tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

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『グリーンブック』…ブレない二人の友情

2022-09-12 00:23:26 | 映画-か行

 『グリーンブック』、ピーター・ファレリー監督、2018年、米。130分。原題は、『Green Book』。

 

 「グリーン・ブック」をご存じだろうか。

__「黒人ドライバーのためのグリーン・ブック」。アメリカ合衆国による人種隔離政策時代の1930年代から1960年代に、自動車で旅行するアフリカ系アメリカ人を対象として発行されていた、旅行ガイドブック。郵便集配人だったヴィクター・H・グリーンにより1936年に創刊。(Wikipediaより)

 

 この作品は、体裁はロード・ムービー、背景は、1962年における人種差別問題である。

 しかしいわゆる人種問題をテーマとした社会派作品とは異なり、二人の全く異なるキャラクターの出会いと交流に時間が割かれる。したがって内容的には「普遍的なヒューマン・ドラマ」が近いと思う。

 

 

 主人公の一人は、天才黒人ピアニストのドン・`ドクター’・シャーリー。もう一人は、ブロンクス生まれのイタリア系アメリカ人、トニー・リップ。

 二人とも実在の人物で、実話が元になった作品。

 

 トニーの息子、ニック・バレロンガが脚本に参加している。彼は、「父の話を全てテープに取った」らしい。

 トニーの本当の名字は、バレロンガ。口が上手いことから「リップ」の異名をとったという。そんな父親のする思い出話はさぞかし面白かったんだろう。幼い頃は目をきらきらさせて、大人になってからはテープを用意し、聞き入る息子の姿が目に浮かぶ。

 息子のニックは監督、脚本家、俳優を務める映画業界人なので、いつか映画にしようと思っていたんだろうな。

 主人公は、ご両人とも2013年に他界している。

 

 

 作品に話を戻すと、この二人のキャラクターが本当に素敵だ。

 親しみやすさから言えば、下町育ちのトニーに分があるかもしれない。何せ、片やカーネギーホールに住み(!)、心理学博士でもある天才ピアニスト。たやすく同一化は出来ない(笑)

 「(こう言っては何だけど)ザ・ガサツ」と「ザ・繊細」のコメディ風の掛け合いは、ファレリー監督のお家芸でもあり、テンポも良く真骨頂。

 ちなみに自己肯定感の高さで言えば、二人は似たもの同士である。

 

 そして会話の言葉がシンプルなだけに、表情や、一挙手一投足から目が離せない。

 「君の世界は狭い」と言ったドンの心。「暴力ではなく、品位を保つことが勝利だ」と言い放つ強い目。ピアノを弾くドンを満足そうに見守るトニーの表情。そしてラストシーン。

 

 二人の役者さん、ヴィゴ・モーテンセンと、マハーシャラ・アリに拍手と感謝を送りたい!

 

 

 第91回アカデミー賞、作品賞/助演男優賞(マハーラシャ・アリ)/脚本賞受賞。主演男優賞(ヴィゴ・モーテンセン)/編集賞にノミネート。

 第76回ゴールデングローブ賞、最優秀作品賞(コメディ/ミュージカル部門)/最優秀助演男優賞(マハーラシャ・アリ)/最優秀脚本賞受賞。最優秀主演男優賞(ヴィゴ・モーテンセン)/最優秀監督賞にノミネート。

 その他、トロント国際映画祭観客賞など50賞を受賞。

 

 

ケンタッキーと言えばフライドチキンだろ!フライドチキンは手で食べるんだ!(byトニー)↓

 



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (a0qza1548)
2022-09-16 11:56:11
人種問題と育った環境の違いと各々の心持ち。
徐々に深まっていく二人の友情。
とても心暖まる映画でした。
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Unknown (tkyonsen)
2022-09-16 15:13:00
a0qza1548さん

コメントありがとうございます^^

同感です。
二人の飾らない率直さも印象的でした。
何度も観たくなる映画ですね。
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Unknown (くぁんみぃ♡)
2022-09-25 05:02:19
おはようございます。
リアクションを頂き、ありがとうございました。😊

グリーンブック、最初は尻込みしていたんですけれど。。。
観たらばっ!とっても、良い映画でした。😊

黒人でも、裕福な黒人で、畑を耕して生活している同類とは違う。。。
そして、どんなに博識で気品があっても、白人社会では、受け入れられない。。。
究極は、自分はゲイであり、男性しか愛せない。。。

そんな、多様性に溢れる自分を、人として助け続けてくれた。。。 イタリア系白人のトニー

少しずつ… 剥き出しになっていく2人の感情から、次第に芽生え、深まっていく友情に、ただただ心が揺り動かされ、温まりました。
観て、本当に、良かった映画です。😊💕
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Unknown (tkyonsen)
2022-09-25 09:24:22
くぁんみぃさん

コメントありがとうございます。
私も最初は特に意気込みもなく観た映画なんですが、とても好きな映画の一本になりました。
お互いの心が少しずつ動いて行く様、最後はキャラクターを越えて一人の人間として、こちらに届いてきますね。
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Unknown (iinna)
2023-08-16 09:46:55
図書館で上映するというので、作品名も知らずに参りました。

フランス映画「最強のふたり」では、白人が雇用主で雇われるのが黒人でしたが、「グリーンブック」はその逆パターンでした。

マハーシャラ・アリのピアノ弾き方も光ってました。そんなことはない乍ら、当人が弾いているのかと思ったくらいです。

「グリーンブック」が黒人用旅行ガイドだとは、ラスト近くで知らされました。
https://blog.goo.ne.jp/iinna/e/010ba536da6af12be0b98b3f5c162cc6
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Unknown (tkyonsen)
2023-08-16 21:03:16
@iinna iinnaさん、こんばんは^^
人種差別の複雑な様相を描いた作品でした。
アリとモーテンセンの息がぴったりでしたね。二人とも成り切っていて、アリは本当にスノッブなピアニストに見えましたが、別の作品では薬のディーラー役をしていて、そちらも板に付いていました。良い役者さんですね。
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