tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『ラブ・ストリームス』

2013-03-30 16:57:13 | 映画-ら行
 「ジョン・カサヴェテス レトロスペクティブ」という特集上映。最後の一本を観に行く。

 「愛は流れるもの」、「止まることはない」、と言うサラの愛は、行く先を失う。馬やヤギ、鶏、犬を買い込むというような奇矯な行動を繰り返した後、夢と幻想に押し流されるようにして、弟の家を出て行く。
 終盤、たびたび出てくる、サラの夢のシーン。一つの狂気ではあるけれど、だけど温かい。たぶん、誰にも分からないのだ。愛の流れの行く末なんて。分からないことを、分からないと描いて、何も悪いことはない。

 この映画が、温かい思えるのは、ジーナ・ローランズ演ずるサラを肉親として描いているからだろう。ジョン・カサヴェテス、自らが演ずる弟も、奇矯と言えばかなり奇矯だけど、姉であり弟である二人の間の、感情の流れはおそらく絶えることはない。監督は、サラを単なる一人の女として描くにはしのびなかったんだろう。そう思うことにしよう。

 もっと熱い想いを持って観終わったはずなのに、感想を書いてみたらどこか白けた感じになっちゃったし。

 1987年、アメリカ。

『塀の中のジュリアス・シーザー』

2013-03-27 20:37:09 | 映画-は行
 すごい映画だなあと思った。
 どの部分が現実で、どの部分がフィクションなのか、舞台なのか、刑務所なのか、現在なのか、ローマ帝国なのか、分からなくなってくる。
 パオロ&ビットリオ・タヴィアーニ監督による、2012年・第62回ベルリン国際映画祭金熊賞、受賞作品。

 ローマ郊外にあるレビッビア刑務所で、演劇演習としてシェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』が上演されることになる。囚人たちを集めたオーディションの様子から、刑務所内の様々な場所での、練習風景。役にのめり込み同化していく囚人たち。それを眺める囚人たちもまた、次第に観客そのものとなっていく。そしてついにはローマ帝国の住人となり、目の前にキャシアスを見、ブルータスを見、アントニーの話を聞く。

 喝采、怒声。友情、裏切り、野心、企み、闘い、絶望。シェイクスピアによって書き込まれた様々な感情が、刑務所から舞台から洪水のようにあふれ出て、私たちもそこへ巻き込まれて行くのだ。
 囚人たちが帰るのは、監房だった。一人の囚人が、「演じることを知ってからは、監房は牢獄になった。」と言う。演じることで自由を知ったのだろうか。目の前の人生や、監房の生活はただ一つの現実ではないと、彼の日常は横にずらされたようだ。それを観る私も、関節はずしのような憂き目にあう。2012年、イタリア。



『セイジ 陸の魚』

2013-03-25 21:23:33 | 映画-さ行
 予告を見た時、「陸の魚」とは、ずいぶん息苦しい副題じゃないか。陸の魚は、すぐに死んでしまうに決まっている。そんな男とはどんな男なんだろう?どんな話なんだろう?と思った。(もちろん原作は読んでない)

 伊勢谷友介監督は、ずいぶん多才な人みたいだ。全然知らなかったんだけど。今も知らないんだけど。

 無駄なことはしない人なのかもしれない。主人公とセイジ以外の登場人物は、わりとカリカチュアされているというか、わかりやすい人たちだ。舞台となる喫茶店も、国道も、山や湖でさえ、作りこまれた物語の一部として、ファンタジックでもあり、安心感がある。観客はそのような世界と、セイジの世界を行ったり来たりさせられる。主人公と一緒に。
 良くもないけど、悪くもない。そういうところに安住できない男なのだなあ、と思った。そう思うためには、安住できそうな、良くもないけど悪くもない世界が必要なのだ。

 そして事件が起こり、魚は跳ねて水へ戻る。その後のラストはわりと納得いかない。2011年の映画。

セイジ -陸の魚- DVD

『アルバート氏の人生』

2013-03-23 21:34:36 | 映画-あ行
 製作、主演をつとめた女優さんのグレン・クローズのインタヴューを読んだら、「究極のところ、これはサバイバルについて、そしてアイデンティティについての物語なの。」と仰っている。

 出演者(たいてい主演)のインタヴューをついつい読んでしまうんだけど、読むと自分の思っていたことと違うことを言っていることが多くて、「ハズレ」なのか?と思ってしまう。
 設定の奇抜さを横に置けば、地味な映画だと思う。ただその地味さが、深まり広がりを持つのは、アルバート氏の夢が次第に現実を離れ、一人歩きしていくところのように思う。哀れでもあるけれど、ラストがあるからいいじゃないか!アルバート氏の夢、妄想、人生は、現実を動かした。
 サバイバルと言うなら、アルバート氏は見事にサバイバルしたように思えば、後味のよい映画だった。2011年、アイルランドの映画。ロドリゴ・ガルシア監督。

始めました。

2013-03-20 21:27:30 | 日記
 主に映画の感想をと思ったけど、そうじゃないことになりそうな気が。
 はたして初投稿から。

 ブログをするのは三回目。2,3年やってはやめてを繰り返し、また始めました。あ、ちがうわ、ブログの会社が三つめだ。(どうでもよいですが。)
 ブログって、起承転結がないように思う。
 一つ一つの記事にはあるのかもしれないが、ブログをずっと続けて行くうちに、このブログはいつ終わるんだろう?と思い始める。春が来て、夏になり、秋が来て、冬になる。
 そう思い始めると、やめどきなのかな、と思う。
 数々の放置されているブログは、そういうことなんだと思っている。(削除されてしまったブログも)

 あらま、始めたばかりで、終わりのことを書くなんて。