあまり分かってないのだ。捜査に出るくらいだから。それが良かった。話も映像もシンプルで脇道にそれず、見やすい。観ていて出し抜かれるようなところがない。
 そしてジェリー(=ブラピ)に連れられて、ゾンビの元を探る旅に出るのだった。

 集団ゾンビはほんとうに凄かった。何せ、速い。ゾンビになるのも、ゾンビになってからの動きも。異様に速い。壁を超える人柱、芥川龍之介の『蜘蛛の糸』みたいだと言ったのは旦那だけど、これが見たかった。

 ブラッド・ピットはお父さん役が似合うなあ。悲しげな目をしたお父さんが。
 家族愛というのを一つの鍵にしたのは、ブラピの出演が決まったからなんじゃないか。個人的には、冒頭の「おい、流しに皿を下げろよ」、と言うところが好きだ。『ツリー・オブ・ライフ』(テレンス・マリック監督、2011年)の厳格な父親役よりも、こちらの「正しく優しい」お父さん役の方が、安心できる。余り喋らない方が、悲しげな目が引き立って、私は嬉しい。

 もともと三部作の予定だったそうで、続編の話題がもう出ているらしい。楽しみ。

 マーク・フォースター監督、2012年、アメリカ。
     
    
 
     

『ワイルド・スピード EURO MISSION』

2013-07-17 20:00:42 | 映画-わ行
 面白かった。スカっとした。最近ヒーローものも、アクションものも、ちょっと暗いのが多いけど、全然そんなことなし。

 カーアクションは、いつ見ても凄い。ほんとに??まじで?ギア・チェンジ、バン!バン!ってめっちゃ速い!!あ、車が飛んだ!人間も180キロ位のスピードの車から、180キロ位のスピードの車に飛び移ってる!!轢きそうで轢かない!!!あっ戦車が!戦車すごい!!!戦車!すごい!!!!!でももっとこっちすごい事に!

 という合間に、人間対人間の格闘シーンも、凄い。

 ギアの音と、エンジンの音、そして拳の音が耳の中でがなる。
 IMAXで観て良かったです。私は(ケチって)「普通でいい」と言っていたんだけど、旦那の熱意のIMAX。本当に良かったと思う。ありがとう、旦那。

 ストーリーは、これまで(第1作から第5作まで)何となく足元おぼつかない感じがしていたのが、集大成。ここへ来てようやく一つにまとまった感じが。主題が決まって見やすい。登場人物青少年限定の映画だったのが、これからは幅広い年齢層へ広がる大きな土台が見えてきた!ということは、先が見える。光が見えます。
 そして今回はアメリカ合衆国の国家権力をバックにする。もうやりたい放題、怖いものなし。街の走り屋から、集団強盗、追われる犯罪者、そしてとうとう、国家権力。スケールががくんと大きくなった。敵も大きくなってるけどね。
 けれども登場人物たちの類まれなる才能と、類まれなる純朴さは、どこまでも裸一貫の拳と、車一台のアクロバットに集約される。

 ご都合主義も、どうでもいい。笑いとばせます。めっちゃいい笑顔で親指を立ててウィンクするほど。

 あと、最初から最後まで、ビン・ディーゼル演じるドミニク・トレットがガレッジセールのゴリにしか見えませんでした。

 
 ジャスティン・リン監督、2013年、アメリカ。
 
   

『ワン・プラス・ワン』

2013-06-10 20:17:21 | 映画-わ行
 ジャン=リュック・ゴダール監督の、1968年、ドキュメンタリー映画。イギリス。

 ローリング・ストーンズが、スタジオで新曲「悪魔を憐れむ歌」のレコーディングをしている。1カット1シーンで、今度はブラックパワーなる黒人闘士たちの様子。こちらはフィクション仕立て。そしてレコーディング。それから…。
 レコーディング風景が面白かった。なにしろずっと撮っているから。

 これはドキュメンタリーなんだろうか。すみずみまで、時代の意識なり、ゴダール監督の意識に満たされている。

 ラストシーンが極めつきだ。
 砂浜で、何かの撮影をしてるんだろうか。撮影用のクレーンが高く高く昇って行く。空と海に包まれ、これからどんなシーンが撮れるんだろう。冒険が始まるんだな、と思った。



  
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