源太郎のブログ

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江戸前

2009年02月24日 | エッセイ

 食べ物に好き嫌いはつきもの。だが、寿司が嫌い、と言う人にはお目に掛かった事がない。私も「酸っぱい物」は苦手だが、お寿司は好き。「すし」は寿司・鮨・鮓・酸し・寿し・寿斗・壽司などと色々に書かれ食物としての歴史は古い。

 寿司は「保存食」が原点であり日本では元々関西が主流の食べ物であった。「棒寿司・押し寿司・箱寿司」等である。江戸前と言う言葉があるが「江戸前」とは江戸の前、つまり江戸湾内で獲れた魚介類を意味する。が、それは後々の事で元々は江戸城の前のほんの限られた河川を含む海域で獲れた「鰻」を意味したそうだ。つまり、江戸前とは「うなぎ」の事であったのだ。関東に住む現代人の我々にとって今では「江戸前」と聞けばお寿司の事を思い浮かべる人も多いだろう。関西に対し江戸風の寿司は「握り寿司」と呼ばれ江戸の郷土料理とも言える存在であった。

 寿司は「保存食」が原点だから、当時の寿司は今の、所謂「握り寿司」とは大分趣を異にしていた。冷蔵庫の無かった時代、保存食には「腐敗防止」が一番に求められる。「酢」を使う、と言う事に加え、殺菌作用のあると言われる「笹の葉」で包む、と言う方法をとった。

  江戸時代には「江戸三鮨」と呼ばれた鮓屋があった。1824年創業の「与兵衛寿司」、1830年創業の「松がすし」、1702年創業の「毛抜鮓」である。一番創業が古い「毛抜鮓」とはちょっと変わった屋号だが「毛抜」とは毛や骨を抜く道具「毛抜き」の事で、「寿司だね」の魚から丁重に小骨を抜き取っていた事から屋号にしたとも言われている。

 先日、その「毛抜鮓」に行った。創業が1702年と言えば元禄15年だから赤穂浪士が討ち入りをした年だ。今から300年も前の事になる。その店が今でも神田で店を開いている。「毛抜鮓」の寿司は江戸で始まった「江戸前寿司」の原点を色濃く残し「押し寿司」や「なれ鮨」の名残も色濃く残している。保存食とする為「飯」を強めの酢でしめ、「寿司だね」も塩漬けで1日、酸味の強い一番酢で一日、そして酸味の比較的弱い2番酢で3日から4日漬けると言う方法がとられ製造には手間が掛った。この方法は今でも引き継がれ行われていると言うから驚きだ。

 広い通りに面したお店に入ると13代目の奥さんと言う品の良い女性が迎えてくれた。勿論お店で食べる事も出来るが殆どの人は「お持ち帰り」の様だ。メニューは至ってシンプル、2種類しかない。笹に包まれた「お寿司」の数が違うだけの事だ。味も極めて古風な感じ。最近はやりの言葉で表現すれば素朴で「骨太」、噛締めれば噛締めるほど味わいが深いと言った所だろうか。何しろ、広い東京でも、この店以上に古いお寿司屋さんは無い、と断言できるのだから「凄い」ではないか。こんな店には何時までも続けて欲しいものだ。013


2009年02月11日 | エッセイ

マリファナが喧しい。力士やスポーツ選手・大学生が挙げられている。マスコミを賑わすのは氷山の一角だから、世の中には相当蔓延しているのだろう。

マリファナは簡単に言って仕舞えば大麻草を乾燥したものである。Marijuana と書く。スペイン語で「安い煙草」を意味する。これは大麻草が野草として自生し安く手に入れる事が出来たため、メキシコで一般的となり、必然的に隣のアメリカを経由して「マリファナ」が世界に広まったと言う。ただ単に「くさ」、「グラス」とも言われ、インドなどでは「ガンジャ」とも呼ばれる。マリファナと聞くと「麻薬」と言うイメージが強いが、その薬理作用の為医療薬としても使われている。乾燥大麻を圧縮し樹脂状に固めたものが所謂「ハッシーシ」である。

 昔、ザックを背負って「放浪」していた頃のモロッコ。安宿で知り合った日本人の若者。しきりにぼやいている。こっそり手に入れようとした「ハッシーシ」の代わりにカレールーを掴まされた、と言うのだ。思わず笑ってしまった。何しろ、「取引」は路上で、こっそり、素早く行われる。値段の交渉が成立すると、現金と「ぶつ」を手早く交換する。当然、「超」緊張してドキドキものだ。だから、「ぶつ」をその場で確かめる等と言う事は出来ない。ニセモノを掴まされたと判ったのは相手の居なくなったずっと後の事だ。相手が一枚も二枚も上手だったのだ。勿論、被害を届ける事も出来ず、ぼやくしかなかった、と言う訳だ。

 ある時、東北のある県でヒッチハイクをしていたら、道端でアメリカ人と一緒になった。互いに「お仲間」だから、情報交換等をしていたら、彼は楊枝の頭ほどの褐色のかけらを取り出し、火のついたタバコの先に乗せて吸い出した。ははー、やってるな、と思ったが何ら悪びれる様子も無く、「一服」していた。彼にとっては「日常茶飯事」の事の様だった。

 私は常々、タバコが合法でマリファナが非合法である理由が判らない事がある。なぜ、タバコが良く、マリファナはダメなのだろうか? その間に一線を引く、合理的な理由(わけ)はあるのだろうか? タバコが合法であればマリファナも合法化するか、マリファナが非合法ならタバコも非合法にすべきだと考える。因みにオランダではマリファナを吸引する事は合法なのだ。タバコの「害」が叫ばれ禁煙を促進する為「値上げ」をと言われても、税収の落ち込みを心配する政府は及び腰だ。人の健康より税収が大事、と言う訳である。そう言う考え方であれば、将来、禁煙する人が増えて税収が減ったら、税収を上げる為、マリファナを合法化する事だってあり、なのだろうか?

 悪い事をしていなくたって、税関を通る時は緊張する。税関の検査官の任務の一つは禁制品の摘発である。検査官は「物」を見ているが、それ以上に人の「挙動」を観察している。何か「禁制品」が見つかった時はもとより、挙動不審な人物は「別室」と呼ばれる小部屋に連れて行かれ、洗いざらい取り調べを受ける。ある時、一人の外国人男性が「別室」に連れて行かれた。そして、マリファナが見つかった。当然のことならが「おとがめ」が待っている。が、彼の取った行動は意表を突くものだった。検査官が席をはずした一瞬の隙に机の上にあったマリファナに火をつけた。証拠の隠滅をはかったのだ。税関内からそう遠くないその部屋からは、もうもうとしたマリファナの煙が漏れ出し、暫くすると広い税関内は酸っぱい匂いのするマリファナの煙で充満した。たまたま、税関内に私は居て、当たり前のことだがその煙を嫌と言うほど吸い込んだ。はたしてこれは、私が「マリファナ」を吸引した事になってしまうのだろうか?