源太郎のブログ

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「北海道」

2010年09月08日 | インポート

 8月の下旬、旅に出る数日前から北海道・釧路の天気が気になっていた。予報では最高気温が「25度」前後。何かの間違いじゃないかと思う位低い。今年の猛暑続きから考えれば、それだけで「天国」のような気がする。そう言えば、8月の中旬に行った富良野のペンションの御主人が「今日の富良野の最高気温は30度、でも東京は35度だから、まー良いかー」と自嘲気味に言っていたのを思い出した。「涼」を求めて北海道に来たお客さんを慰める為、そう言っていたのだ。今年の暑さは北海道も例外ではない。釧路の気温が相対的に低いのは北極圏から南下する寒流の影響で年間を通して札幌より平均気温が低いのだと後で聞いた。

 「釧路空港」に降り立つと日差しが強く「涼しい」と言う感じはしなかった。が、私が住む横浜とは明らかに違う。釧路湿原でカヌーに乗る為、早速レンタカーで出発した。

 空港から50分程の所にある東釧路と網走間166㌔を結ぶJR釧網本線(せんもうほんせん)の無人の細岡駅にはカヌーに乗せて呉れるM.H.さんが待っていてくれた。乗って来たレンタカーを乗換えてカヌーが出発する塘路へ向かう。それにしても「釧路湿原」は広い。日本の湿原の総面積の6割を「釧路湿原」が占めると言う。「釧路湿原」は文字通り湿原・湿地だから所々にある「展望台」に上がって全体を俯瞰する事は出来ても原則的には「歩きまわる」と言う事が出来ない。唯一の方法はカヌーで水路(河)を巡る事だ。我々の行程は塘路湖から釧路川を細岡までガイドの人と一緒に漕ぎ下る1時間半のカヌーの旅。最初は広々とした湖を進むが、すぐに釧路川に入ると両側に緑が迫る。普段、川を見下ろす事があっても、川面から見る事は少なく景色は新鮮だ。何より、カヌーを漕ぐ櫂(かい)の水音意外、何も音が聞こえないのだ。そんな静かなカヌー下りの中、歓声が上がったのが「くしろ湿原ノロッコ号」との遭遇。4両編成の列車が釧路~塘路間を45分で1日2往復しているのだ。「湿原」の「観光列車」として人気が高いと言う。丁度、川と線路が近付いた所で列車が来た。鈴なりの乗客が我々に手を振っている。勿論、我々も。ほんのわずかな時間だったが互いの「旅」に彩りを添えた瞬間でもあった。そして、普段余り使わないカヌーを漕ぐ「腕力」に少し疲れを感じた頃、カヌーの旅の終点、細岡に到着した。途中、エゾシカやミンク等を観察しながらの1時間半は充実していた。

 台風崩れの熱帯低気圧の通過。雨風強い中、傘をさしながらじっと待っている。ズボンの片側も濡れて、びっしょり。川の上だから、ちょっと寒い。だが、我々のメンバーは誰1人動こうとしない。我々が訪れた9月初旬は丁度北海道の河川を遡上するサケ・マスの漁期にあたっていた。その、サケ・マスの捕獲の様子を是非見たくて、傘をさしながらもう小一時間も風雨の中待ったのだ。心の中で「早く始めてくれー」と思い始めた頃、待ちに待った作業がとうとう始まった。「ウライ」と呼ばれる捕獲施設の周りに作業員、25人程が「布陣」すると流れ作業が始まる。遡上した魚を止めるヤナに大きな網を入れて引き上げ、そして下ろす。船のデッキの様な所を魚が跳ねながら流れ下る。それを仕分けして生け簀に入れる。全てが流れ作業、まるで「ホッケー」をしている様だ。サケの稚魚を放流してから4年、やっと「自分」の川に産卵の為、戻ったサケ達。生きて、自分の川に戻れるサケはたった3%だと言う。その幸運なサケを「不運」が待っている。一網打尽にされてしまうのだ。そんな事を知らないサケ達は先を争って「ヤナ」に入る。そして、すくい上げられてしまうのだ。日本では何処へ行っても、朝食に付き物の「サケ」。「サケ」が居なかったら日本の「朝食」は寂しいに違いない。「サケ」の捕獲を目撃した我々は、「サケ」を食べる度にその日見た光景を思い出すに違いない、と思った。

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