tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『テスラ エジソンが恐れた天才』…夢への距離

2022-08-13 22:31:01 | 映画-た行

 ニコラ・テスラ、1856-1943年。セルビア生まれ、ニューヨークにて没。

 

 一応、事実と言われていることを元に作られているようだけど、少し変わった伝記作品だった。

 「孤高の天才」というのは、確かに描きずらそう。「饒舌な天才」だったら違ったかな。

 

 それはともかく、「夢への距離」ということを考えた。

 

 ニコラ・テスラが頭の中で考えていることは、人に説明し、人を納得させるのには少し難しいことだったのかもしれない。

 性格は潔癖症で、人を寄せ付けない。それも別にいいんじゃないかな。

 

 でももうちょっと目の前の幸せを感じられる質だったら、良かったのにな。と凡なる民は思った。

 知らないけど(笑)

 

 好きな人の手を取り、雲を眺め、花の匂いをかぎ、ああ今日も幸せだな~とビールを飲む。もしくは一人で我が城に籠もり、ゴロゴロしながら、大好きな柿の種をお腹いっぱいまで食べる。(これは今日の私…)

 

 86年の生を全うした、偉大な発明家。ノーベル賞候補にもなった彼は、Wikipediaによれば、最後はホテル暮らしで、ほぼ無一文だったとのこと。

 ありがとう、ニコラ・テスラ。多分、割と幸せだったよね。

 

マイケル・アルメレイダ監督、2020年、米。103分。原題は、『Tesla』。

出演は、イーサン・ホーク、カイル・マクラクラン、イブ・ヒューソン(U2のボノの娘さん)、などなど。

 

 

 

 


『トップガン-マーヴェリック』_冒頭のトムの背中

2022-06-27 23:39:47 | 映画-た行

『トップガン-マーヴェリック』、どうして何度観ても楽しいんだろう?

 

とてもシンプルな映画で、そこが良いところと言えば良いところ。

 

シンプルなんだけど、足りないところがなく、かつ無駄なところもない。全てがある。

体験したことのないものを見せられているんだけど、何かを体験してる。

こんな美しい映画ある?

 

 

自制心と緻密さをきれいにエンターテインメントど真ん中にぶち込んだ、素晴らしさよ。

考え抜かれ、練り上げられた上で、情熱という見えないブースターにより投げ込まれた。

手を抜かない完璧さも見応えがあるけど、さらに超える、これは何?

 

マーヴェリック・ブログ三回目の(自制心に欠けた)私が言うのもなんなんだけど、美しいとしか言い様がない。

という訳で、自分の好きな冒頭シーンを思い出に書いておこう。

(以下ネタバレがありますのでお気をつけください。)

 

 

前作をなぞるように始まる、冒頭。

 

鐘の音。流れるアンセム。鐘の音。TOP GUNの文字。小さい鐘の音。MAVERICKの文字。

空母から離陸する戦闘機と、艦上で動く人たちの絵。Danger Zone。

逆光。

 

ここいいですねぇ。。

 

それから暗転。

ドアが開けられ、光が差し込む格納庫が見える。

手前に浮かぶ、背中の影。

格納庫へ降りて行く、逆光の背中。

 

トム・クルーズ!

 

トーーム・クルーーーズ!

 

もう背中の輪郭が、トム・クルーズ。

真っ黒な影なんだけど、あのシルエットはまごうことなきトム・クルーズ。

その瞬間私達は、パズルのピースがばちりとはまったのを目撃した。

 

背中でね、しかも真っ黒な逆光の背中(と耳)のシルエットだけで、冒頭のノスタルジーと期待にさまよっていた私達の心を、一気に掴んで「No problem!」と持って行くってどんだけ凄いのトム・クルーズ。

 

(私達って勝手に言ってますけど、まあ私です。)

 

映画が動き出すのにはトム君の背中で十分だった。

 

 

そしてダーク・スターのシーン。

 

 

その後は、これでもかこれでもかと観客の願いを完璧に、万遍なく(意識していないものまで含め)、「はい、どうぞ」「はい、どうぞ」と次々に叶えまくって行くというのが、この映画です。

 

信じられない!

 

 

空母から離陸!↓

 

F18で練習しましょうのシーン↓

 

トム無双のシーン↓二機の間に突っ込むところ。

 

…マーヴェリック・ブログ、もう最後にしよう。


『トップガン-マーヴェリック』_情熱と緻密さと

2022-06-15 22:56:14 | 映画-た行

 結局、4回観に行っている。

 

 別に私だけではなくリピートしている人は沢山いると思うんだけど、一つ言えるのは、トム・クルーズが窓から飛び降りるシーンでは毎回笑いが起きる。

 何回観ても、上映前からワクワクするし楽しい。映画館で上映しているうちに、後2回は観たいです(笑)。

 

(前回のマーヴェリック記事はネタバレなしでしたが、今回はネタバレがあるので、これから観るという方は気をつけてくださいね。)

 

 YouTubeを見ると沢山の方が「歓喜の声」を上げていて、映画館にいない時は暇さえあればそれを見て、熱い気持ちを共有している(笑)。

 それも面白いんだなぁ。勿論色んな人がいて色んな表現をしているけど、とにかく「傑作」であると。結局はそれしかない。

 言葉を失う「傑作」。

 

 

 一つ小賢しい言い方をすると、この映画はメタ構造である。

 意図している部分も勿論あるだろうし、映画、特に「何かの続編」は大抵そういう性格を持ってはいる。けれどこの映画の強さは、そんな誰かの「意図」などを超えた無限の広がりを感じさせるところで、そこで、言葉を失う。

 無限…? そこは私の主観ですよ(笑)

 

 語れるとすれば、まず「前作」との比較。そして「トム・クルーズ」という俳優、映画人(むしろ一人の人間を超えた現象、概念と言っても良いかも)。それから「映画を観る」という体験について。まだあるかな。

 でもそれらを語ることは全く、この映画を語ることにはなっていない。むしろそれらを語らせない、圧倒的な強さを一番手前の層で見せてくれる、それこそが私が『トップガン-マーヴェリック』の一番好きなところだ。

 

 

 次は「ヨットのシーン」について書こうかな。

 忘れないようにここにメモしておこう。

 何せ個人の解釈や感想なんてミジンコみたいなもので、まあまあどうでも良いんだから。

 

 

 ん?ネタバレしなかったですね。

 

 

前作でもあったバイクでの疾走シーン。ほぼ同じです!↓

 

ロマンスの相手役、ペニーとの二人乗り。こちらも相手は違うけどほぼ同じ!↓

 

『トップガン-マーヴェリック』、ジョセフ・コジンスキー監督、2022年、アメリカ、131分。原題『Top Gun : Maverick』。

 

 


『トップガン-マーヴェリック』_Don't think,just do.の極意

2022-05-31 22:41:10 | 映画-た行

 待ちに待ったトップガンの続編が公開となり、昨日観てきました。

 

 期待がマックスまで高まり、胸が張り裂けんばかりに膨らんでいた私。

 そしてもちろんトムくんは、期待をあっさり超えてきたのでした。

 

 ここは、109シネマの「4dx Screen」。

 椅子が揺れたり、風が吹いたり水滴が飛んできたりするあのシートです。

 スクリーンが左右にもあり、人間の視界を網羅しています。どういうことかと言えば、焦点は前方に合っているのだけど、うっすら入ってくる左右の景色も映画の中というわけです。

 普段は好んでこのタイプで観ようとは思わないのですが、今回はやはり4dxを選びました。吹き替え版です(4dxは基本的に吹き替えのみです)。

 

 結論から言えば、お昼に観た「4dx Screen」吹き替え版と、夜に観た「IMAXレーザー」字幕版、どちらも楽しめたけども結構印象が違ったな、ということです。

 

 ちなみに「IMAXレーザー」は、既存の「IMAX」システムに加え、さらに「4Kレーザー」の超高解像度映像を新しく実現したとのこと。

 十分に迫力があるので、字幕版が良いという人はこちらをどうぞ。

 

 

 ちなみに今回私は、吹き替え版と字幕版を同日に観たので、比べることが出来ました。字幕版の良さは、まずは演じている俳優さんの声で台詞がそのまま聞けることですね。いつもはどちらもあるなら字幕版を選ぶのですが、今回は吹き替え版も結構良かったかなと思いました。最初に観たのが吹き替え版だったというのも、印象に影響しているかもしれません。

 それでも吹き替え版の方が台詞のキレが良いというか、端的でスマートにニュアンスが伝わってきたかなという印象です。行間の歯切れの良さについては、(個人的な印象ですが)吹き替え版に分があったように感じました。

 日本語いらね~という方は、字幕版でどうぞ!

 

 

 4dxに関してですが、

普段から「4dx好き」という方はそのまま着席していただくとして、「あんまり好きじゃない」という方や「体験したことがない」という方には、この作品こそが4dxの為に作られた作品と言っても過言ではない、ということお伝えしておきます。(ただ、4dxというアトラクションが無くても楽しめるとは思います。)

 

 内容に関しては、まだ始まったばかりのロードショーなので控えます。

 というか本音を言えば、自分の頭の中が全然まとまらないのです。胸が熱いばかりです。

 ただ、それで良いのだと思います。何かを分析したり、考えたりする映画じゃないはずですよね?そう、

 

 ”Don't think,just do."

 

トム・クルーズ氏に、そして膨大な時間と労力を掛けてくれた10,000人を超えるという偉大なスタッフに、全ての出演者、プロデューサーのブラッカイマー氏に、心からありがとうとお礼を言いたい気持ちです!

もう、「これは凄い…」というシンプルな感想で終わりにしたいと思います(笑)

後3回くらい映画館に行ってしまいそうです。

 

原題 Top Gun: Maverick、131分、ジョセフ・コジンスキー監督、2022年アメリカ。

 

 

余談ですが、映画館に行く前に見た岡田斗司夫さんのYouTube動画。参考になったので(前作を解説しつつの、戦闘機や米海軍との撮影話など)、良かったら。貼っておきますね。

 

【UG# 418】2021/11/14 『トップガン』徹底解説~ようやく公開される『トップガン マーベリック』を見る前に履修しておきたい基礎講座

 

 


『Diner ダイナー』、言い切り型のお伽話。

2019-07-12 23:14:47 | 映画-た行
 『Diner ダイナー』を観に行った。

 
 蜷川実花監督。

 原作があって、平山夢明さん。2009年の小説で色んな賞をとった人気小説らしい。漫画化もされている。

 なんで観に行ったのかな。
 ドキュメンタリーとアニメ以外の邦画を観に映画館へ行くことは、最近滅多になかったけど。


1.藤原竜也の歌うような叫び(?)から始まる予告編が異様だった。

2.原色に作り込まれた舞台。食堂。

3.原作を読んでいないので話の筋は全く知らなかったけど、客が全員殺し屋らしい。

4.殺し屋ってどんな人物像か考えてみたことは皆無だったけど、どうやら殺し合いにあまり躊躇のない人達らしい。(自分が死ぬことには恐怖を覚える。)しかしここはダイナーなので、殺しに来てるわけじゃなく、別ルールがあるみたい。しかも王がいる?

5.藤原竜也に好感を持っている。


 以上、観たくなった理由をあげてみました。


 面白かった。

 お伽話だと私は思う。
 人の頭の中は、最高の覚悟を持ったお伽話だ。それをとても素敵な形で見せてもらえて、幸せ。

 蜷川監督にとっては、これがたとえば牛若丸の物語でも良かったんじゃないかな。

 見ている私としては、それでも良い。
 とにかく色々なものを言い切り型で皿に載せて出してもらった感じがする。
 ご馳走さまでした。
 私も言い切り型で応えよう。




ダイナー (ポプラ文庫)
平山夢明
ポプラ社



DINER ダイナー 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
平山夢明,河合孝典
集英社




『トランセンデンス』

2014-07-19 20:55:50 | 映画-た行
 単刀直入に言うと、レベッカ・ホール演じる妻に振り回されっぱなし、という話なんじゃないだろうか。
 夫のウィル(ジョニー・デップ)が、「アップロードして欲しい」と言ったわけでもないし。

 二度殺される身にもなったらいかがか。ジョニー・デップはそれでも優しく(何かが欠けた優しい人、というのが定番である)、二度目は妻を看取るわけですが(ネタバレすみません)。

 それはそれで良い話です。

 そこで大作などと言わずに、B級SF=「ある夫婦の話、しかし設定がちょっと奇天烈」という感じだったら、私は楽しめたような気がする。そうだったら多分面白いです。
 


 ところで製作総指揮のクリストファー・ノーランの書いた記事こちら→ WSJ7月9日「映画館は生き残る」
 
 映画館は、スマホとの差別化に汲々とし、デジタル化により公共テレビのような性質を持つ(byクエンティン・タランティーノ、客の入りによってチャンネルをすぐに変えられる、チャンネル権は映画館主か映画配給会社)。
 その後、とびきり大きく、とびきり美しい場所として、人々に壮大なスペクタクルの非日常を提供するようになるだろう。スペクタクルだけではない、人々を何時間も惹きつけておける独創的な作家を生み出す土壌にもなるだろう。

 
 …みたいなことを言っている。

 映画は常に、another storyである。
 製作側が組み換え、組み直し、解釈をし直し、または解釈を創造する、(ここではない)ある物語だ。観客もそれぞれに解釈を創造しているので、隣の人が何を思って観ているのか分からない。
 面白さで言えば、壮大だろうと壮大じゃなかろうと、独創的だろうと独創的じゃなかろうと、私にとってはどちらでもいい気がする。だから映画館も、とびきり大きくもとびきり美しくなくてもいい気がする。
 クリストファー・ノーランが「それが良い」と言ってるわけではないけど。あくまで予測なので。どうでしょう。



 『トランセンデンス』、ウォーリー・フィスター監督、2014年、アメリカ。

    
  
    

『トリュフォーの思春期』

2013-11-11 21:55:02 | 映画-た行
 ジャン=フランソワ・ステヴナンという俳優さんが見たくて、DVDで観る。

 ジャン=フランソワ・ステヴナンは「リシェ先生」という役で、活躍していたので嬉しかった。名脇役と言われるだけあって、出番の少ない作品も多いので、出番の時間の長さも気になってしまうのだ。時間が短くったっていいのだけど。でも長いと嬉しい。(身内か)

 はっきり言って、ジャン=フランソワ・ステヴナンを見たいがためだけにこの映画を観たけど、これがどうにも面白かった。
 
 ありがとう!ジャン=フランソワ・ステヴナン!
 トリュフォー監督!

 トリュフォーの映画をもっと観ようと思った。

 1976年、仏。

      トリュフォーの思春期 [DVD]

『朝食、昼食、そして夕食』

2013-09-22 21:39:35 | 映画-た行
 ホルヘ・コイラ監督、2010年、スペイン・アルゼンチン。

 最近観たものの中で、私の中ではベストワンかもしれない。製作年からちょっと経っていて、Action.incという会社が配給してくれなかったら、このまま観ずに終わったかもしれない。本当に良かった。ありがとう!上映した劇場さんも、ありがとう!

 と、無性に感謝を述べたくなるほど、どこからどこまで面白かった。

 舞台となるのは、スペインの北西に位置する、サンティアゴ・デ・コンポステラ。
 ここは世界遺産であり、キリスト教カトリックの巡礼の最終地だという。「ヨーロッパの最果て」と呼ばれる古い街。しかし映画に登場するのはそこで生活している普通の人たちだ。古い街並みに差す朝日と、昼の陽光、夕暮れと夜。そしてそれぞれの食卓。原題は“18 comidas”、18の食事、または料理という意味らしい。

 老若男女、それぞれの食事の風景が、朝昼晩と移っていく。高級レストランということもあれば、家庭の手料理、パーティのご馳走、軽食、テイクアウトの中華、盗んだチョリソという人もいる。
 しかし心底面白いのは、食卓の事情というか、その周りで交わされる会話だ。状況設定の上での、俳優さんたちの即興演技というから驚く。

 たった一日のうちで、この町では50万食が作られるという。
 冒頭のナレーションによれば、「だからここには、人生の味を変えるチャンスが、毎日、50万回もある。」

 「食欲と魂を開放する」チャンス、というそれぞれの食卓の風景は、流れるような絶妙な繋がりをもって映画の中を行き来する。二千年の歴史の古都と、そこに差す日差しを、伴いながら。ほんの少し変わるものと、ほんの少しも変わらぬものが綾を成す。

 音楽もとても良かった。音楽を担当したのは、出演者の一人でもあり製作者でもある、ルイス・トサル。
 ストリート・ミュージシャン役の彼が映画の最後に言う台詞が(おそらく即興だろう)、とてもいい。「チョリソもあるよ!」ほろ苦くて、可笑しくて、大好きだ。


      

『第七の封印』、『野いちご』、『処女の泉』

2013-07-28 21:02:51 | 映画-た行
 ユーロスペースにて。イングマール・ベルイマン3大傑作選。

 白と黒のコントラスト。『野いちご』の冒頭、夢の街のシーンと、『第七の封印』の最後、「死の舞踏」のシーンが好きだ。曇天で撮ったというこのシーンで、人物は空と丘の間でひたすら小さくて、踊っているのか踊ってないのか良く分からない。引っ張られているようにも見える。誰が誰だか見分けもつかない。絶え間なく引っ張られて、誰も彼も一緒だ。『野いちご』の夢の街では、光と影が一層つよい。『処女の泉』では光と影だけ見ていれば、抑揚が話を教えてくれる。柔らかい光が気持ちいい。

 そして、筋が分かりやすいこと。ラストがどれも、微笑ましいこと。この人はきっと、親切な人だ。
 そう思って、良かったと思った。


                


    


『台湾アイデンティティー』

2013-07-20 08:23:50 | 映画-た行
 台湾における日本統治は、1895年(明治28年)から1945年(昭和20年)までの50年間続いた。日清戦争の終戦から、第二次世界大戦終戦までだ。その間に生まれ育った人たちは、日本語教育を受け、日本人として育てられた。「日本語世代」と呼ばれる。例えば1895年生まれの人は、50歳になるまで日本人だったわけである。
 その「日本語世代」の6人を追った、ドキュメンタリー。

 台湾と日本の歴史を、知らないか失念している私たちに、知らしめてくれる。そしてそれ以上に、国家とは何だろう?という疑問が湧く。今さら素朴すぎるかもしれないけど。

 誰か運命について説明してくれる人はいるんだろうか。「かつての場所」に長く居たがる人はいない。すでに年老いた人たちの、目に浮かぶ涙と、厳しい横顔と、笑顔の記録。

 酒井充子監督、2013年、日本。