ここ何日かのNHKの朝の連続ドラマ「ごちそうさん」をみていて気づくことがある。
戦争という不条理な暗くて大きな陰に、それぞれの人生が巻き込まれていく。
なによりも、家族が食卓から一人、また一人と消えていく。
そして、今日、主人公はとうとう一人ぼっちの食卓に取り残されていく可能性が出てきた。
何よりも家族と食卓を囲むことを大切にしてきた主人公に、「戦争とはこういうことなんだよ」とわからせるかのように。
このドラマは、昔、多くのドラマで見られたような「茶の間」が舞台になることが多い。
茶の間で、さまざまに起こった事件を、家族が話し合って、協力し合って解決していく。
究極の家庭教育力である。
そして、私たち日本人が忘れてしまったことでもある。
日本の家庭教育力は、「食卓」に尽きるのである。
食事をしながら空腹感から満腹感へと人としての欲求を満たしながら、家族の悩みを聞き、家族で解決していく。
シンプルだが、人が人として生きていく過程の中で、最も大切なことをこのドラマは再認識させてくれる。
翻って食卓に並ぶメニューは戦後間もない頃と比べようもないくらい豪勢になった。
しかし一方で、人の心は貧相になった。
何よりも家族が食卓を囲めるのに囲もうとしなくなった。
食卓を囲まないだけで、ずいぶんと人の心は殺伐として、相手を思いやる心を消失させた。
「ごちそうさん」を家族がそろって食卓を囲みながら言えることが、幸福であるということを私たちはもう一度自覚せねばなるまい。