『好きにならずにいられない』、ダーグル・カウリ監督、脚本。2015年、94分。アイスランド・デンマーク合作。原題は、『Fusi』。
主人公フーシを演じるのは、グンナル・ヨンソン。
脚本は、俳優ヨンソンを念頭に書かれたそう。あんなにシャイではない、とヨンソン氏はインタヴューで言っているけど。
「フーシ」には、不思議な魅力がある。
いざとなれば行動力もあるし、真面目で、暮らしていく術もこころえ、手先も器用、自分の感情も把握していて、俯瞰で見る客観性も備えており、腕力もあるし、友達もいる。
そんな何の問題もなさそうな男が、優しさ故に周囲のちょっかいを受けている。
周りの世界のちょっかいに取り合わずに生きてきたフーシが、「恋」によって揺れ動き、新たな世界に一歩を踏み出す…。
そんな話だ。
あちこちに手を出しては引っ込める、周りの人物達のせわしなさも描かれる。妙にリアルな(身に覚えのある)落ち着きのなさが、フーシの魅力を引き立てる。
容姿コンプレックスから自分の世界に閉じこもる男。いや、違う。出来る男「フーシ」は、上昇志向を持たない。
高く高く空を飛びたいとは思わない。
空港で働いていても、飛行機に乗りたいとは思わない。
可視化された「ただ存在することの安心感」、とでも言えばいいのだろうか。せわしない判断を放棄して、「ただ在る」事を、その大きな体と重みで正に「体現」しているようにも見える。
この新しい「ヒーロー像」が、北緯63度から66度に位置する北の国アイスランドから届けられた。
「北欧インテリア風」なポップでかわいいラブコメかと思うと、全く違う。
あまりに暗い音楽と、薄曇りの空と吹雪の夜が印象的な、世間から一つ突き抜けた、「ニューヒーロー」を描いた話である。
「ニューヒーロー」の誕生。監督の意図をもし探るのなら、私ならそう結論しよう。
フーシ、君のような人が増えたなら、世界はもっと幸せになれるのにー
(by フランシス・フォード・コッポラ)
趣味はジオラマ(第二次世界大戦の戦闘を再現すること)↓親友も夢中。
さて、恋の行方は?↓続編も観たい!
ジャケ写詐欺と言われても仕方ないくらいのポップ加工(笑)↓でも作品自体は面白かった。
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