源太郎のブログ

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巴里、あの頃

2008年02月23日 | エッセイ

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 「ヨットに住まないか?」友人の義兄が言う。「え~、だって、ここはパリでしょ?」それまで、パリに港があるのを知らなかった、しかもシャンゼリゼ大通のすぐ裏に。私の窮状を見かねて、セーヌ河に係留中の彼のヨットに住まないか、と言う話。勿論、私がヨットのガードマン・管理人を兼ねて、彼も安心、と言う訳。 <o:p></o:p>

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 物価の高いパリで職がなければ貧乏生活は当たり前。住んでいた所はホテル。ホテルと言えば聞こえはいいが、それ以外住む所は橋の下だけ。場末の、8階建て、古く、狭く、小汚い部屋。しかもエレベーターは無い。一日にそう何度も往復できないから、出掛ける時は、入念に忘れ物が無いかチェック。そして、街では少々の距離なら歩いて行く、時間だけは潤沢だったから。食べ物だって、いつも同じ物。バゲット、ジャンボン、チーズ、コーニション(酢漬けの小指大のきゅうり)等など、来る日も来る日も同じ物。半年ほど通っていた学校でとる昼食も安さだけが魅力の質素な物。お昼に、形ばかり飲むワインの小瓶だってアルジェリア産。時々メニューの載る内臓の料理が楽しみだった。料理とは言っても、牛?の内臓を塩茹でにしただけの物。日本の所謂「もつ煮」はそれ程「形」が「あらわ」ではないが、「塩茹で」の物は、塩でただ単に茹でただけだから、その形は「あらわ」で、気になる人はちょっと嫌かも知れない。でも、味は抜群。以後、残念な事に食べる機会に恵まれない。安い「食材」でも「旨い」のは、やはりと言うべきかも知れない。<o:p></o:p>

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 フランス人の朝食は残り物のフランスパンをトーストにしてジャムかバター、それに多めのカフェオレだけの、いたって質素。その代わり、日曜日の昼食は「料理」をする。テーブルクロスを広げ、親戚や友達が集まる。私が贅沢な「お食事」をしたのはそんな時だけ。アパルトマンと呼ばれる所謂「マンション」には勿論、旧式だがエレベーターがついている。セットになって地下にワインセラー、最上階にはグルニエと呼ばれる、「女中部屋」が付随している。各家の厨房の奥にその「女中部屋」に通じるドアがあり、暗く狭い螺旋階段を昇り降りする。今では、「女中さん」のいる家など少なく、家族が住むか人に貸したりもしている事が多い。当時から「エコ?」の進んでいたのか、窓の無いその螺旋階段には一定時間が経つと消える裸電燈があった。よっぽど早く歩かないと、大抵消えてしまい、真っ暗な中を歩かねばならなかった。<o:p></o:p>

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 住んでいたホテルのドアをノックする「やつ」が居る。こんな時間に何?ベッドから起き出すと、昼間仲間と一緒に居た「ベルリン映画祭」に来たと言う映画女優が「泊めて」と言う。諍いがあって飛び出して来たらしい。断るほど「野暮」ではない。彼女は何も言わず、私がさっきまで寝ていた極小のシングルベッドに一直線に向かうと、そのまま潜り込んで背を向けた。<o:p></o:p>

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極める

2008年02月03日 | 山行記

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 人が何かを「極めたい」と言う事は何なのだろうか?「極める」とは極限の状態までつきつめる事だから、例えば、位を極める、頂上を極める、もっと言えば命を極める、と言う事もある。人類をここまで進化させた原動力の一つでもある。いずれにしても「楽」な事ではない。

 「沼津アルプス全山縦走」等と言うのも「極める」事の一つだろう。一体、誰が最初に考えついたのか?余計な事を考えた物だ。ついこの間まで、「全山縦走」とは香貫山から大平山までを言ったのだが、今ではそれが大嵐山まで伸びてしまった。人の「極め心」は尽きないものだ。

 この「全山縦走」は一般的に前泊し、早朝の出発が普通だが、今回は「日帰り」で敢行した。これも、「極める」部類の話かも知れない。沼津の駅に集合して、タクシーで登山口へ。車の通行量の多い幹線道路にその登山口はある。手短に歩き始める体勢を整えると8:27、最初の一歩。目指すは第一座「香貫山・193m」。この山域は全体が都市公園の様に整備され「市民の憩いの場」となっていて、頂上近くまで立派な舗装道路が通じている。30分程で頂上。素晴しい「指導標」が立っている。この道標に、作者のコースを愛する気持ちを感じない訳には行かない。ここは「全山」が見渡せる唯一の場所。今日は予報に反し、青空だったので「全山」がくっきり。すぐ下山に掛かり20分程で林道に下り、第二座目の「横山・182m」の登山口に向かう。9:37、八重坂峠の登山口から登り始める。暫くして「沼ア」名物のトラロープの滑り易い急登に。登っている時は長く感じる時間も、頂上まではほんの20分程度。横山峠まで下ってからの「徳倉山・256m」への登りもきつい。「クサリ」と称していても、実際はクサリのついた階段。それが、一直線に頂上辺りまで伸びているのが見える。コース上で一番の絶景ポイントの頂上から、今日は富士山が見えない。ちょっと、残念。携帯で「去年はこう見えた」と写真を見せる人も。わ~、綺麗、と携帯の画面に。そして、羽衣伝説で有名な三保の松原の美しい砂浜の曲線にうっとり。でも、長居は無用、先を急ぐ。香貫台分岐を通過して「フユノハナワラビ」が数本、その先に木肌の素敵な「鹿子の木」の群生、そして千金岩のある急坂を下る。ここも、うっとりする景色の一つ。淡島や伊豆の山並みがうっすらと浮かぶ。志下坂峠から5分で「大トカゲ場。 順調に来たので、ここでトカゲの様に日を浴び、海を見ながら短いお昼に。そして「志下山・214m」から馬込峠、「中将宮」へ。ここは、以前脇道だった所、ルートが変わりメインルートの一部になった。さて、その後がいよいよ、急登の本番。木の根っこをこれ程有難く感じる所は他にはないかも。そして、「小鷲頭山・330m」。大勢の人が景色を眺めている。そこから10分でルート上の最高峰「鷲頭山・392m」に。地元の人か、シートを広げて宴会の最中の人達も居て、賑やか。一休みして多比峠に下る。何時もの事ながら、水っぽく、滑り易い下り。峠を越えると「うばめがし」の純林。そして全員無事「肥満度測定木」を通過。このコースの素晴しさは、コースに変化があって飽きさせない事。ここからは、岩っぽい所が続き、変化がある。13:31、多比峠を通過して、一気に「大平山(おおべらやま)・356m」の登りに掛かる。ここまで、何度上り下りを繰り返しただろうか。頂上から先が「奥沼津アルプス」と呼ばれる山域に。昭文社の地図では今でも破線のエリア。暫く前までは極少数の人が歩いていたのだろう、が、今では立派な道が開かれている。頂上にカンバンが出ている「奥アルプス大平会」の人達の尽力に拠ったのかも知れない。13:51、いよいよ「極め」始める。が、いきなりの急降下。正しく、落ちる、と言った方が適当かも。それも、長い。雨の日じゃなくて良かった!下った先に7段のハシゴ。何も書いていない山口峠を通過、蛙岩の先に「展望台」の岩。確かに景色はいい。そこから5~6分で分岐に。直進するコースは「ベテラン・コース」だそうだ。勿論「ベテラン・コース」に、と言えば格好はいいが、私の見立てでは難易度は変わらない。途中、「新城」に下る分岐で一休みした後、14:33、いよいよ「大嵐山(おおぞれやま)・191m」に向かう。疲れが溜まってくる頃の登りはつらい。やっと頂上近くなると石の柵が見える。ここは、地元の人の「憩いの場」、散歩気分で登ってくる人がいる。この山は、地元の「日守」に因んで「日守山」とも呼ばれ親しまれ、三角点もある。実の所、コース上の三角点は「徳倉山」とここだけだ。ここからは箱根の山々が目の前に広がる。さて、極める為にはまだ先がある。ちょっと判りにくい分岐から下り始める。ここまで、読むだけで疲れるのだから、歩いたら・・・。「大嵐山」が最後の山、と思ったら大間違い、まだ「茶臼山・128m」がある。でも、先が見えれば力は出る。黙々と歩き、ピークを越え、下山口に16:27、これでぴったり8時間、累積の標高差は約1200m。疲労感と充実感で一杯になった。目出度し目出度し。