あの日の私語

樹氷通りを歩いていた
娘と私

軒下の氷柱が解け出し
春の陽が眩しい

゛急がなくては゛
゛急がなくては゛
゛働き蜂の蟻゛

色褪せた
雪まつり会場から飛びだした
あの日の通り去った私語

萌えとママの通信覗いちゃった

いつも怒るママが泣いていた
両手を耳に当て

いた～い、いた～い、痛

いつも泣く萌とそうま
泣きたくても泣けなかった

ママが泣いているから
今日は泣かない

いい子でいょうと思った
゛ごめんね゛
心配ばかりかけて

(明日病院え行ったらきっと良くなるよ)

幸せ

七色のパステルカラーの
シャボンの泡が
゛パチン゛と割れた流し場

磨きあげたコップに゛キラリ゛
ラブコール

はちきれんばかり
息吹を詰め込んだ
微笑みのバルーン
ネットからネット
翼をつけて
孤独な窓から手を振る

喜怒哀楽の流し場のひとコマ
思い出すよう確かめあうように
雲は寄せ合い
落とした愛の媚を売る

網羅した一日は
解きほぐされ
゛さあ゛
日没の準備

思い出は西の里へと傾き始める

春の陽に

雪解けの未来を表示した
限りなく続く白線
追いかけてみる

光を下さい
翼を下さい
愛を下さい
幸せを下さい
お金も下さい

欲張りになる春の陽に
私はウインクしてみせる