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私の仕事は、市の出先機関という役割を担っている。
主な仕事は、住民票や戸籍謄本、印鑑証明の交付、さらには税金などの収納業務などである。
市民サービスの観点からすると、住んでいるところや職場の近くにあることで利便性が図れている。
どの業務も正確性と迅速性が求められ、それだけを追求するという仕事のやり方もある。
しかし、果たしてそれだけでいいのか...
自問自答した末に、まずは所管するエリアを散策するところから始める。
まったくお気楽な支所長である。
困るのは部下たちである。
まるで糸の切れた凧なのだから...
それでも、堪(こら)えてくれる。
というよりも、諦めてくれている。
部下に全幅の信頼を置く。
先人が残してくれた郷土史のようなものを携えて歩き回る。
時に驚き、時に軽い失望をしながら、でも先人たちがなぜこのような史跡を残し続けてきたのか考える。
地元の人たちが集まった会のときに、自分が見て回った史跡などを紹介する。
役員の人たちでも知らないことがあるんだと気付かされる。
すごいのは、他の会のときにその人がその史跡の話をしている。
見に行っているのである。
驚きである。
それとも、よそ者(そこに住んでいないとそういわれることがある)に教えられ、悔しかったのか...
自慢げに話す表情がとってもイイ。
こうやって、このまちをより深く愛するようになってくれる。
遠回りのようだが、こういう人たちを地道に増やしていくことが大切だと思っている。
まちを愛する人が増えることで、そのまちを大事にし、そこに住む人たちを大切にしてくれるのではないかと思っている。
このまちの匂いや風の心地よさ、まちの音、すべてが心地よい。
このまちで仕事できることを本当に誇りに思える。