よく仕事の中で、「時期尚早」ということでお蔵入りする案件がある。
特に上司が口にすることが多い。
部下は、何が準備不足で“時期尚早”なのか明確な説明がないまま止められることもある。
上司としては、危機管理上、なんとなく嫌な感じがするだけでやりたくないと思い始めると、その思いの方が強くなる。
こうなると、「まず一歩進めてみませんか」といっても進む気など起こらない。
明確な説明がないまま、不完全燃焼している部下のモチベーションはどんどん下がっていく。
きっと、その上司は「準備ができていない」と自分を納得させ、「いつか準備ができたあかつきには」と考える。
しかし、こういう場合、「いつか」はいつまでたってもやってこない。
では、その準備とはどういったものなのか。
十分な知識、道具、技術、資金、人材、やろうという気力、いけるという予感、やりきれる体力、やるべきタイミング、そのすべてが完璧にそろうこと。
私の経験では、まずこれらすべてがそろう時期は未来永劫やってこない。
大切なことは、まず一歩踏み出す勇気を持つこと。
一歩踏み出すとさまざまな問題点に気づく。
踏み出さない人たちの多くは、それを見ながら「そら見たことか」と嘯(うそぶ)く。
しかし、これらの問題点にぶつかってこそ、はじめて改善方法を見いだせる。
そして成功に向けて近づける工夫をする。
この工夫こそが、成功への道なのである。
よく行動する人は、知識は最低限でいいということを知っている。
先輩からは、「一に体力、二に気力、三に知力でええ」と教えられた。
自分はよき先輩たちに巡り合えたと感謝している。
その先輩は、「まず行動せよ」ということを言いたかったんだと解釈する。
おそらく、実際に動く前に、わかることなどほとんどないということをよく知っていたからであろう。
何かの本で、人間の脳は、自分の行動を正当化するようにつくられているというのを読んだことがある。
小さくとも、「一歩踏み出す」行為さえ続けていければ、脳が勝手に「なぜこれがただしいのか」という理由を勝手に認識し始めてくれるというのである。
大切なことは、不安をなくすことではない。
いかに早く、多くの失敗を重ねることができるかである。
そして、その失敗を学習して、バグをつぶしていくように成功へ近づけていくことである。
そうすれば、「未来はいくらでも自分の手で生み出すことができる」という自信を、休むことなく生み続けることができるようになる。
“がんばれ上司”である。